第60話 ナナコと青龍くん

 ナナコが部屋に銀翔を迎えいれた。

 銀翔が小さなテーブルの前に優雅に組み座をして座ると、青龍くんが空中をピイピイ鳴きながら飛んで来て銀翔の尻尾で遊びだしている。

「これっ。青龍くん」

 おきつね銀翔がたしなめようと尻尾を振りながら捕まえようとしたが、さすがは四神獣の一獣である。

 銀翔の動きを読み、たくみにその手から逃れて青龍は楽しそうに遊んでいた。


 ナナコがクスクスと笑う。

 銀翔はナナコの可愛らしい笑い声に自身もつられて笑っていた。

 あまりにもそれが愛しく思えて、たまらずナナコを抱き寄せた。

「作戦会議はこうしながらでもいかの?」

 ナナコは銀翔の鼓動を聞きながら、この温もりにあらがえるわけもなく。じっと銀翔の腕のなかで瞳を閉じた。

「銀翔……。あたたかくて心地良い」

 ナナコのその答えを肯定だととらえて抱きしめたままに、銀翔はこれからの戦い方についてナナコに話して聞かせた。


 風森町にかつての危機のように四神獣を集めて、護り固めの家を造る。

 そこの中心で神獣使いのナナコと銀翔で結界を強化して、人間界と天界の狭間はざまにぬらりひょんを含め平穏を脅かす者たちを落として銀翔の元に集う仲間たちと一掃する。


「薫はどうなるの?」

「ぬらりひょんと分離させるためにも、今は四神獣の力の集結が必要不可欠じゃ。薫は大狸の空知葉そらちはが見張っているから安心せい」

 銀翔はナナコを優しく抱きしめながら頭を撫でた。

 ふと銀翔は外を見る。

 窓には銀翔が結界保護のために飛ばした狐火と式神がボウッと光り輝いていた。


 銀翔の温もりにナナコはいつの間にかウトウトと眠り始めていた。

「心配か? ナナコ……。もう離れぬでの。お主を必ず護り抜くゆえ」

 銀翔の瞳は優しげにしかし強い決意を奥に秘めながら、ナナコを見つめていた。


 銀翔にはまだナナコに告げていない算段もあったのだが、明日になれば分かるだろう。


 フフッと微かに、銀翔は子供のような悪戯いたずらな笑みを浮かべていた。


 

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