第179話 洋館

ーー誰かに呼ばれてる



ーー思い出せない



ーー知ってる声なのに



ーーてか…寝心地良いな



目を覚ますとお山があった。

じゃねーよ、牡丹の胸だろこれ。相変わらずの大きさだな。揉みてぇなぁ。俺のフランクフルトを挟んでホットドッグとかやりてぇなぁ。

あ、牡丹と目が合った。なんか照れるな。

いやいやいや、違うだろ。何してんのコレ?


「…牡丹?」


「はい、あなたの牡丹です。」


「…何してるの?」


「気持ち良さそうに休まれていたので僭越ながら膝枕をしておりました。私の膝はタロウさん専用ですので。寝心地はいかがでしたか?」


「ぶっちゃけ最高だった。」


「ふふふ、それなら良かったです。」


「じゃねぇよ!?え?ここどこ!?」


辺りを見渡すと古ぼけた廃ホテルの一室みたいなホラー感バリバリの場所にいる。どう見てもオレヒスだろ。だってゼーゲン持ってるし。


「ゲリライベントが開催されたようです。先程運営から通知が来ました。」


「頻度多すぎだろ。一昨日やったばっかりじゃん。今日は楓さんのシーンに挑む予定だったのに。イベント始まってからどれぐらい経ったの?」


「30分程です。」


「そんなに経ってるの!?起こさなきゃダメだよね!?」


「タロウさんが気持ち良く休まれているのにそんな事出来ません。」


ーー牡丹がキリッとした顔で慎太郎にそう告げる。


あかん。牡丹はポンコツだったんだ。なんでウチの美人どもはみんなポンコツなんだよ。

いや、逆に考えろ、牡丹をうまく導いてあげればいいだけだ。牡丹の扱い方を何気に俺はわかってるはずだ。


「そっか、牡丹は優しいな。でも次からはすぐに起こしてな?その方が俺は嬉しいぞ。」


俺は起き上がり牡丹の頭を撫でながらそう言うと牡丹は頬を染める。


「わかりました。これからはすぐに起こします。」


流石に牡丹の扱い方はわかって来たな。うんうん。


「さてと、それじゃ動きますか。運営からの通知はどんなだったの?」


「このようになっております。」


俺は牡丹からスマホを受け取る。


『いつもご利用ありがとうございます。俺'sヒストリー運営事務局です。この度はゲリライベントにご参加頂きまして誠にありがとうございます。

今回のイベントの内容としましては一つのエリアに30組のクランが集められております。そのクランの中から最大10組だけが生存可能となっております。当然ですが支配下プレイヤーにする事は可能なので皆様どんどん敵を倒しちゃって下さい。

イベント期間は一日目のPM8:00から四日目PM8:00までとなっております。

そしてプレイヤーの皆様を死に至らしめようとするモノたちも配備されております。

ゾルダート500体、???50体、???5体、そしてエリアボスを1体の計556体のモノが皆様を襲って来るのでご注意下さい。

また、今回はエリアボスを倒してもイベントが終了となりません。ただしエリアボスを倒せばランダムでアイテムを入手出来ます。

今回の報酬については何もございません。皆様のご武運をお祈りしております。』


「相変わらず適当な文面だな…???ってのはもう基本なのか?コレってフェルトベーベルとゲシュペンストの事だろ?」


「そう考えるのが妥当かと思いますが、違う事も考えられるので決めつけは危険かと思います。他の可能性も頭に入れるべきかと。」


「そうだな、警戒を強めるか。それにしても天候が荒天なのは初めてだな。」


部屋の窓から外を見ると台風のように雨風が打ち付けている。こんな状況では外に出る事は不可能だ。どうしてかって?そりゃあそうだろ。牡丹は白を基調としたドレスみたいな服を纏っている。こんな服で外に出たら透けてブラが見えるじゃないか。俺だけが堪能するなら構わないがそんな姿を他の野郎に見せるのだけは我慢ならん。


「そうですね、このような展開はホラー小説で良くあります。不謹慎かもしれませんが実はワクワクしております。」


「お!牡丹もホラー好きなの?」


「はい。ホラー小説もホラー映画も心霊番組も大好きです。」


「俺も大好きなんだよ。牡丹とは気が合うな。これから夏になるとそういう事がもっと楽しくなるから今年は一緒に色々見ような。」


「来年も再来年もずっと一緒に見ます。」


「そうだな。確かに不謹慎だけどスゲー楽しみになってきたな。これ終わったらDVD借りに行くか。ホラーのやつ見たくなってきた。」


「ぜひご一緒させて下さい。とても楽しみです。」


「ホントだな。うっしゃ、ならさっさと終わらせるか。外に出てかなきゃいけないけど俺の上着を着れば何とか服透けないよな。」


「あ、外には出られないと思います。」


「やっぱり透けるの嫌だよな。ごめん。さて、どーするかな。」


「そうではないのです、窓を開けようとしたら運営から警告通知が来ました。」


「警告?」


牡丹がもう一度俺にスマホを見せてくる。


『警告

この洋館エリアでは窓やドアから外に出る事は出来ません。洋館内にある脱出口からしか外へは出られません。』


「…この展開って某サバイバルホラーみたいな展開じゃん。やべぇ…ワクワクが止まらねぇよ…」


「ふふふ、やはりタロウさんもですか?私もです。」


「よっしゃああ!!洋館探索へ乗り出すか!!行こうぜ牡丹!!俺たちのエデンへ!!」


「はい、一生あなたに着いて行きます。」


ーー未だかって無い程呑気なスタートを切った慎太郎。だが慎太郎と牡丹はまだ知らない。この洋館は今までのエリアとは違う事を。

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