エルフ ファルス

私はファルス・・・エルフの村の長をやらせてもらっている・・・とは言え、村といっても・・・人間達から逃げて来た数十人の集落なのだが・・・


・・・人間の奴らは強欲だ・・・私達エルフがいくら逃げても、どこまでも追いかけてくる・・・そして、捕まえると、私達を奴隷に落としていく・・・本当に忌々しい連中だ!


今は、森の中で、そいつらを何とか追い返して急場をしのいでいる日々・・・


村の男達は私達を救う為、闘いほとんど散っていった・・・だから、もうこの村にはほとんど、闘える者はおらず、居たとしても、ほぼ女性しか残っていなかった・・・


・・・そんなギリギリの日々を過ごしていたある日、狩りに行ったエルフの一人が傷だらけになりながら村に戻って来た・・・


私が慌てて駆け寄ると、そのエルフは傷だらけになりながらも、必死に言葉を紡いだ・・・仲間が人間に捕まった・・・と・・・


狩りに出たエルフは全員が女性だったが、いずれも腕に覚えがあった者達だった、だが、相手の人間もかなりの腕前で、人数がこちらの倍以上居たと言った・・・


・・・人間達め・・・何故・・我らの平穏な生活に邪魔をする・・・


私は闘える者達をかき集めて、その者達を追う・・・とは言え、もう既に闘える者は、7人・・・その中に、男は一人しかいない・・・


どちらにせよ、私達の中でこれ以上、闘える仲間が居なくなれば、飢え死にで他のエルフの村に居る、皆は死んでしまう・・・どうせ死ぬなら闘って死んでやる!!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


何とか、仲間を捕まえた、人間達を森の入口で見つけ出した・・・


だが、向こうは多勢に対し、こちらは少数で無勢に等しい・・・しかも、それなりの手練れが相手だ・・・いくらこちらの魔力が高くても、限度がある・・・だが!諦める訳にはいかない!!皆行くぞ!!


それから、激戦を戦い抜き、何人か、人間達を戦闘不能にはしたが、それすらも、一時的な時間稼ぎしかならなかった・・・・逃げるしかないのか・・・そんな思いが頭を掠めた瞬間・・・


もう私は仲間を見殺し何てしたくはない!


弱気になる自分自身に活を入れる・・・


・・・もう仲間を捕まって何も手を出せない・・・そんな状況をいつも見る事しか出来なかった・・・いつも仲間を助けることが出来なかった・・・


そんな状況を・・・変えるには今!ここで勝つしか無いのだ!!・・・私達を救う為!散っていった仲間に報いなけらば!!


そうで無ければ!ここまで生きてきた意味がなくなる!!


「くそ・・・絶対に救って・・・・」


「何をしているの・・・?」


不意に声が聞こえた・・・戦場の中で聞こえた、余りにも緊迫感の無い声、その声の方向を見ると・・・そこには、子供がいた・・・えっ子供?


「・・・なっ子供・・・?いつから・・・」


仲間たちがそう言いながら、慌て始めた・・・私自身急な展開に頭がついてきていない・・


耳が尖っていないからエルフではないわよね・・・それとも、人間の子供・・・?何故こんな所に子供が・・・?その前に、闘っている最中とはいえ、何故こんな近くまで接近を気づかなかった?


子供の方に気を取られていると・・・人間達が動き出すのが見えた・・・


(しまった・・・)


そう思った・・・だが・・・次の瞬間、私達と人間の前に風の壁が作られた・・・


「・・・この魔法は・・・?」


誰かがそう呟いた・・・何だ・・・この魔法は・・・私達が使う魔法とは桁が違う・・・何故このような魔法が出て来た・・・


「私の魔法だけど・・・?」


私達が驚いていると、先程の子供がそう言ってくる・・・


「君が作ったのか・・?この風の壁を・・・・」


仲間の一人のエルスがそう呟く・・・そうだ・・・本来ならあり得ない・・・これだけの大規模な魔法・・・一瞬で作り出すなんて・・・彼女は一体・・・


「ねえ・・・さっきの質問の答えは?答えないなら、もう行くけど・・・」


えっ・・・待って!この流れからして助けてくれるんじゃないのか?!


さっきの質問??あっ『何をしているの・・・?』かって聞いていたな・・・もう、色々あり過ぎて、そんなの事忘れてしまっていた・・・


私は慌てて彼女の近くに行く・・・


「す・・・すまない・・・余りにも急な展開で頭が追い付いていなくてな・・・君は・・・何者だ?」


「?フウはフウだよ?それより、何をしているの?答えないなら帰るけど・・・」


何をやっている自分は、何者かを問う前に!質問に答えるのが先だろう!!こちらはお願いをしている立場なんだぞ!


「いや・・・えっとだな・・・今私達は、仲間を奴隷にされようとしている・・・・」


「あの馬車の中?」


私が説明する前に彼女がそう言う・・・何故わかるのか・・・だが、その疑問も今も使っている巨大な魔法を見てこう思う・・・この子なら何をしても可笑しく無いと・・・


「ああ・・・そうだ・・・」


私は、そう言った・・・素性の知れないものに助けを求めるのは間違っていると自分も思う・・・だが、もう既に私達には、もう、後が無いのだ・・・・藁にもすがる思いでそう呟く・・・


「解った・・・じゃあ・・・全員倒して連れてくるね!」


そう言った瞬間、彼女の身体は一瞬消えた・・・何が・・?そんな事を考える前に、気づいた時には、全ての人間が倒れていた・・・


あの一瞬で・・・何が・・・起きた?・・・まさかとは思うが・・・今の子供が倒したのか・・・?先程の一瞬で??!!


「ついでだから、皆の傷も治すね♪」


そう言って、いつの間に戻っていた子供は、魔法で私達の傷を一瞬で直す・・・


「・・・これは・・回復魔法・・・そんな、こんな一瞬で・・・傷が・・・」


普通ならどんな使い手でも数秒は魔法を使って、回復魔法を使って治癒するのにこの子は一瞬で回復させて見せた・・・


私達が唖然としていると子供は笑いながらこう言って来た・・・


「助け出したので!ここの国の情報下さい!」


と・・・・はい?この国の情報??


――――――――――――――――――――――


「ふーん・・・ここでは、人間以外を奴隷にする為に捕まえたりするのね・・・」


「・・・ああ・・・というより・・・私達の住処も・・・段々人間達に追いやられているんだ・・・」


私達は集落へ恩人である。フウと名乗った子供を案内しながら、私達の現状を説明する・・・


というより、ここではってこの辺りの国々の人間は人間以外の種族を乱獲しているのは周知の事実のはずなのだが、何故初めて聞いたようにふるまうのか?


どこか遠くから来たわけでは無いだろうに・・・


ちなみに、先程倒した人間は、殺さずに、この子が傷を治し、魔法で拘束しただけで、放置してきた・・・


本来は全員人間は殺すべきなのだが、助けてもらったの手前、恩人の人間は殺さないと言う意向に逆らう事は出来なかった・・・


だから、せめて、人間に対する恨みを言葉にして伝えた・・・


「男性もほとんど・・・人間達と闘い命を散らすか、捕まってしまい・・・もうほとんどいないのだ・・・・」


「ふーん・・・」


だが、その思いを伝えても、彼女はただ相槌をうつだけだった・・


・・その態度に少し、イライラしながらも、私はある事を考えていた・・・


(何故・・・私達を救ってくれた?)


この人は何故・・・私達を救ってくれたのか・・・その事が頭の一部でずっと考えていた・・・


見返りが無いのに何故・・・?


情報が欲しいなんて言っていたが、そんなの、どこにだって手に入るだろう・・・わざわざ争いに巻き込まれてまで手に入れるものでは無いはずなのに・・・


そんな事を考えていると、子供がいきなり・・・


「・・・?争っている音がする・・・」


「何?!!」


何だと?そんなの聞こえないぞ・・・第一もし、エルフの里で争っているのなら、ここまで距離がありすぎて、聞こえるはずが無い・・・一体どこで・・・


問いかけようとした瞬間、彼女が走り出そうとしているのが見えた・・・


「ま・・・待て!!」


そう言ったのに、彼女は次の瞬間には、目の前から消えていた・・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・・・・・・・何があった・・・?」


「?貴方達を襲って来た人達を倒しただけですが?」


私達はあの子がどこに行ったのか見当がつかず、しょうがなく、一度村に戻って、探す人員を選び探索しようと話が決まり、急いで村に戻って来たところ・・・


村には、百を超える人間達が倒れ、そこに、先程居なくなった子供がいた・・・・


「・・・これだけの人数をか・・・?」


えっ何・・・?この人間達全員倒したの?その前に喧騒が聞こえたってこの村だったの?!


さっき走り出した所からここって結構離れていたよね?聞こえたの?私が混乱していると・・・


「?数百人程度余裕じゃないですか?」


何て事をこの子供が言ってきた・・・この子本当に何者だ?


・・・とにかく、村は助かったのだ、余計な事は考えないでおこう・・・第一不要な事を聞いて、恩人の不快を買いたくは無いしな・・・


「・・・・・・・・・・解った・・・考えない様にしよう・・・とにかくありがとう・・・貴方様のおかげでこの村は助かった・・・」


そう言って、私は頭を下げた・・・本当にこれだけの人数、この子がいなければ、どうなっていた事か・・・もう、村には子供か、闘えない女性しかいなかったのだから・・・


「それでお礼にもてなしたいのだが・・・」


そうだ、お礼をしなければ・・・これだけの事をしてもらってこのまま返してしまっては・・・エルフの沽券に関わる・・・


「いらない・・・」


だが、そんな思いも、彼女に一蹴されてしまう・・・


「えっ・・・ですが・・・それでは私達の気が・・・」


「それに・・・この人達をずっとここに置いておくの?」


確かにそれは困る・・・それにこれだけの人数処分するのにも、大変だ・・・そんな事を考えていると・・・


「この人達は私が送り返しておくから、貴方は他のエルフ達を見ていて・・・怪我は直したけど、精神的に参っているのもいると思うから・・・」


彼女がそんな事を言って来た・・・


「人間をそのまま街に戻すと言うのか?!!」


「?そのつもりだけど・・・?」


それは、あり得ない手だ・・・これだけの人数の人間が襲ってきたのだ・・・今回は彼女に救ってもらったが、次襲われたら対処何て出来ないだろう・・・


第一、この人間達は村を襲って来た、この村の場所を知っているという事は、また人間は死なない限り襲ってくる・・・


元居た場所に返してしまったら、また同じことの繰り返しだ・・・一度やられた位では、人間は諦めない・・・それほど強欲なのだ・・・


殺す以外、選択肢など無いのだ・・・


「こいつ等は私達の村を襲ってきたのだぞ・・・」


私は出来るだけ冷静にそう言う・・・とにかく、考えを改めてもらわなければ・・・


「?だけど、倒したのは私だけど・・・」


「・・・それは・・・そうだが・・・」


「殺すか殺さないかは・・・私が決めるのが筋じゃない?」


そう言われてしまっては、ぐうの音も出ない・・・こちらとしては・・・助けてもらった身なのだから・・・


「・・・だが、戻しては・・・・我らの所にまたやってくる・・・」


とにかく、このまま戻しては元の木阿弥だ・・・絶対にそれだけは阻止しなければ・・・


そう私が言った瞬間、子供から、巨大な魔力が溢れ出した・・・・


何だこれは・・・・こんな魔力量・・・見たこと無い・・・・彼女は・・・一体何者だ・・・


「・・・今何をした・・・」


私は震える声でそう言う・・・すると、彼女は説明をした・・・


森全体を結界で覆い、人間達が森で迷う様にしたと・・万が一里に来ても、里にも結界が張っている為、里には入れない事を伝えた。


そして、私達はさっきの結界を作った際、魔力で印を付けられ、その印が付いている者のみ、森で迷わず、村の結界に入れる様になるという事を言って来た・・・


「・・・そんな事が・・・」


あり得ない・・・そう率直に思った・・・この広大な森を覆う結界なんてそんな事できる訳が無い・・・だが、先程の膨大な魔力何て今まで見たことが無かった・・・あれ程の魔力を使えるという事は・・・本当に・・・?


自らの魔力を探る・・・私達に印を付けたと言ったが、それすらも感じることが出来ない・・・


だが、森全体に本当にうっすらとだが、先程は無かった、魔力の痕跡を感じる・・・・


そして、気づく、先程、気づかない内に、私達の近くに現れたことを・・・さっきは、戦闘に夢中だったから、気づかなかったのか?と思ったが、何てことはない、魔力の痕跡を消しながら、近づいたのであろう・・・


普通なら、あり得ない、だが、最早目の前に居る子供は、私達の理解の外に居る・・・そう考えれば納得する、先程いった事が本当だとしたら、私達に気付かずか無い魔法の印をつけたのだろう・・・魔法に精通している私ですら気付かない印を・・・・


そして、うっすらと感じている、この魔力、先程放った魔力量から、私が感じている魔力の痕跡以上に強度が高い結界が張られている可能性が高い・・・


「あ・・・貴方様は神の使いなのですか・・・?」


私は震える声で、そう言った・・・もはやこの力は、人智を超えている・・・・


「フウはフウだよ・・・?お父様の一番の奴隷♪」


そう言って、彼女は右手を見せて来た・・・そこには、奴隷の印??!!


「・・・!!?」


あ・・・あり得ない・・・あれ程の力を持ちながら、奴隷など・・・それに、あれ程の魔力を持った者に対し生半可な魔力で奴隷の印を付け様なら、簡単に解除されてしまう・・・それを行える人物とは・・・


「・・・主は・・・貴方様の主人は・・・神様なんですか?」


そう、印を付けたのが神様ならあり得る・・・突拍子もない発想だが、先程の魔力・・・そう、信じるに値する程の魔力量だった・・・それを超える者・・・神しか思い当たらなかった・・・


「?お父様は人間ですが・・・?」


・・・今なんて言った・・・?お父様・・・恐らく、主の事を指しているのだろう・・・呼び方はともかく、その後、何て言った・・・


お父様は人間・・・そう言った・・・人間・・・私達の住処を奪っていった・・人間?!


あり得ない・・・人間が、あれだけ力を持ったこの人を奴隷にするなど・・・・・・騙したのか?!この子を!!


そう考えれば納得する・・・力を持っていても子供は子供・・・言葉巧みに誘導して、奴隷の印を受け入れをさせたのではないか・・・いやそうとしか考えられない!!


自ら奴隷になる者等いないのだから・・・


「貴方は!騙されています!!早くその人から早く離れて!そうしないと!!大変な事に!!下手をすればすぐに売り飛ばされ・・・」


私は慌ててそう言う・・・恩人を救い出さなければ・・・その一心でそう言う・・・だが、次の瞬間・・・


「お父様の事を悪く言うな!!!!!」


そう、彼女が叫ぶと・・・大地が震えだした・・・何だ・・・この子供から発せられるプレッシャーは・・・私は無意識に体が震えだす・・・


「さっきの言葉取り消して・・・!」


私はこの圧力から逃れたい一心で首を縦に振る・・・すると、今まで全身にかかっていた圧力が消える・・・・


「はあはあはあはあ・・・」


私は、空気を取り込みながら、息を整える・・・そして、いつの間にか消えた彼女を見て、私は安堵から、そのまま気を失うのであった・・・

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