前日談:セシルと勇者、ディエティドラゴンを倒すまで

俺はセシル・・・大剣の冠名を持っている英雄クラスの冒険者だった者だ・・・


だが、今は、冒険者としての活動は一切せず、自らを鍛える事だけを考え、動いている・・・


何故、そんな事をしているのか・・・それは、たった一つ、フウという子供を倒す・・・


それだけを考えて過ごしてきた・・・


見た目はただの子供・・・だが、その子供が殺気だけで、俺を怯ませた・・・


普通の人ならば、それだけで、気絶・・・下手をすれば、心臓麻痺にすらなりかねない程の重圧をあの子供はただの殺気を放っただけでやってのけた・・・


その後、その子供と闘ったが、俺の全力でさえあの子供には、全く届かなかった・・・


悔しかった・・・


今まで、全力で鍛え上げて来た土台が全て、あの子供には通用しないという現実・・・


・・・英雄クラスになるだけの才能があった・・・だからと言って、その才能を持っている事に、胡坐をかかず・・・今まで鍛え上げて来た・・・


それこそ、他の英雄クラスと闘っても、誰にも負けない・・・そう言える位強くなる・・・その一心で鍛え続けてきたのだ・・・


それが、どう見ても、子供にしか見えない者に負けた・・・


俺は・・・その子供に手も足も出なかった・・・


あれだけの強さを持つ子供・・・人間ではない可能性が高い・・・魔族だったのかもしれない・・・


だからこそ、俺は、殺す気で、その子供に攻撃をした・・・だが、俺の捨て身の攻撃すら、フウと言われた子供には届かず・・・それどころか・・・生かされたのだ・・・


俺は殺す気で!攻撃したのに!!その子供にとっては!!ただの模擬戦の範囲内の攻撃に過ぎないという認識だったのだ!!


・・・俺は・・・その事実を知った時、一度剣を置こうとした・・・だが・・・


子供の頃に夢を見た英雄・・・勇者・・・そんな伝説の様な人達に憧れて冒険者になった自分を思い出し・・・俺は、もう一度自分自身を鍛え直そうと決意した・・・


冒険者になって知ったディエティドラゴンという、伝説のドラゴン・・・もし倒すことが出来たら、あの子供にも勝てるのではないか・・・?


そんな藁にもすがる思いで、ディエティドラゴンが居るとされる、魔の森にやってきた・・・そして、そこで、神の精霊と出会った・・・


俺は・・・神の精霊にディエティドラゴンに会わせて欲しいと頼んだ・・・だが・・・


ブラックドラゴンの成体に勝てないようでは会わせられない・・・そう言われた・・・


俺は・・・その日から、ブラックドラゴンに挑み続けた・・・


スキルは使わない・・・スキルを使えば、その分、身体に負担がかかってしまう・・・


それに、ブラックドラゴン程度でスキルを使ってしまっては・・・あの子供には勝てない・・・


ブラックドラゴンを128匹を狩った・・・あの子供はそう言った・・・恐らく、彼女にとっては、簡単に倒せる相手なのだろう・・・


スキル無しでブラックドラゴンを倒す・・・その位出来なければ、あの子供には到底追いつかないそう思ったからこそ、俺はスキル無しで闘い続けた・・・


魔の森で訓練していると勇者がこの森にやって来た・・・何でも、神の精霊が住んでいるここは、現勇者の訓練所になっているらしい・・・


以前から、勇者の武勇伝は聞いていた・・・曰く、一人で上級魔物を倒した・・・魔物の大群を他の冒険者と共に、押し返した・・・等様々な話を聞いていた・・・


まあ、英雄クラスの冒険者なら、その位出来る者は確かに居るが、勇者はまだまだ、若い・・・確か魔の森で出会った時は、まだ、15歳位の年齢だったはずだ・・・


今は、17、18歳位になっているはずだが・・・成人する前から、武勇伝を持っていた彼は・・・人々の注目の的であった・・・


魔物との闘いにおいて、勇者程、適した者はいない・・・それは、歴代の勇者の戦歴から明らかだ・・・


今はまだ、経験不足から、歴代の勇者と比べれば見劣りはするが、今でさえ、低級、普通のドラゴンなら1対1なら闘える程強い・・・


さすがに、ブラックドラゴンに勝てる程は強く無い様だが、後数年すれば、それすらも屠れる程、強くなれるだろう・・・


そんな魔物を倒す事に特化した力を持つ、勇者カール・・・


以前の俺なら、そんな力を持つ者・・・途轍もない力を持つ魔王を倒せる才能を持っている勇者と出会えば、鍛えてみたい、育ててみたい・・・そんな風に考えたかもしれない・・・


だが、伝説と言われた勇者も今の俺には、目に入らなかった・・・俺の頭の中には、あの小さな子供・・・フウしか頭の中になかった・・・他人を鍛えている余裕なんて俺には無い!!


だから、俺は一心不乱に戦い続けた・・・ブラックドラゴンと闘い続けた・・・


やっと、少しずつ、ブラックドラゴンとまともに戦えるようになってきた・・・そんなある日・・・


『ディエティドラゴンと闘ってみませんか?』


神の精霊からそう言われた・・・俺は一も二も無く頷いた・・・


ディエティドラゴンは途轍もなく強かった・・・俺の剣は全く通らず・・・スキルを使っても、全く通用しなかった・・・


勇者も途中で手を貸してくれたが、それでも、文字通り手も足も出なかった・・・


・・・だからどうした・・・力不足なのは知っている・・・歴代の勇者ですら、一人しか倒せなかったドラゴン・・・それも、パーティを組んでやっと倒せたとされているドラゴン・・・


簡単に勝てない事なんて分かっている・・・だからこそ!全力で闘い続ける!!あの子供に勝つ為に!!


それから俺は・・・寝る間も惜しまず闘い続けた・・・


身体が傷つこうとも、闘い続けた・・・


大けがを負っても、神の精霊から薬を貰い、更に闘い続けた・・・


人間の限界・・・そんなものはとっくに超えていた・・・だが、それでも俺は上を目指し続けた・・・結果・・・勇者の手を借りてだが、ようやく、ディエティドラゴンに負けを認めさせた・・・


その日は自分にとって・・・忘れられない日になった・・・

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