第37話 おきつね銀翔と薫

 八百屋の息子の佐藤薫様はナナコ様の幼馴染みでございます。


 薫様は先日からなにやら悩みを抱えておる様子です。

 自分の部屋のベッドにうつ向きに寝ながら「あ〜っ。もう何だかなあ」とか「ナナコのやつ。鈍いなあ」とか薫様はぶつくさ申しておりました。


 その薫様の様子を空中に浮かびながら窓の外から見ている方がおりました。


 私の主の銀翔様です。


 気難しい顔で美しい毛並みの尻尾を揺らしながら腕組みをして空中から薫様を見ております。


 姿はナナコ様以外の人間には見えません。



 ほとんど銀翔様は薫様をきつい表情で睨んでおりました。

 しかも銀翔様は本来の姿でした。


 童子わらしの姿ではなく。

 本来の年相応の姿です。


 おきつね銀翔様は青年の姿に戻っておられました。

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