第58話 夜に合わせて

 銀翔は自らが縛りあげたオロチと荒天丸を見下ろして「何事か?」と尋ねた。

 オロチも荒天丸もムスッと憮然ぶぜんとした顔で銀翔を見もしない。

 おきつね銀翔は笑っていた。


「お主たちの仲が良いことはなによりじゃ。薫は家に戻っておった」

「なにっ?! それでぬらりひょんはどうしたんだっ?」

「いたた……。オロチ! 暴れるな」

 二人が一緒に縛り上げられているものだから、オロチが派手に動けば荒天丸の縛呪文のキツネの縄がギリギリと締まり痛みが出る。


「【縛呪ばくじゅ――解放】」

 銀翔が唱えるとフッとキツネの縄は消えた。

「銀翔お主はまったく……。容赦のないやつだなあ」

 天狗の荒天丸は翼をバサアッと広げて「窮屈だった」と独りごちた。

「で、の原因はなんじゃ?」

 銀翔が再び問うと、オロチが少し紅潮した顔で小さくつぶやいた。


「荒天丸が、白虎と俺が結婚したら事が丸く収まると言うようなことを言ったからだ」

「ふむ。そうか」

 銀翔は合点が言ったようで、納得した顔でオロチを見やった。

 オロチは荒天丸を睨んでいた。


「白虎のことはなんとか説得せねばなるまい。だいたい先日に代がわりした白虎は女子おなごかも分からぬゆえ」

「荒天丸っ!」

 オロチがまた荒天丸に掴みかかりそうになったので、ギロリと銀翔は睨んだ。

「とにかく少し話し合いをして、オロチは荒天丸と天狗の里へ向かってくれ」

「役に立つものって……、まさか」

「オロチのいうまさかが、なにを差し示すかはワシには分からぬが、天狗の里に白虎が来ていることは確かじゃ」

 夜に合わせて、それぞれが動き出す手筈てはずとなった。





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