第257話 ポンコツモード

【 慎太郎・楓・アリス 組 2日目 AM 8:35 洞窟 】



「楓さん。朝ですよ。起きて下さい。」


「んっ…ん…」


…エロいって。アリスいなかったら本当に襲いかかってるよ。無防備すぎだろ。


「…ん…おはよ…ございます…」


「やっぱり小刻みだとキツいですか?」


俺と楓さんは交互に睡眠を取った。最初に楓さんが3時間睡眠を取り、その後俺が3時間取る。そして最後にもう一度楓さんが2時間取って現在に至る。楓さんは朝が弱いからより一層ツラいんだろう。


「だいじょぶ…です…」


「アリスが朝御飯の用意してくれてますけど食べられますか?」


「お腹は空いてるから食べます…もうちょっと時間くれればシャキッとしますから…待ってて下さい…」


「楓さんのペースで良いですよ。焦らなくて良いですから。」


「あ…そうだ…アレはどうしよう…」


「アレ?アレって何ですか?」


ーー楓が慎太郎にもたれかかり、耳元で囁く。


「キスですよ。おはようのキス。」


「…それに関してはしっかり頭働くんかい。」




ーー




ーー




ーー





【 美波・牡丹 組 同刻 慎太郎たちから200m地点後方 】



「…アレわざとやってませんかぁ?」


ーー牡丹のハイライトが消え、ヤンデレモードに入っている。慎太郎がいるのに接触出来ないという過度なストレスにより牡丹の精神状態は非常に危険だ。

だが今のポンコツモードに入っている美波は動じない。


「牡丹ちゃん。あんなもの些細な事よ。」


「そうですかぁ?私はもう限界ですねぇ。タロウさんの顔を近くで見て、タロウさんの声を近くで聞いて、タロウさんの匂いを近くで嗅いで、タロウさんに接吻をしてもらいたいのでもう行きますねぇ。何でこんな事をしていたんですかねぇ。時間の無駄でした。」


ーー牡丹が危険な匂いを撒き散らしながら慎太郎の元へ向かおうとした時だった。


「いいのね?本当にいいのね?」


ーー美波の言葉に牡丹は足を止める。


「良いに決まってるじゃないですかぁ。」


「ふぅん。それなら私は1人でタロウさんの美波成分を空にするね。禁断症状を起こして襲いかかって来るタロウさんを堪能させてもらうね。」


「ーーッツ!!それは…!!」


「タロウさんから襲って来るなんてなかなか見られないのに残念だねっ。私1人で堪能するねっ。」


「う…それは…」


ーー牡丹の瞳にハイライトさんが帰って来る。


「どうする?」


「すみませんでした師匠。」


「ふふっ、おかえり。」


ーーポンコツモードの美波の利点は思い込みの激しさと牡丹の扱いの上手さのようだ。



********************



【 慎太郎・楓・アリス 組 2日目 AM 8:51 洞窟 】



「うーん…」


「どうしましたか?」


ーー慎太郎が食事を摂りながら唸っているのでアリスが心配になり慎太郎に尋ねる。


「いや、俺の予想じゃ牡丹と美波はもう合流して来ると思ってたんだよなぁ。」


「距離があってまだ来れないんじゃないでしょうか?」


「うーん、牡丹はそんなの関係無くやると思うんだよなぁ。絶対牡丹なら朝までには来ると思ってたのにおかしいなぁ。何かあったのかなぁ。」




ーー




ーー




ーー





【 美波・牡丹 組 同刻 慎太郎たちから200m地点後方 】



「タロウさんが私を信頼してくれている…その気持ちに応えてあげたい…でも…」


「牡丹ちゃん、落ち着きなさい。牡丹ちゃんはタロウさんの気持ちにちゃんと応えているわ。」


「どういう事ですか?」


「私たちはほとんど合流してるようなものじゃない。要は別働隊みたいなものよ。私たちの任務は美波成分と牡丹成分をタロウさんから抜き取る事。その為に離れているだけ。ちゃんとタロウさんの期待には応えてるわ。」


「…そうでしょうか?何か道を間違えているような気がするのですが…」


「タロウさんだって私たちと淫らな事をしたら悦んでくれるわよ?合流するよりももっと。」


「合流するよりもっと…?」


「それに私たちも悦ぶ。Win-Winの関係じゃない?牡丹ちゃんはタロウさんと淫らな事をしたくないの?」


「したいです。全力でしたいです。」


「ふっ、それならば今は耐える時よ。罪悪感を感じるならその分あとでご奉仕すればいいのよ。」


「ご、ご奉仕…!?流石は美波さん…大人です…」


「まずは私たちも腹ごしらえねっ!長期戦になるわよっ!」


「はい!」


ーーこのポンコツたちは欲に目がくらみ冷静な判断が出来ていない。

そして彼女たちはまだ気づいていない。この企みがバレて慎太郎にこっ酷く叱られる事を。

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