聖女クライス

私は後・・・どれ位の人の死を見ればいいのだろう・・・


神の銅像に祈りを捧げながらそう思う・・・


私はクライス、この教会で聖女と呼ばれている。


私が聖女という力を持つようになったのは、何時ごろだろうか・・・


気がついたら、この力を持っていた・・・


怪我をした人に対し、例え、重傷であろうと、怪我を直し・・・


腕が無くなった者には、生やすことが出来る・・・


さすがに死者は生き返らせることは出来ないが・・・それでも人より、抜き出た力を私は持っている・・・


だからと言って・・・何かを出来る訳では無い・・・・


今、世界の至る所で、国同士が戦争をしている・・・


何度も、それこそ数えきれない程、戦争で破壊された街に行き、人々に回復魔法を施しに行ったが・・・


その破壊された街は悲惨という言葉では言い表せない程、酷かった・・・


街の全ては、瓦礫と化し、首都や王都が落とされた時は、城ですら瓦礫と化していた・・・


そして・・・落とされた街には、夥しい程の死体が転がっていた・・・


私が初めてそう言った街に行ったときは、何度も吐いたほどであった・・・


いくら吐いても吐き気は収まらず・・・ずっと、気持ち悪い思いをしていた・・・


それでも、怪我をした人達を救いたい・・・


そんな思いで私は、怪我をした人達に回復魔法を使っていく・・・


片腕が無い者、目が無い者、顔がぐちゃぐちゃになりながらも一命を取留めている者・・・様々な人達が居るが、私は必死になって直していく・・・


だが、一日で使える、回復魔法にも、限界がある・・・私は、回復魔法を使いながら、気絶するように、気を失った・・・・


そして、目を覚ましたら、また、回復魔法を使う・・・


それでも、1日空けてしまった為、死んでしまった人は、沢山いた・・・


回復をする人は、位が高い人、重要な情報を持っている者・・・そう言った人達が優先される・・・


本当は、重傷な人を先に私は直したかったのだが、教会からの指示でそれは叶わなかった・・・


だからこそ、重傷な人達を救う為、私は必死になって回復魔法を使う・・・


結局、全員回復し終えたのは、10日経った後であった・・・


それも、重傷であった者は、ほとんど、救えないという結果で・・・


私は、自分の力の無さに打ちのめされた・・・せっかく、人を力があるのに救えなかったことを悔やんだ・・・


だから、私は、必死になって、自分の力を強くしようと努力した・・・


魔法について、書物を読み漁り、魔力を少しでも上げようと、回復魔法を何度も使って鍛えたり、回復魔法を改良して私が見える範囲全てを回復できるようにしたりした・・・


結果、私は一日で街1つ分の負傷者を回復できるようになり、街に行った際、その時に生きている人達は全員救えるようになっていた・・・


だけど・・・私が出来る事はそれだけだ・・・


教会は全ての国に対し、中立の立場を取っている為、どこかの国に肩入れをしたりは絶対にしない・・・


その為、国同士が争いをしていても、手を出さないし、出すとしても、戦争が終わり、復旧の目途が立たない場所に対し、私の様な人物を派遣する・・・そう言った事しかやらない・・・


力に溺れ、力を誇示し、力に支配されるな・・・教典に書かれている、一文だ・・・


その為、教会は、向こうから、攻撃をされない限り、戦争を行ったりは、絶対にしない・・・


例え、勇者や、聖女と言った戦力を持っていようと、絶対に武力で制圧はしない・・・


それが、教会が、勇者や聖女を保護出来る様に神が協力するのに、便宜を図る為にした契約だ・・・


神の契約は、まだある、力が無い者、力を失っている者、弱っている者、そういった者達を救いなさい・・・そう教典に書かれている。


その為、勇者カールは、自由に動いて神の啓示があった場所に行き、時には、弱い者を救い、時には、不正を暴き、人々を正しい方に導いている・・・


それは、私も同じ・・・戦争で傷ついた人達を、私の魔法で癒して救う・・・・


だけど、それが何の意味があるのだろうか・・・


勇者様がいくら、不正を正そうと、その身体は一つ・・・それも、正したとしても、その国で、他の者が同じ事しないとも限らない・・・


現に、勇者様が不正を正して、他の者が担当したはずの国は、1年後には、また不正を働いていた・・・


何時まで経っても、いたちごっこ・・・しかも、いくら、神の啓示があるとしても、勇者様は一人、限度がある・・・


それに、私に至っては、戦争で傷ついた国の支援しか許されていない・・・理由は、勇者が大けがを負った際、救える者が、私しか居ないというのが、理由だ・・・


他の人達には、千切れた腕や足を戻したり、生やしたりする力は無い・・・私だって、無い者を生やしたりするのは、かなりの魔力を使うのだ・・・


聖女の力で治癒魔法を高めてそれなのだ・・・聖女の力を持たない人達には、そんな事は不可能だ・・・


その為、私が動ける範囲は物凄く狭い・・・


偶に、大型魔物の討伐の支援を申し出られることがあるので、訓練や魔物に慣れる為に、小型、中型、偶に大型の魔物の退治に出かけたりするが、それだけ・・・


それ以外は、全て教会の中に閉じ込められている・・・


・・・争いの世界になってほしい・・・そう願うが不可能だろう・・・


もし、出来るとしたら、先人が既にやっているはずだ・・・


今の時代、下手をすれば、昔より、争いが激化しているのだから・・・


一年以上前、王都バイドリウムで王が死んだ・・・


その国の王は代々暴君として名高ったが、死の報告がされたのは本当に急だった・・・


・・・病気で伏せていたという話も聞いていなかったのに・・・何故いきなり・・?


一説には、暗殺をされたとされているが、真実は闇の中だ・・・


問題は、王が死んだ事により、周囲の貴族が反乱を起こす様になった点だ・・・


暴君だったとしても、王は王・・・周囲の治めるだけの器はあったようで、その王が居なくなった為、その様な戦乱が起きている様だ・・・


まあ、王が生きて居れば、大きな戦争が一度や二度起きていたはずだから、どちらが良かったかは、一概には言えないが・・・


・・・大きな王都を持っていた国でさえ、王が居なくなるだけでこうだ・・・


他の国がどれだけあれているかなんて、想像できるだろう・・・


いくら努力しても、死ぬ人は減らない・・・いくら頑張っても、死ぬ人は増える・・・


・・・奴隷何て、使い捨て・・・下手をすれば、私の回復魔法を受ける事すらさせない国さえある・・・


・・・ねえ、神様、念話で、話をしてこの状況が仕方がない事を重々承知はしています・・・


ですが、本当にどうしようもないのでしょうか・・・?


銅像に祈りながら、問いかける・・・だが、その問いも、返事は無かった・・・当り前だ、恐らく、勇者様の旅を助ける為に、傍らにずっと居るのだろう・・・


その為、神が私に話しかけられるのは緊急事態の時だけ・・・


私の方から神に問いかけられるのは、神が常に傍に居る勇者様が居る時だけだ・・・


・・・その為、私はこうして、神の銅像に対し、祈る事しか出来ない・・・その事が・・・本当に悔しい・・・


私はいつまで、祈る事しか出来ないのだろう・・・祈った所で、人を救える訳でもない・・・それでも祈らずにはいられない・・・


だって、彼女には、祈る事しか出来ないのだから・・・

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