第97話 かまいたちの大鎌
「オロチには兄の恨みを晴らさせてもらうよ」
妖怪かまいたちは憎しみのこもった目をオロチに向けると大鎌をひと振りした。
ビュオッと幾筋も大鎌の刃から強風が吹きつける。大鎌の風は鋭い獣の牙に変わると、たちまちオロチと白虎に無数のかすり傷をつけていく。
「この間のかまいたちの弟か」
妖怪かまいたちの横には巨大な蜘蛛がいる。
(なんだ? この蜘蛛……、ナナコの力の匂いを感じる)
「オロチ。あの蜘蛛さ、生意気に私の力を吸い取るんだよね」
力を吸い取る?
どういうことだ。
「フフフフッ。どうせ君たちは死ぬんだ。僕に殺される前に教えてあげようか? その毒蜘蛛は大妖怪ぬらりひょん様が、神獣使いの女の力を利用して作ったんだよ」
妖怪かまいたちは、大鎌を構えてオロチを狙う。
毒蜘蛛はケタケタと気味の悪い笑い声をさせて、白虎の前に向かって来た。
オロチは牙涼刀を出現させて両手で構えると、間髪いれずに岩の地面を蹴って妖怪かまいたちに斬りつけた。
「うりゃあっ」
一つ二つ牙涼刀を振り、妖怪かまいたちに斬りつけるたびに、妖怪かまいたちはすべてオロチの刀を受け止め余裕の表情を浮かべたままだ。
妖怪かまいたちは押され気味だが、力任せに大鎌を上に振り上げれば、つむじ風の剣が舞いオロチに向かっていく。
牙涼刀でつむじ風の剣を一つ二つ三つ四つ受け止めたが、かすった風の剣がオロチの顔を傷つけ
「……ゔっ! くそぉっ、テメエ、よくもやりやがったな」
オロチは素早く跳躍する。
妖怪かまいたちが焦って大鎌を振り上げる一瞬の隙にオロチは右に着地して妖怪かまいたちの胴体を狙った。
妖怪かまいたちが鎌を振り戻す。
オロチは左手の牙涼刀で、向かってくるかまいたちの大鎌を頭の上で受け止める。間髪入れずに右手に持つ牙涼刀を振り上げ、そのまま妖怪かまいたちの額めがけて斬りつけた。
妖怪かまいたちは断末魔の叫びを上げる。
「ぎゃあああああ――っ!」
妖怪かまいたちはオロチに倒され、瞬く間に泡になり消えた。
「ちょっとだけ焦ったぜ」
大蛇妖怪オロチは、額から落ちる汗をサッと手早く服の袖で拭って、白虎の元に急いで走り出した。
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