第324話 お馬鹿な2人

…てか俺たちは何をやってんだ。イベント中にやる事じゃねーだろ。告白とかキスとかは家でゆっくりやるのが定石だ。こんな落ち着かない所でやるのはマナー違反だぜ。少しは自重しないとな。


ーー当たり前だ。いい加減にしろ。


「タロチャン、もっとチューしよ。」


そう言いながらみくが俺に迫りキスをしてくる。当然ながらそれを拒否する事など俺にできるわけもなく受け入れる。


ーーおい。


だがここで俺はやらかしてしまう。ついうっかりいつもの癖で舌を入れて絡めてしまったのだ。みくは目を開けて驚いたような顔をするが、すぐにジト目になり不満そうな目つきで俺を睨む。それでもディープキスをやめない所がみくらしい。


「ぷはっ…。なんか慣れとるね。キスは初めてじゃないん?」


…なんか怒ってんだけど。この展開は嫌な予感がするな。


「ん…まあ…」


「誰と?」


「え?」


「誰としたん?」


「いや…いいじゃん。」


「いいから。」


「あ、はい。」


ーーみくが不愉快そうなオーラを出している為、慎太郎はすぐに折れる。


「…楓さんと、牡丹と、美波です。」


「ふーん。」


なんか怖いんだけど。みくは空手やってんだよな。打撃でかかってこられたら堪んねえんだけど。


「あの舌遣いはかなり慣れとるよね。しょっちゅうやってるん?」


「いや…もういいーー」

「ーーそうゆうのいいから。さっさと答えて。」


「あ、はい。すみません。」


ーーみくから邪気が出始まっているので慎太郎は怒らせないように無自覚で行動に移す。


「…楓さんと牡丹とは毎日です。美波はたまに…」


「ふーん。」


…怖え…怖えんだけど…さっきまでのラブラブモードはどうなったの…殴られたらどうしよう。


「ならウチにも毎日してくれるやろ?」


「え?」


「は?」


「あ、はい。します。」


「うふふー。そんなら許してあげる。ほら、タロチャン、ギューってしてー。」


「はいはい。」


ーーみくに急かされ対面座位のままみくを抱き締める。


「えへへ。ウチ、タロチャンにギューされるの好き。」


「そっか。喜んでもらえたんなら何よりだよ。」


くっそ可愛いんだけど。なにこの可愛い子。もうこのままベッドに押し倒してヤッちまいてぇぇぇぇぇ!!!


ーーおい、いい加減にしろ。真面目にイベントやれよ。



ーー




ーー




ーー





「…ちょっと冷静になろうな。今はイベント中なんだから。そろそろマジメにやるぞ。」


「…だね。ちょっとウチも浮かれすぎやった。」


ーーようやくイチャイチャするのをやめた2人。マジでいい加減にしろよ。


「現状を確認するか。みくの機転で最初の3日はまずみくが投票で票を集める事は無いだろう。だが問題は4日目だ。盾のカードを持ってない以上はここを切り抜けられるかがイベントを勝てるかどうかの山場になる。」


「うん。それはウチもわかってる。」


「それなのにあんな勝負に出て怖くなかったのか?」


「怖くないよ。だってタロチャンなら必ずそっちサイドでプレイヤーを堕としてくれるって信じてるもん。それに…タロチャンと死ぬならウチは怖くない。」


「みく…」


ーーおい、またイチャイチャするんじゃないだろうな?


「安心しろ。絶対みくを死なせたりしない。俺が守る。必ず4日目の投票までにこっち側で4組見つけて蹴落としてやる。」


「うんっ!ウチの王子様信じてるで。」


ーーそう言いながらみくがまた慎太郎にくっつく。あー、イライラする。


「まず、明日は情報収集だな。他のプレイヤーの目線、言動、癖、心理。それらを注意深く見極める。幸いな事に俺は謎解きやら心理戦の類は大得意だ。正直不謹慎だがワクワクしてんだよ。面白すぎて逆に震えて来てるぜ!やろうぜ、みく!!俺たちの凄さを周りに知らしめてやろうぜ!!」


「あはっ!ウチらが組めば無敵やで!!ウチとタロチャンの力を見せたるで!!」



ーー夜の部屋で2人は立ち上がり、高笑いを始める。能天気な奴らだ。


ーー知能指数が同じ位のお馬鹿な2人の頭脳戦が幕を開ける。

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