精霊さん奮闘記 1

私は、我慢が出来なかった・・・彼が居ない世界が・・・彼が望んでいた平和な世界とは逆の世界になっているこの世界が・・・・そんな世界に私一人に居るこの世界が・・・


だからだろうか、あの子が私の手元から居なくなったのは・・・彼の代替の為に作り出してしまった罰が当たったのだろうか・・・それとも、私が世界を顧みず、あの子を作り出した事への罰か・・・


私は大昔、ロイドと言う、少年の本契約をした精霊だった・・・精霊と言っても、その力は、契約する前から神に匹敵する力を持っていた・・・そうして、本契約をした後は、絶対神・・・今は、魔神・・・ドーラと呼ばれている神と闘い、自らの身を投じてその神を封印した・・・


その時、私は彼と本契約を解除された・・・私は本来生来の力の強さが災いし、何かと本契約しなければ、自身の身体を維持できなかったのだ・・・


力の強い精霊は世界から外れ始め、やがて消滅する・・・その運命は変わらないはずだった・・・


だが、彼が封印する前、本契約をしなくても生きられる私の身体を作った・・・


だから、私は今では、本契約せずとも身体を維持することが出来ている・・・その代わり私の力は、生まれ持っていた力を無くし・・・かなりの能力が落ちてしまった・・・・・・


・・・・何で、彼は私を置いて行ったのだろう・・・ずっと考えてしまう・・・封印の贄にロイドが鳴る言うならば、私もなりたかった・・・そうすれば、私はロイドと少なくともずっと一緒に居られたのに・・・・・彼は何で私を置いて行った・・・


ずっと同じことを考えてしまう・・・例えそれが意味がない事だとしても・・・ずっと・・・


ロイドが絶対神ドーラを封印し、世界は平和になったかに見えた・・・


だが・・・人々のエゴにより、結局は長くは続かなかった・・・戦争、身分格差、種族による違いによる奴隷・・・挙げれば切りがない・・・


ロイドの意思を継ぎ・・・今日まで頑張って来たが・・・自分はもう限界だった・・・だから、だろう・・・私は彼の影をずっと追っていた・・・彼と一緒だった思い出にしがみついているのは・・・・


私は、ある決心をした・・・


私は今まで前のロイドと契約していた自分・・・そこまでいかなくとも・・・本契約する前までの力までは戻そうと、今まで力を蓄えてきていた・・・彼が望んだ平和にする世界を作る為、この力を使おうと思っていた・・・・


だけど、例えこの力を使った所で、今のこの腐りきっている世界は変えられないだろう・・・善人は確かに居る・・・


だが、上の立場の人程、纏め上げる立場の人程、そんな善人は少ないのが現実だ・・・・


・・・もし、この蓄えた力で世界を制圧したとして、それは、本当に彼が望んだ平和なのだろうか・・・


恐らく違う・・・力で変えられる事など、たかが知れている・・・・・・本当の平和など・・・このままでは作られはしないだろう・・・


だったら、その力を自分の為に使ってもいいじゃないか・・・半ば投げやりにそう考えた・・・


そうして、私は人体錬成の法に手を出した・・・彼との思い出を少しでも形にする為に・・・彼との子供を作り出す決意をした・・・


彼との子供の身体は、彼の骸を使う事にした・・・彼は一度私と契約をして神になった・・・その元とは言え、神になった者の身体・・・人体錬成の素体には丁度いいだろう・・・


そして、人体錬成を行う為に使う力は、今まで溜めに溜めて来た・・・私の力・・・元々の私の力すら、大きく劣っているが、人体錬成に使う分には、大丈夫なはずだ・・・・


そうして、私は人体錬成の準備を始めた・・・この人体錬成は、世界の運命の因果を歪めてしまう可能性がある・・・当り前だ、たった一人だけとは言え人を作り出すのだ。しかも、神の力を持たない私が・・・世界に影響が出ないはずが無い・・・


神である者なら、その因果律をきちんと把握し、影響が出ない様に人間を作り出せるかもしれないが、あいにく今の私は、そんな力は残って等いない・・・


前は、確かに出来ていた、だが、能力が極端に落ちている現在、そんな芸当など出来るはずが無かった・・・


そんな以前の力を持たない状態で作り出す、彼と私との子供・・・はっきり言って、どうなるか予想もつかない・・・だが、それでも、私は止まらなかった・・・


彼との思いを少しでも形にしたい・・・それだけを考えて私は突き進んだ・・・例え、どんな形でも、生まれたらきちんと育てる・・・そう考えていた・・・


実際に赤ん坊を見る前は・・・・


私は、人体錬成をし・・・赤ん坊を作り出した・・・だが、その赤ん坊は私の想像を超えていた・・・


何だこの力は・・・私が生まれた時の力より強いでは無いか・・・こんな巨大な力を持った赤ん坊を私が育てられるのか・・・?ほとんど力が残っていない・・・私が・・・


赤ん坊を見た瞬間、そんな思いが駆け巡った・・・そんな葛藤をしていると赤ん坊がいきなり泣き出した・・・


何とかしなければ・・・だけど・・・これだけの魔力を持つ赤ん坊・・・どうすれば・・・


・・・私がどうすればいいか迷っていると・・・赤ん坊が浮き上がり始めた・・・生まれたばかりなのに魔力を操っている・・・そんな・・・まだ、生まれて間もないのに・・・そんなことあり得る訳・・・私が混乱している内に・・・赤ん坊の周りが今度は光り出す・・・


・・この光・・・転移魔法の発動する光?そんな・・・あり得ない!!・・・そんな魔法まで使えるの?!!


・・・私が驚愕している間に、一瞬まばゆい光が放たれた・・・そして、赤ん坊は私の目の前から消えさっていた・・・私は余りにも衝撃的な出来事・・・光景に・・・ただただ、絶句するしかなかった・・・


――――――――――――――――――――――――――――――


赤ん坊が見つからない・・・索敵魔法で探しているのだが、全く引っかからないのだ・・・どうしてだ・・・


本当は、自分の足で探しに行きたいのだが、ここには、妖精、精霊達がいる・・・私が人間達に嫌気をさし・・人間達に追われている、妖精、精霊達を保護して・・・200年近く・・・今ここで、赤ん坊を探しに行けば、彼らを守る者が居なくなってしまう・・・・


人間達から離れる為に、魔物が強い、この魔の森と呼ばれる場所にやって来たが・・・それが今は足枷になっている・・・だが、彼等を連れて来たのは私・・・今更、責任を放棄する事など出来ない・・・


神に応援を頼みたいが、禁忌である人体錬成で生まれた子を探してくれ何て言えやしない・・・言ってしまえば、どんな判断をされるか解ったものでは無い・・・下手をすれば、消滅すら視野に入れられてしまう可能性だってある・・・


それに、心配事と言えば、赤ん坊が転移した先だ・・・遠くに転移したのならいいのだが、生まれて、すぐの転移魔法・・・しかも、技術的な物は殆ど無く、魔力に任せた転移・・・


不安定な状況、魔力で遠くまで行ける訳が無い・・・恐らく、赤ん坊は森の外まではいけない・・・魔の森の中に転移しているだろう・・・そうなると、巨大な力を持つ魔物が居る、この森・・・生きているのだろうか・・あの子は・・・・


・・・・大丈夫だ・・・あれだけの魔力を持ち、ごり押しで転移をやってのけた、あの子だ・・・生きている可能性は十分ある・・・


そこで、ふと思う・・・森の中に居るとしたら、何故索敵魔法に引っ掛からないのだろうか・・・全ての森の中を索敵したわけでは無いが、それでも、かなりの距離を索敵したはず・・・


何故引っかからない・・・もしや・・・あの膨大な魔力を使って、索敵を妨害している・・・?


・・・それならば、いくら探していても見つからないはず・・・何故妨害しているかは解らないが、そうなれば、索敵魔法では探し出せない・・・・


問題はまだ、ある・・・食料だ・・・普通、精霊の力で人体錬成を行えば、精霊が生まれる・・・精霊は実体がない為、巨大な力を持つ精霊は、身体の維持・・・つまり普通に存在するだけで不安定な状況になってしまう・・・


その為、本契約という契約で世界と契約し、世界と融合、調和出来る様にして、身体の維持、実体化が不安定にならないようにするのだ・・・


まあ、私はロイドと本契約をするという裏技で世界と契約しなかったが・・・


そんな事より・・・あの子・・・あの赤ん坊は、ロイドの身体を媒体にした為、精霊の力を持ちながら、実体・・・普通の身体をあの子は持っている・・・


だから、いくら力を持っていようと、あの子の身体が不安定になる事は無い・・・


だが、しかし、それは、生きているだけで身体を維持する為のエネルギーを消費しているという事・・・・精霊は、何もしなくとも、大気からエネルギーを取って、自身の存在を維持できるが、あの子はそうはいかない・・・


魔力を使うにも体力は使うし・・・動くにも同じように体力を使う・・・そして、泣く事にも・・・体力を使えば、お腹が減る・・・だけど、あの子は今は一人・・・食べさせる人も居ない・・・


どうにかしなければいけない・・・そう思っても何も思いつかない・・・妖精達を監視できるギリギリまで、外に探しに行くが、どうしても、見つからない・・・


どうすればいい・・・私は良案を一つも思いつかなかった・・・


赤ん坊が転移して、2日目が過ぎようとしていた・・・


赤ん坊が転移して、3日目・・・私のテリトリーに何者かが侵入した・・・強力な結界を張っていた為、並大抵の者が入れる訳が無いのだが・・そう思って、身構えたが・・・やって来たのは予想外の人物だった


・・・この巨大な魔力は!?・・・・・ロイドとの子か!!!


私は魔力を感じると遠見の魔法を使い、その場所を確認する・・・・


テリトリー内なら、移動するより、こちらの方が確認するだけなら速いはずだ・・・そう思い、魔法を発動をする


赤ん坊に妨害されてしまったら、見えないが・・・どうなる?


――――――――――――――――――――――――――


何なんだこれは・・・遠見の魔法を使い、巨大な魔力があった場所を確認する・・・幸い妨害はされなかった・・・・それはいい・・ロイドと私の子供がいた・・・それも嬉しい報告だ・・・だが、何で!人間の子供に抱きかかえられているんだ!!!


・・・ここ、魔の森だよな・・・人間に抱きかかえられているのはとりあえず置いておく・・・だが、どう見ても子供の人間がこんな奥地にいる・・・


そこでふと考える・・・本当にこいつはただの人間の子供なのかと・・・強い魔物が闊歩する・・・この森にいるただの子供・・・うん、あり得ない・・・


それ以上に、何故か私達の子供が、あいつに抱かれている・・・しかも、あんなに穏やかな顔で眠っている・・・私なんて・・・初めて会った時、抱きかかえる事すら出来ずに・・・出会った瞬間、泣かれたのよ・・・そうだ・・・あいつ、私達の子供に洗脳しているに違いない・・・


あれだけの魔力を持っている私達の子が、容易に洗脳される訳が無いが、この魔の森にやってきた人物だ・・・ただ者では無いはず・・・バクバ王と言う、人間で生まれながら、その枠を超えた力を持つ人物も居るのだ・・・可能性は0ではない・・・そうなると、気を付けて接触しなければ・・・私自身洗脳される可能性すらある・・・


目的は何・・・?妖精、精霊達を捕まえに来た?いや、私達の子を洗脳できるだけの実力者だ・・・そんなちんけな目的でやってくる訳が無い・・・そうなると、目的は・・?


『止まれ』


とにかく、様子見だ・・・遠くから思念体を作り・・・あいつに接触・・・対話をさせる・・・とにかく相手の目的を知らなければ・・・


『こんな所に人が何の用だ』


質問をして、少しでも、情報を引き出して・・・


「ぐす・・・」


『はっ?』


・・・えっ泣いた・・・?えっ・・・


「うう・・・・ぐす」


いや、確かに子供の反応としては正しいけど・・・えっ?


『な何を泣いているのですか!!油断させようと・・・』


そうだ・・・これは罠だ・・・こうやって、泣いて私の油断を誘う・・・


「やっと、やっと・・・ぐず・・・・・・・・・・うわーーーーーーーーーーん!!!!」


・・・・・・・えっと・・・うん・・・とにかく、目の前に姿を現してみましょうか・・・


私は居たたまれなくなり、彼の前に姿を現した・・・そして・・・


「ぐず・・・それで何度ももう駄目だって・・・」


『・・・よしよし辛かったのですね・・・』


・・・話を聞いて、驚きました・・・何と、薬草を取りに来て、迷ってここまで、やって来たそうです・・・しかも、魔物が闊歩する森を生き抜いて・・・本当かと思い、一応念の為、思念体を通して、彼の魔力を調べてみましたが、彼・・・魔力の魔の字どころか、魔力の量がほぼない0の状態であった・・・


ねえ、普通の人でも、もう少し、魔力を持っているよ・・・本当によく生きてこれたね・・・一応、念の為、幻影魔法とかで、騙されている可能性を考慮して色々調べなおしたが、どうみても、一般人・・・いやそれ以下の魔力しか持っていない・・・


・・・・昔の人間達ならまだしも・・・今の人間はかなりの力を持っている・・それこそ、普通の子供だってある程度、持っている位だ・・・


私達の子供の魔力が巨大すぎると言うのもあるが、本当に何故・・・こんなどう見ても魔力0の子供に私達の子は抱きかかえられているのだ?・・・


・・・魔の森で、見つけ出したと言っているが、だからと言って、何でここまで懐いて・・・・


・・・・とにかく・・・このまま放っていくわけにはいかん・・・何より、経緯は別にして、私達の子供を連れてきてくれたのだ、ほっぽり出して死なれては目覚めが悪い・・・


ほとんど容疑は晴れたが、実力を偽っている可能性もあるし・・・目が届く範囲で監視しておきたいと言う気持ちもある・・・


『・・・貴方はこの場所を秘密に出来ますか?』


定例文として聞いておく、もし、私の想像以上の実力者だとしたら嘘を見抜ける訳が無いのですが、一応・・・


「秘密も何も現在位置すら解らないんだけど・・・」


そう言って、またしても泣きそうな顔をする・・・


『はあ、もういいです。私のこの体は本物では無いのです。本物はこの奥の村に居ます』


「そうなんですね・・・えっ?」


『この身体は魔法で疑似的に作った身体なんです・・・』


そう聞くと、彼は驚いた、顔をした・・・いや駄目だ、演技の可能性がある・・・


『ちなみに私は精霊なのですが、それに関してはどう思います』


とりあえず、こう聞いて反応を見よう・・・精霊に興味があるのなら、平静を装えないはずだが・・・


「心が清い人にしか姿を見せないというあの伝説の精霊!!?」


・・・感情の起伏を確認・・・結構、どす黒い欲望持っていますね・・・


『ものすごい邪な感情が見えるのですが・・・』


「すみませんでした!!!」


そう言って、彼は土下座をした・・・それはそれは奇麗な土下座だった・・・


『はあ、もういいです・・・大丈夫ですから、付いて来てください』


・・・とにかく、感情を読み取る魔法は効いた・・・これで、彼に魔法が効かないという事は無さそうだ・・・


その時、気づいた・・・そうなると、彼はどうやって、このテリトリーに入った?この場所は結界が張っていたのに・・・


(まさか・・・私達の子が?)


・・・あり得る・・・だとしたら、何故・・・一度は転移魔法を使ってまで逃げ出したのに・・・


とにかく、彼がどんな人物か、実際見て、判断しなければ・・・もし、私達の子に危害を与える人物だった場合、その時は・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます