再び勇者カール

「確かここら辺だよな・・・」


俺は、そう呟いた・・・


俺は、勇者カール・・・神、ラーフの啓示を受けて、世の中を良くする為に、日夜動いているのだが・・・


3ヵ月位前から、啓示の話を聞いている際、何だか、ラーフの様子がおかしい・・・


啓示はしてくれるのだが・・・どこか、ビクビクと怯えていて・・・啓示を喋る際も、震えていて聞こえずらい・・・


何かあったのかと聞いても・・・


『ゆ・・・勇者様・・・わ・・・私の事は・・気にしないで下さい・・・!!』


そう言って、結局、詳しい話は聞けなかった・・・今日の啓示を伝える時も・・・震えていたし・・・大丈夫だろうか?


―――――――――----------------------------------


「ふう・・・」


俺は、疲れから、溜息をついた・・・


俺の今居る場所はスラム街と言われている貧困層と呼ばれている人々が住んで居る場所だ・・・


はっきり言って魔王が倒されて世の中が良くなった訳では無い・・・


それどころか、国同士が争って、人々の生活が悪くなっている国が殆どだ・・・


魔王がフウと言う子供に倒されて・・・1年3ヵ月程の月日が流れた・・・


魔王が死んで半年程は・・・魔王が、事前にこの世界に入り込ませていた配下が暗躍をしていた。


だが、俺は、ラーフの啓示から、魔族が潜り込んでいる国を選別し・・・そこに居る、魔族と闘い続け、何とか殲滅することが出来た・・・


とは言え、本当に全員倒せたかは、分からないが、今では、ラーフが魔王の残党について何も言ってこないから倒しきったのだと思う・・・


魔王の配下が居なくなり・・・魔族の暗躍が無くなった今、平和になったかと言えば・・・それは、否だ!


魔王がこちらの世界に進攻する前から、人々は、醜い争いをしてきた・・・


しかも、魔族が裏で1年の間・・・暗躍していた為、裏で情報操作され・・・それが原因で、戦争までいってしまった国まであった・・・


王都バイドリウムも魔族の関与さえ無かったが・・・王が居なくなった今・・・都市の領主同士で争い・・・今戦争の真っただ中だ・・・


・・・はっきり言って、この一年間、戦争の頻度は上がった


しかも、人間同士だけでは無く、今まで虐げられてきた異種族の人達も人間達の戦争が長引くにつれ・・・それぞれ、国が疲弊し・・・その隙をついて、戦争や反乱を引き起こしている・・・


今まで、人々がた種族に対し優位性を持っていたのは、数が多く・・・英雄クラスと言った、膨大な力を持った、スキルを持った人達が居たからだ・・・


だが・・今は、英雄クラスの人間は金の為に、戦争に駆り出され、街自体に居る事も少なくなっている・・・


その隙をついて、戦争や反乱を起こしているという事を聞いた・・・


その為・・・あちらこちらの街や村が廃墟になっている・・・


今いる場所をスラム街と言ったが、戦場になっている、街や村はこれ以上に酷い状況だ・・・


戦争に巻き込まれた村・・・戦場になった街には、瓦礫の山、人々の死体・・・腐臭・・・


地獄絵図の様な光景を何度も見て来た・・・


今まで・・・何度も国同士が戦争にならない様に尽力を尽くした・・・


だが、この広大な世界にある国に俺は一人だけ・・・


しかも、勇者としての力は、魔族や魔物だけにしか使えない・・・


まあ現在は、セシルと2人かがりだったが、ディエティドラゴンを倒せるだけの力を持っている


ちなみに、魔の森から付いて来てもらっていた、セシルは、フウが魔王を倒したのを俺が伝えると


『フウの居る場所を教えろ・・・』


そう言って来た・・・だが、その日の夜、夢の中で、フウの場所をラーフに聞いた所・・・


『その場所の近くに行っても、結界があって入れません、セシルがマルイからもらっている、マジックアイテムでも入れない位強靭ですし・・・第一、今のフウは、強すぎるという程、強いですよ、こう言っては何ですが、ディエティドラゴンが・・・フウにとっては、雑魚と言っても過言では無い位・・・』


『まじか・・・』


結局、その事を、セシルに伝えると彼は・・・魔の森に修行しに戻った・・・


・・・まだ、彼はフウに勝つ事を諦めていないらしい・・・フウも大概だが、彼が居なくなって、一年以上・・・セシルもどこまで強くなっていくのだろうか・・・もはや、予想がつかない・・・


・・・セシルは除外するとして・・・他の英雄クラスなら、今なら俺自身あれ程度闘えるはずだと思う・・・


実際、何度か、英雄クラスの人達と闘う機会があり・・・それなりに闘えていた・・・


まあ、実力を隠していた可能性はあるが、それを疑い出したら、切りがない・・・


今の俺なら・・・勇者の力に頼らなくても素の武力である程度闘える・・・


だが・・・結局の所個人一人の力・・・国単位で動かれては、その流れを止める事は出来ない・・・


勇者として、教会の権威は使えるが・・・それでも限度がある・・・


結局俺は・・・争いを止めるだけの力・・・権力を持っている訳では無い・・・


俺が出来るのは、ラーフの天啓を聞いて、それから、戦争を事前に止める為に動くか、戦争の拡大を抑える位しか出来ない・・・


俺自身の力の無さが・・・この一年間で身に染みた・・・


魔王は居なくなった・・・なのに・・・結局このままじゃあ、人間同士の争いで滅びるんじゃないか・・・?


そんな思いがふと頭をよぎる・・・


「ハハ・・・」


自然と自嘲的な笑いが出た・・・あんな小さな子供が頑張って、せっかく魔王を倒したのに・・・結局、滅びるのか・・・


今まで、戦争や争いを無くす為に、奔走し・・・悪徳商人によって・・・奴隷になってしまった人々を解放したり・・・様々な事をしてきた・・・


今日だって、不当に奴隷にされた人々を解放する為に、奴隷商人がいる場所を下見に来たのだ・・・


だけど、結局、俺一人が頑張った所で・・・・


そんな事を考えている最中・・・


「勇者ですか・・・」


懐かしい声がした、慌てて顔を上げると、そこには・・・


「何でここに居るのですか・・・?」


「フウ・・・?」


子供の姿では無く、大人の姿のフウがそこには居た・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます