第31話 次の、行動は
「具体的にどうすれば現状が変わるのかわかっていないし、そもそもなぜ世界が変化したのかもわかっていない。そんな中でただ動くのは愚策だ。今は状況を見るべきだと思う」
「そーそー。俺もそう思ってた」
「うっそだぁ、なのです……」
俺達はレノの横たわるベッドを囲んで話し合っていた。
レノから見て右手側に俺とフィア、左手側にセラとクラム。そして足元にリルア。レノは背中にクッションを当てて上半身を起こしている状態。
レノの顔色はこの1週間でだいぶ良くなった。まあ、ほとんど付きっ切りでセラとフィアが看病している中で良くならなかったら、だいぶやばいって事だけど。
体つきはまだまだ痩せてるし、黒い魔紋が痛々しいけど、すぐに壊れてしまいそうな感じは薄くなった。
「なーんか、この世界がこうなった理由。わかりそうな方がいませんでしたっけ」
「そんな都合のいい存在、いるわけないですわ。…………いえ、いますわね」
「いるのかーい……です」
なんとなく、1週間でこんな話題をしたけど、きちんとは話していなかった。
これからのこと。
この終わった世界でこのまま過ごす、でも誰も責めないはずなのに、誰一人として俺が、話す中でポツリと言った「世界を元に戻したい」ということに反対せず、当たり前のように一緒にやる、という判断をした。
1人でもやるつもりだったけど、やっぱり仲間が一緒だと心強いし、嬉しい。
「ああ……ルーナフェルト、か。確かに彼は色々知っていそうだ。対話に応じるとは思えないけれど……話を聞きに行く価値はありそうだね」
ルーナフェルト。
リルアの過去の知り合いであり、先生。レノに酷いことをして、リルアの話では物と言っていたらしい。
話を聞くだけだと、悪いイメージしかない。
絶対悪役。
何がしたいのかわからない、最重要危険人物。
「ならわたくしがもう一度行きましょうか。まだあの街にいるかもしれませんわ」
「流石に移動しているんじゃないですかねぇ。それに、相手にしてもらえなかったんでしょう?もう一度行った所で同じなのでは?」
「それは……そう、ですわね」
留まる意味がないのなら、移動している可能性は高い。
「あの街にもう一度行く価値はあるかもしれないね。彼が居なくとも。何か残っているかもしれないだろう?」
「うっかり忘れ物をするような方だとは思えませんけど」
「物だけでなく、痕跡だとか、魔力とか。何かわかることはあるはず。無理に行け、とは言わない。僕が行けるわけじゃないから……」
今のレノは家の中を移動することさえ大変。まあ、セラのこの家がでかすぎるってのもいけないんだけど。家ってより塔だ。石の塔。俺でさえ端から端行くのは疲れるもん。最初にこの街にこの塔ごとセラの魔法で転移してきた時には街の人達も驚いてた。
でもま、広いに越したことはないけど。使いやすいし。
とにかく、そんな状態だから外にだって出られない。
「俺が行く。何もしないよりはマシだし、何にもなくたって運動にはなる」
「ルトでもいいんだけど……魔王が1番探しているのはルト、君だ。それを自覚して動かないと」
そうだった。
「私が行きましょうか。隠蔽は得意ですよ」
「足ないのに?無理だろ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。セラと一緒に義足を作ったんで。いやあ、膝が残ってて良かった」
なんだ、家の中ではセラに手伝ってもらうか、杖を使ってるくせに。あれか。セラとくっつく理由にしてるってことか。
でも、クラムが来てくれるならありがたい。
1人でも行けなくはないけど、俺は細かい魔法だとか、そういうのは苦手だから。
「ならわたくし、魔王城下町まで行ってきますわ。様子見くらいしなくてはいけませんものね。セラとフィアは、レノの治療に専念してくださいまし」
「危険じゃないかな。敵陣に乗り込むのは」
「あら。わたくしが見つかるようなヘマをすると思っていまして?」
リルアなら大丈夫だと思う。たとえ見つかったとしても。なんとなく、そう思う。
「でもなんで?なんで魔王城下町?」
「何も行動しないより、何かしらした方がいいと思いますの。あそこなら、何かしら得るものがあると思いません?」
「そうだね。でも気をつけて。次捕まれば、もう解放はされない。悪ければ殺されるよ。なんで最初に殺されなかったのかが不思議でならないけど」
魔王も魔王でよくわからない。
魔王は俺を殺せなかった。俺も魔王を殺せないのかな。なんで殺せなかったのかは、わからない。何か変な魔法が働いたみたいに最後の一撃が出なかった。
でも殺せないはずはないはずなんだ。前の魔王は勇者に殺されているわけだし、その前だって。
それとも、魔王は勇者を殺せない、とかか?……いや、あり得ない。そんなのは、ズルいしおかしい。都合が良すぎる。
本当に、わからないことだらけ。
家にあった本、ちゃんと読んでおくべきだったなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます