先代の四神獣朱雀
第100話 緋勇の父 先代朱雀
おきつね銀翔と共に戦った朱雀は、身も心も疲れ切っていた。
人間界を守りきり、ぬらりひょんは封印したが、神獣使いの松姫は人間の戦の犠牲になり、人間の姿に変化していた仲間たちは人間同士の争いに巻き込まれて散っていった。
人間界の戦はぬらりひょんが画策したものだったが、広がる悲惨な光景に朱雀は目を覆った。
朱雀は長い眠りについた。
目が覚め起き上がると、世間は様変わりしていた。
平和になったものだな。
朱雀は姿を隠しながら、大空を飛び回っていた。
風森町には大好きな松姫はもういない。
もう息絶えても良いとさえ思っていたのに。
まだ生き永らえている。
朱雀は人の姿に変化して町を歩いていた。
一度、稲荷神社に足を運ぶとおきつね銀翔は不在で、銀翔の側人のうさぎのバンショウが出迎えてくれた。
四神獣はあの戦いのすぐ後に青龍も白虎も玄武も眠りについて、役目を終え寿命が尽きたことを知らされた。
今は新しい神獣が生まれるのを待っている。
自分以外の一緒に戦った神獣はもういなかったのだ。
「朱雀殿。すっかり風森町も平和になりましたぞ」
「そのようだな」
朱雀は稲荷神社の茶店で、団子と渋いがほのかに甘い上等な茶をもらい満足げに食した。
「では」
人の姿になった朱雀は死に場所を求めて、旅に出ようと思った。
「不思議ですな。神獣がまだ生まれないからでしょうか」
「んっ?」
「神獣はあなたしかいないのに、神獣使いが生まれたのです。しかもその娘は生まれた時から寿命が短いのです」
朱雀は神獣使いを見に出掛けた。
『一人残ったあなたのためだけに生まれた神獣使いです』
朱雀はその神獣使いの娘に恋をした。
「俺のためだけになぜ天は娘を寄越したのだ。人間は物ではないだろう?」
朱雀は天を仰いで問いかけた。
「あなた。私があなたのそばに生まれたかったのです」
娘は前世で優雅に大空を舞う朱雀を見て恋をしていたのだ。
朱雀は泣いていた。
「お前はなんでこんな俺に恋をした」
「さあ。わからないわ。だって恋はしたくてするものではなくて、堕ちてしまうものだから」
朱雀と神獣使いの人間の娘は恋に堕ちて、数年を二人きりで過ごし、娘にとっては長い年月を経て、緋勇を授かった。
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