第21話 託された龍の涙

「よし分かった。オロチの助けをこころよく受けるとしよう」

「そうか。ではなにかあれば呼ぶがいい」

 そのままオロチは去ろうとしたので、銀翔は一つの提案をしました。

 銀翔はオロチに翠色の鍵を渡したのです。

 オロチは首を傾げました。

「稲荷神社の近くの屋敷をわしが借りてあってな。家がなくてはお前も不便であろう? 部屋はたくさんあるのじゃ。一緒に住まんかの?」


 ざわざわとおきつね様の提案に周りの者たちが騒ぎ出しました。

「銀翔様がオロチと住むなんて」

「どうかしてる」

 そんな声が小さい声だがそこかしこから聞こえてきます。

 ナナコはその周りの反応を見て決して大妖怪オロチが歓迎されてはいないのだと思いました。


「俺がお前と住む?」

 オロチはなんとも言えない表情をしました。

 照れたようなびっくりしたような拗ねたような複雑な顔です。

「よいな?」

「ケッ。しばらくのあいだだけだ」

 フフッと銀翔は笑いました。

 妖怪オロチは今来たばかりの方向に早足で去っていきました。

「ワタクシが屋敷まで案内して参ります」

 うさぎのバンショウがオロチのあとをまた追いかけて行きます。


「さてナナコはいったん人間界に帰るのがいな」

 銀翔はまっすぐにナナコを見ました。

「えっ? またすぐに会える?」

「うかのみたまの神さまがナナコに会いたがっておったからの。またすぐに会うことになると思うのじゃ。そうら、手を出してみるのじゃ」

 ナナコは両の手の平を銀翔に差し出しました。

 そしておきつね銀翔は碧く輝く玉を大事にナナコに渡しました。

 銀翔は自分の両手でナナコの手を包みこみ軽く握らせました。


(とてもあたたかい)

 柔らかくて銀翔の手はあたたかくてなぜだか懐かしい感触がしました。

 ナナコは遠い遠いどこかでこの手を握ったことがある気がしたのです。


「神獣である龍神の涙じゃ。こちらに自由に来れるようになる。そしてナナコをきっと護る」

 そっとナナコが手のひらを開けると龍神の涙の玉は指輪に変わっていました。

 指輪にはしっかりと龍神の涙の玉がはめこまれています。


「ナナコお主に託すぞ」

 銀翔の言葉はナナコを信頼していることを感じました。


「うん。大切にあつかうね」

 ナナコは龍神の涙の指輪を胸の前で大切に握りしめました。

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