第245話 模擬戦 芹澤楓 VS 島村牡丹 4

【 模擬戦 現代エリア 東京 】



ーー牡丹の氷華・緋桜により楓の身体が鮮血に塗れる。模擬戦の為、痛みこそ無いが身体の自由はもう効かなかった。楓の敗北は決定的である。


ーー牡丹が近づいて来る足音が聞こえる。楓は自身の敗北を認めた。


「流石ね…完敗よ。」


「……。」


「ここまで実力差があるとはね…正直ショック。でもね、今回は負けたけど次は負けないわ。鍛錬して次は牡丹ちゃんに勝ってみせる。」


「……。」


「それにラブラブチケットは取られちゃったけどタロウさんは諦めないから。絶対私が彼を振り向かせてみせる。」


「……。」


「…牡丹ちゃん?」


どうしたのかしら?さっきから俯いて一言も喋らない。……このまま斬られたらどうしよう。身体動かないのよね。


ーー楓が不穏な事を考えていると牡丹が顔を上げる。それを見て楓は精一杯身を縮まらせる。


「…あれ?ここは…?えっ!?楓さん!?どうされたのですか!?」


ーー牡丹が急いで楓の元へと駆け寄る。


「ボロボロではありませんか!?誰がこのような事を…!?イベントが始まっているのですね!?許せません!!私が血祭りに上げて差し上げましょう。」


「え?お、覚えてないの!?」


「何がでしょうか?」


牡丹ちゃんがキョトンとした顔で私を見つめている。ま、まさか本当に覚えてないの!?怖いんだけど!?本物の二重人格じゃない!?


「ま、まさか私が楓さんにこのような事をしたのでしょうか!?」


「えー…あー…うん…」


「も、申し訳ございません…!!最近記憶を失う事が多くて…決勝戦を始める前に楓さんの控室に行った時から記憶が無いのです…」


控室って…まさか美波ちゃんが来た時に牡丹ちゃんもいたの…!?

あー…なんか納得だわ。私たちの変な空気を感じ取ってヤンデレモードに入ったわけね。


「き、気にする事ないわよ…!これは真剣勝負だったのだから…!」


「楓さん…」


ヘタに思い出されてまたヤンデレモードに入られたら厄介だわ。もうアレ自体無かった事にしないといけないし滅却しましょう。


「わかりました。ふふふ、これでタロウさんとの一泊券を手にする事が出来たのですね。勝った実感が無いのは残念ですが、結果が全てです。」


…悔しいけど仕方無いわね。負けた事は事実なんだし。明日から修行しよ。


『終わったのですね。』


ーー楓と牡丹の戦いが終了し、クラウソラスとブルドガングが2人の元へやって来る。


「クラウソラス?あなたも出ていたの?」


『ええ。元の貴女に戻ったみたいですね。どちらの貴女も素敵ですがやはり今の貴女が良いと思いますよ。』


「ごめんね…言葉の意味が良くわからない…」


『フフ、気にする事ありません。』


「それよりも…ブルドガングさんと仲良くなったの?」


『はい。私たちはとても仲良くなりました。ね、ブルドガング。』


『…まあね。』


ーーブルドガングが口を尖らせながら不満そうに返事をする。


「それは良かった!ブルドガングさん、クラウソラスの事を宜しくお願い致します。」


『……うん。』


ーーめっちゃ口を尖らせながらブルドガングは返事をする。


『ていうか…盛大にやられたわねカエデ。』


「完敗よ。一から出直しね。」


『…それはアタシもよ。クラウソラスには負けたし、ノートゥングにも負けた。全然イイトコ無かったもん。』


「2人で這い上がりましょう。私たちは親友じゃない。」


『カエデ……うん…そうだね…もう2度と負けない!!』


「ええ!」



********************



「ぐすっ…泣いてばっかりです…」


いや、色々と間違ってるから。実際そんなに感動する内容じゃないから。クソチケット争いの結果論だぞ。アリスは騙されてるだけだからな。


「そうだね…友情って本当にいいものだよねっ…!この戦いを通して私たちの絆はもっと深まったと思うもんっ!」


お前らの絆って邪悪な絆じゃない?少なくとも爽やかさは無いよ?特に美波が一番邪悪なチケットに改名してたからね?自重しようね?

てか…牡丹とお泊まりかぁ…成人してれば言うこと無かったのになぁ…おまわりに職質されたらどうすんべ…


「つーか…俺だけ模擬戦やって無いんだけど…」


ーーこうして慎太郎との一泊券をかけた聖戦は牡丹の勝利で幕を閉じた。

そして翌日、彼らは2ヶ月ぶりに俺'sヒストリーの舞台へ上がる事となる。

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