第322話 みくの駆け引き
ミリアルドに促され、俺たちプレイヤーは自室へと向かう。向かうとは言っても部屋がどこにあるかもわからない。相変わらずの適当っぷりだ。
あてもなく直進していると立て看板のような物が立ててあり、そこにはこう記されている。
・2階 赤の卓
・3階 青の卓
・4階 立入禁止
リーダーたちは3階って事か。4階が気になるけどルール破ったら処罰されんだろうな。
看板を確認すると、誰もが無言で階段を上り始め、各々の階層へと散って行く。
そして3階に着いた俺は自室を探す。この館はなかなかに広い造りだ。ガチバトルをやったとしても大丈夫なぐらいのフィールドであろう。そんな事を考えながら部屋を探していると俺の名前が書かれたプレートが見つかる。最奥の部屋だ。俺はゆっくりとドアノブを回し、部屋へ入る。すると、
「タロチャン!!」
みくが俺へと抱きついてくる。
「ええい!くっつくな!離れろ!」
「いやや!離れたない!タロチャンにくっつきたい!」
そんな事されたらたまったもんじゃない。こんな密室で、しかもみくと2人っきりで何日も過ごすわけだろ?そんでボディタッチが激しいときたら押し倒しかねないからな。こんな可愛い女子高生と一緒で理性保てる奴がいるなら見てみたいわ。
「いいから落ち着けっての…!マジメな話が出来ないだろうが…!」
「膝枕してくれるなら落ち着くー。」
「はぁ…わかったから。ベッドに腰掛けさせてくれ。」
なんだか疲れた俺はみくを引き剥がす事を諦めて要求を大人しく飲む事にした。当然みくはご機嫌でベッドへと移動し、俺が座るのを待ち、座ると同時に俺の膝に頭を乗せて来る。
「えへへー!タロチャンの膝やー!」
「普通逆だよな。」
「ん?ウチにして欲しいん?いつでもしたげるでー?」
「……まぁ、たまになら。」
ーー意志の弱い男である。
「みく、さっきのアレはどういう事?」
「ん?アレって?」
「盾のカードを持っている事と、使用した事をあの場で宣言した事に対してだよ。どうしてあの場で言った?」
作戦会議をする前にみくの真意を確かめる必要がある。みくが何の考えも無しに気まぐれで発言したのか計算で言ったのかでみくの評価は大きく変わる。
「あそこでウチがああ言えばまともな神経してたら誰もウチに投票せーへんやろ?盾のカード使うてるやつが最多得票数になれば投票したプレイヤーが全部死亡になるわけやし。普通はそんなリスク犯さへん。でも二番煎じはダメや。それが通用するなら盾のカードを持ってないやつでもみんながそう宣言する。そんなんに信憑性ないやろ?アレは一番最初に言うから説得力あるんや。ホンマかウソかなんかは問題やあらへん。だからウチは言ったんや。」
完璧だ。俺はみくを見誤っていたらしい。赤点女子高生の汚名を着せてしまった事を心から詫びよう。
「流石だなみく。」
「えへへー。もっと褒めてー。タロチャン、おててが空いてるよー?ウチの頭ナデナデしてー。」
「はいはい。」
「うふふー。」
みくは満足そうな顔をしている。きっと人に甘えたいんだろうな。ま、これぐらいで喜んでくれるならいいか。
ーーまたこの馬鹿は能天気な事をほざいてやがる。
「で、みくは盾のカードを持ってるのか?」
「ううん。持ってへんよ。」
「それであんな自信満々に言うとか図太いな。」
「ハッタリってそうせんとダメやん。自信なさげに言ってもウソってバレてまうもん。ウチはあそこが勝負所思うたから。」
「確かにそうだ。みくは賢いな。赤点女子高生なんて思ってごめん。」
「ちょいちょいちょい!!タロチャンそんな風にウチの事思うてたん!?失礼や!!ウチは謝罪を要求します!!」
「頭撫でてやるから許してくれ。」
「そんなんじゃダメですー!!」
「んじゃどうすればいい?」
「…チューしてくれたら許しあげてもええよ。」
「じゃあ許してもらえなくても我慢するかー。」
「ちょっと!!ウチ現役JKやで!?普通はお金払ってでもしたいって思うんやで!?それを断るって!?」
「あのな、みく。そういうのは好きな人としなきゃダメなんだぞ。」
「ウチ、タロチャン好きやもん。」
「はあ…。それは違うって。あのね、みくは甘えたいんだよ。だから俺に懐いちゃってるだけなんだって。オーケー?」
まったく最近の女子高生には困ったもんだ。ただ人恋しいだけのものを好きと勘違いしちゃうんだもんな。そしてそれを鵜呑みにして本気になっちゃうモテない男がいる。そんでそれに気づいた女は男から去るが、俺みたいにモテない男は免疫やら耐性が無いからそれを受け入れられなく、ストーカーやら殺人やらに走っちゃうんだよな。
でも俺は大丈夫。ハナっからそんな勘違いはしてないですから!俺がこんな可愛い女子高生にモテるわけがない。牡丹は例外中の例外。それに牡丹だって一年経てば気持ちは変わる。美波も楓さんもアリスもだ。だから間違っても期待なんかしてないんだからねっ!?
ーーとまあ、期待してる感アリアリな慎太郎だが、彼のモテ期に終わりは見えない。当然ながらーー
「…タロチャンはわかってない。」
「ん?」
「タロチャンはわかってない。」
「何を?」
「…ウチ、言いたい事は言う性格やからハッキリ言うで。」
「おう?」
「ウチ、タロチャンの事がホンマに好きです。ウチを彼女にして下さい。」
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