第231話 追加要素

ーーツヴァイが慎太郎たちの前に現れた事により戦慄が走る。もう俺'sヒストリーはやらないのではないかと思っていた彼らにとって突然のツヴァイの出現に驚きを隠せなかった。


『只今より俺'sヒストリーを再開致しまス。』


「…あのさぁ、お前らのその自己中具合直した方が良いよ?」


『検討致しまス。』


…ん?何でコイツこんなに大人しいんだ?いつもなら『カカカカカ!!検討致しまショウ!!』みたいなテンションで言うトコだよな。前みたいにツヴァイじゃないのか?


「お前ツヴァイだよな?」


『そうでスヨ。』


「やっぱそうだよな。」


ツヴァイなのか。テンション低い時もあるのかな。


「…楓さん。そろそろ降りられたら如何ですか?」


ーー楓が慎太郎の背におぶさっているのを見て牡丹は不快感を露わにする。


「うーん、まだ酔ってるみたい♪」


「早く降りて下さい。」


「ココ私専用だも〜ん♪」


「降りて下さい!!」


「キャ〜♪」


「ちょ、ちょっと苦しい!!楓さん!?入ってる!!首絞まってるから!!」


ーー牡丹が楓を引き剥がそうとするが楓の腕が慎太郎の首に食い込んで大変な事になる。

だがハタから見れば3人でイチャイチャしてるようにしか見えない。




ーーパァン




ーーツヴァイが手を叩き、銃声のような大きな音を出す事により慎太郎たちがツヴァイへと注目する。それによってイチャイチャタイムは終了した。


『そのような事は後にして下さイ。セリザワサマ、降りて頂けますカ?』


「はいはい。」


ーーようやく楓が降りた事により牡丹の不満が解消された。


「え?牡丹。美波とアリスは?」


辺りを見渡すが美波とアリスがいない。てっきり牡丹がいつもの如く超人的な動きで先に来たとばかり思っていたのに。


「申し訳ありません…ここへは私一人で参りました…」


「どう言う事だ…?おい、ツヴァイ。美波とアリスはどうした?」


『御二方は現実世界におられまス。ここへは貴方方三名だけ御呼びしたのデスヨ。』


「は?なんで?牡丹と楓さんは”闘神”だからわかるけど俺は関係ねーじゃん。」


『クランリーダーだからデス。俺'sヒストリーはここから大きく変わる事になりマス。その御知らせをする為にクランリーダーには集まって頂いているのデス。』


「ほーん、なるほどね。わざわざクランリーダーが集められるぐらいなら相当大きな変化があるって事だよな?」


『そうなりマスネ。このメンテナンスにより大きく2つの追加要素が加わりました。

1つ目が”メインスキル”と”サブスキル”の導入デス。』


「なんじゃそりゃあ?」


『先ずは”メインスキル”から御説明致しまス。此方は今までで例えるなら《剣聖》等の事となりマス。簡単に言えば従来のスキルですネ。』


「ふーん。じゃあそこは変更は無いんだな

?」


『はイ。スロットも従来通り3つとなっておりまス。問題なのが”サブスキル”です。こちらは簡単に説明すると回復やデバフ、トラップといった類のものになりマス。口で説明するよりも実際にモニターで御説明致しまス。』


ツヴァイが手を掲げると闇の中からモニターが現れる。前に”闘神”発表の時に使ったアレだ。

モニターが点くと画面には男と女が映っている。プレイヤーなのだろうか。

両プレイヤーがスキルを発動させる。どちらも銀色のエフェクトを展開させているという事はSSだ。

男のプレイヤーが女のプレイヤーに斬りかかる。しかし、フロアに黒い魔法陣が現れ男を黒いエフェクトが包み込む。


「アレは…!?」


「…ええ、以前に私が喰らったやつですね。」


「前に仰っていたのはアレの事だったのですね。」


『アレが”サブスキル”です。因みに効果は《相手プレイヤーのスキルを完全に封じる事が出来る。但し、1時間のみ。》でス。レアリティはスーパーレアとなっておりまス。』


「おいおいおい、それだけの効果でSレアって。流石にアルティメットは封じられないんだろ?」


『言ったははずでス。全てのスキルだト。アルティメットも例外ではありませン。』


「それじゃあアルティメットの優位性が無くなるって事じゃない。」


『そうでス。コモンやアンコモンでもアルティメットを抑える”サブスキル”は存在しまス。これからの戦いに必要なのは戦略デス。スキルに頼るだけでは生き残る事は出来ませン。』


そうですじゃねぇよ。俺ら的には大打撃だぞ。


「…良い話ではありませんね。私たちはアルティメットに頼って勝ってきました。それが封じられる可能性があるなら非常に厳しい事態といえます。」


「そうだな。力技でゴリ押しが出来ないのはかなりキツイ。」


『加えて忠告致しましょウ。”特殊装備”も封じられマス。例えばセリザワサマのエンゲルを《重力》というスキルで抑えれば機動力が止められマス。』


「はぁー!?それって俺ら殺しじゃねぇか!?改悪にも程があんだろ!?」


『残念ですが貴方方だけが被害を被る訳では御座いませン。上位層は全てデス。』


相変わらずのクソゲーやん。なんでお前らは後出しジャンケンしまくるんだよ。


『”サブスキル”はスロットが5つとなっておりまス。その中で如何に戦略を組むかが鍵となりマス。』


「そうしたらそれはガチャからランダムで出るのかしら?”メインスキル”ばかり出たら”サブスキル”が揃わないって事よね?」


「そうですね。オレヒスのガチャはただでさえ単価が高いのですから資金力がある方が俄然有利といえます。」


『御安心下さイ。ガチャは分けられまス。ですガ、”サブスキル”ガチャは一回1000万円となりマス。』


「ぼ、ボッタクリだろ!?牡丹の言う通りだ!!資金力無きゃ差が出まくりだろ!!」


『救済措置としてイベント終了後にガチャが1回せるように致しまス。まタ、20万人突破と致しまして今回は”サブスキル”ガチャを更に1回無料で回せマス。』


「…救済になってんのかよそれ。」


『1点目の御説明は以上となりマス。』


このクソ野郎勝手に話を終わらせやがった。


『2点目は支配下プレイヤーについてでス。これは貴方方には関係の無い話デショウガ、主人プレイヤーを暗殺する事が可能となりまシタ。但し一回のみデス。失敗した際はそれなりの代償を支払って頂きまス。』


「暗殺?どーゆー事?」


『自分で暗殺しても人に頼んでも構いませン。』


「ふーん。ま、俺たちは奴隷は持たないからいいよ。」


『そうでスネ。最後になりますガ、明日クランイベントを開催致しまス。詳細は後程通知致しまス。メンバーたちで戦略を話し合って生き残って下さイ。』


「お前らに猶予ってもんは無いの?」


本当にクソどもだよなコイツらは。


「大丈夫ですよ。私がお守り致しますから。」


ーー牡丹が幸せそうな顔をして慎太郎の腕にしがみつく。


「あら?私だってタロウさんを守るわよ。」


ーー楓も負けじと慎太郎の腕にしがみつく。


「…だから俺は姫ポジじゃねーっての。」


『話は終わりでス。御機嫌よウ。』


相変わらずの身勝手さで勝手に締めくくられた。状況が悪くなったがやる事は決まっている。俺がみんなを守るんだ。絶対にみんなを守ってみせる。





















「よく暴走しなかったわね。」


ーー慎太郎たちが消えた闇の場所からサーシャが現れる。


『…我慢したわよ。』


「あははっ。私はてっきりたーくんに抱きついちゃうのかと思ったよー。」


ーー同じく葵が姿を現わす。


『…久しぶりだからね。かなりヤバかった。』


「いや〜ん!ツヴァイちゃんカワイイ〜!!」


ーー身体をくねらせながらリリも姿を現わす。


「ここからが本番ね。”サブスキル”を田辺慎太郎たちが何処まで使いこなせるか、そして引き当てられるか。」


「でも実際わかんないよねー。完全に全プレイヤー横一線にされたに近いじゃん。」


『島村がいるからタロウたちが頭一つ抜けてるわよ。』


「それは田辺慎太郎と初期配置から一緒の場合の話よ。分かれていたら『フリーデン』が使えない。大きなアドバンテージとは言えないわよ。」


『あとは私たちでフォローよ。』


「リリちゃん責任重大だねー。」


「わぉ!!リリちゃん大変な感じ!?いや〜ん!!」


『リリ、タロウを最優先ね。タロウ以外はどうでもいいから。』


「よくないでしょ。最低でも結城アリスを守らないとフレイヤ神が黙っていないわよ。」


「だいじょぉ〜ぶ!!リリちゃんが全部守ってまるっとオッケー!!あ、Okay!!」


「リリちゃん発音イイねー!!アメリカ人?」


「ううん、フランス人!!」


「あなたはイギリス人でしょ。本当に適当なんだから。私たちは今回見れないんだからね?ちゃんと出来る?」


「リリちゃんにお任せあれ!!なんかお腹空いちゃった!!夜食食べよ〜!!」


「こんな時間に食べたら太るよー?あ、でもポテト食べたいかな。」


『私も食べたいな。葵の奢りで。』


「あら奇遇ね。私も葵に奢ってもらう予定なの。」


「じゃあリリちゃんも〜!!」


「ちょ、まてーい!!そんな約束私はしてないんだけど!?」


『じゃ行こっか。』


「そうね。」


「ポテトバケツで買おっかな〜!!」


「ちょっと!!待ってよー!!」


ーー俺'sヒストリーの再開により慎太郎たちはまた戦いの中へと身を置く事となる。

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