第312話 神姫
『ククク、楽しみだな。妾の力を世界中のプレイヤーに見せつけてくれるわ。』
「凄い視聴者数ですよ…!?100万…200万…まだ上がり続けています…!!」
「流石は”神姫”同士の対戦ね…注目度が違うわ。これを見て。『ノーたん』がトレンド入りしてるわ。」
「もうこの国終わりじゃね?平日の昼間からどいつもこいつも何やってんだよ。」
『フッ、とっとと終わらせて『おこのみやき』とやらを食いに行くか。』
「お前って食う事とゲームやる事だけじゃね?ーー痛ってぇ!?」
ーーノートゥングをお前呼ばわりした事によりピタゴラスイッチのコントローラーが一個、慎太郎の顔面目掛けて飛んで来る。
『むっ?右のコントローラーが消えたぞ。』
「消えたんじゃなくて俺にぶん投げて来たんだろ。」
「私のコントローラーを使って下さい!」
『すまんなアリス。』
「おい無視かよ。」
『さて、始めるとするか。』
「良く考えたら3人で俺の事無視してるよね?」
「まさか”神姫”の戦いを隣で見る事が出来るなんて…!!私、ワクワクしています…!!」
「ウフフ、私もよ。このワクワクを抑えるのにさっきから大変よ。」
「俺は胸がザワザワしてますよ。まさかダメダメ星人が3人もウチにいるとは思わなかったですからね。」
「ノートゥングは誰を使うんですか?」
『妾はアナスタシアを使う。』
ーーそう言ってノートゥングが選択したのはアナスタシア・ナーシセスだった。
『あ、あの…その…えっと…なるべく苦しませてから殺してあげますね…?』
ーーノートゥングが選んだアナスタシアはプリンセスガールズのメインキャラクター5人の内の1人だ。
「意外ですね?ノートゥングはもっと高圧的なキャラを使うのかと思ってました。」
「そのキャラの今のセリフ聞いてた?残虐性は似てるよね?俺からすれば意外でもなんでもないんだけど?」
『確かに妾の性格的に似ておるのはルナだ。だがルナはタメ技重視だからな。隙がデカすぎるのだ。』
「お前の性格に似てるキャラってどんだけだよ。常にイカレてる奴じーー痛ってぇー!?」
ーーまたお前呼ばわりした慎太郎にコントローラが飛んで来る。
『むっ?左のコントローラーも消えたぞ。』
「だから俺にぶん投げて来たんだろ。」
「私のコントローラーを使って。」
『すまんなカエデ。貴様らの恨み、妾が晴らしてくれよう。』
「おい無視かよ。オッさん泣くからな?そろそろ泣くからな?」
「でもアナスタシアを使うという事はアレを極めているわけですよね…?」
「アリスにも無視されてるよ。反抗期だよ。洗濯物一緒に洗うなって言われそう。やべぇ、涙が出てきた。」
『ああ。当然だ。』
「アナスタシアの超必殺技である『終わらない殺戮劇』。コマンド入力成功で遠距離魔法攻撃による即死技。まさかそれを極めているとはね。流石だわ。」
「クソゲーじゃねーか。こんなクソゲーで熱狂してる3億人ってなんなの?みんなアナスタシア使えばいいじゃん。それ以外のキャラ使う意味あんの?」
『さあ、開戦だ。一瞬足りとも見逃すでないぞ。』
ーーだがここで3人に衝撃が走る。SASUKEが先程まで使用していたジュノーからアナスタシアに変えて来たのだ。
「な、なんで…!?」
「まさか…さっきまでのジュノーは本気じゃなかったって事…!?」
「いや、ノートゥングがアナスタシア使うからだろ。即死使う奴と戦うならこっちも即死持ち使わなきゃいけないの当たり前だよね?バカなの?」
『ククク、面白い。どちらが真のアナスタシア使いか教えてくれるわ。』
「いや、絶対SASUKEが勝つよね?そいつチーターだって言ってんじゃん。」
ーーノートゥングとSASUKEの第1ラウンドが始まる。開始早々ノートゥングが人の動きとは思えない程の高速コマンド入力を行い、アナスタシアの超必殺技、『終わらない殺戮劇』を発動させる。
『これで終わりです…!!死んでからも尚、苦痛が続く地獄を味わって下さい…!!終わらない殺戮劇!!!』
ーーアナスタシアが空間を裂き、中からあらゆる拷問器具が現れる。それをSASUKEのアナスタシアが抗う事も許されず、グチャグチャにすり潰されながらも行われ続け、悲鳴が続く中KOのテロップが表示される。
「す、凄い…!!凄すぎます…!!」
「ああ、本当だわな。ドン引きだよ。ノートゥングそっくりじゃん。コレ見たいからアナスタシア使ってんだろ絶対。」
「勝てる…!!勝てるわ…!!」
『ククク、さぁ、3本連取で終わらせるぞ。』
ーーしかし、勢いづいたノートゥングだったのだがこの後、ウソのように3本連取されてボロ負けした。
「ま、負けた…!?」
「そんな…!?」
『わ、妾が負けるだと…!?な、何故だっ…!?』
「だからチーターだからだろって。インチキしてんだから勝てるわけないだろっての。」
ーーうなだれる3人。だがそんな重苦しい雰囲気の中で楓が口を開く。
「完敗だったわね…でも…勝機はあったと思う。」
「いや、ないですよ。相手のSASUKEはズルしてんですから。俺の話聞いてました?」
ーーそれに呼応するようにアリスが相槌をうつ。
「そうですね…次は…次は必ず勝てます…!!いいえ、勝ちます…!!」
「だーかーらー、SASUKEはチーターだっての。何回やっても勝てないの。」
ーーそして、ノートゥングも2人に同調する。
『…そうだな。鍛錬が足りんかったのが敗因だ。もっと…もっと鍛錬を積んで次こそは妾が勝つ!!』
「あぁーっ!!敗因はイカサマされたからなんだっての!!何回やっても無理なものは無理なの!!」
『ククク、そうと決まれば早速練習をするぞ!!』
「ウフフ、”神姫”に教えを請えるなんて光栄ね。ぜひお願いするわ。」
「がんばって強くなります!!」
ーー3人がキャッキャしながらプリンセスガールズアルティメットファイトをプレイしだす。それを慎太郎は死んだ目で見ていた。
「……はぁ。たこ焼き食いに行くか。」
ーーこの後ノートゥングたちがSASUKEと再戦する事は叶わなかった。この対戦を観戦していた者たちから多数、SASUKEのチート行為について通報された為、SASUKEはバンされた。また、ゲームバランスの悪さが露呈された事により大幅な修正が行われ、やっとまともなゲームへと変貌を遂げた。それにより3人がより一層このゲームにのめり込んで行く事になるが、それはまた別の機会という事にしよう。
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