第172話 第二次トート・シュピール リザルト
闇に包まれた先にあるのはいつもと同じリザルト部屋だった。いや、正確に言えばいつもと同じようなリザルト部屋だな。見た目が同じだけでいつも同じとは限らない。なんか哲学だな。
「タロウさん!!」
背後から声が聞こえるので振り返るとゼロ距離に牡丹がいた。声を発した先って結構離れてたよね?移動速度ハンパないんだけど。
「牡丹!良かった、無事だったんだな!」
「はい、あなたの牡丹です。無事に戻って参りました。タロウさんも御無事で何よりです。」
相変わらず牡丹はブレないな。でも『あなたの牡丹です』はやめような。隣にいる美波の視線が怖いからさ。
「「タロウさん!」」
牡丹の後方から楓さんとアリスがやって来る。
「楓さん、アリス!!」
「良かった!タロウさんも美波さんも無事だったんですね!」
「おう。アリスも無事で良かった。」
俺は日課のアリスの頭ナデナデをする。アリスが幸せそうな顔してくれるのが堪らないな。
「お疲れ様です。」
「あ、お疲れ様でーー」
ーー楓がここで慎太郎に抱きつく。これでもかってぐらいガッツリと抱きつく。
「かっ、楓さん!?」
「私って凄く弱い女なんです。今までは弱さを見せないように生きてきたけどもうやめました。だからタロウさんに甘えまくる事に決めたんです。」
うわ…超良い匂いすんだけど…それに胸の感触が…Bカップのちっぱいが俺の腹付近に当たってる…俺の息子も楓さんに押し当てーー
ーーここで慎太郎の背後から殺気を感じる事に気付く。もちろん出所はわかっている。
「…何をなさってるんですか楓さん?場を弁えた方がよろしいのではありませんか?」
ひいっ…!!ヤンデレモードになっとる…!?あかん…あかんで…!!!
「ウフフ、私は偽らないように生きる事にしたの。だからこれからはくっつきたい時にくっつくの。ね、タロウさん。」
うわ…何この可愛い子。堪んないんだけど。やっぱ明日お城に連れてこう。魔法使い卒業しよう。それでーー
ーーここで更に慎太郎の背後から殺気を感じる事に気付く。今度は出所はわからない。
「へぇ…ちょっと会わない間にずいぶんと変化があったんですね。私も正妻力がついたんですよ。試してみますか?」
ひいっ…!!こっちにもハイライトが無い…!?また制裁力とか言ってるし…!!
「ふぅん、私だって正妻力なら負けないわ。牡丹ちゃんにも、美波ちゃんにも。それにそんなハイライトが無い目をしていて2人に正妻力なんてあるのかしら?」
「ぐはっ…!!」
「ごほっ…!!」
…何だか知らんが牡丹と美波が片膝をついてしまったぞ。何やってんのこの子ら。
「ウフフ、私の勝ちね。さ、タロウさん、キツく抱き締めて下さい。」
「えっ…?いや…その…」
「待って下さい!私も抱き締められたいです!もう充電切れなんですから!」
「わ、私だってしてもらいたいですっ!!」
「みんなズルいです!私だって!」
アリスまで加わってホント何やってんのこの子ら。
ーーパンッ!!!
手を激しく叩く音が聞こえ、俺たちは後ろを振り返る。すると安定のツヴァイがいた。
『何をしているのデスカ?リザルトを始めまス。』
…なんだろう、仮面を付けてるから顔は見えないんだけども怒ってるように感じるぞ。なんでコイツ怒ってんだ?
あ!アレか!コイツって男なんだな。はっはーん、俺がこの美女たちにモテモテで妬んでるんだな。フッ、モテる男は辛いぜ。
『リザルトを開始致しまス。皆様の無事の御帰還心より嬉しく思いマス。』
嘘くせぇ…ホントにコイツは胡散臭い。
『当然の話となりまスガ、どちらのエリアでも貴方方が一位となっておられまス。よっテ、スキルアップカードをそれぞれに進呈致しまス。』
「お!流石は”闘神”が2人もいる組は違うな。楽勝だった?」
「私はただ見てただけで何もしないで終わってしまいました。全部楓さんと牡丹さんが倒しちゃいました。」
そりゃそうだよな。”五帝”だかなんだかってのにも名を連ねてるんだから余裕すぎだろ。
「タロウさんと美波さんも一位なんですから流石です。このクランは誉れ高いですね。」
「いや…俺は何もしてないんだよね…美波が1人頑張ってくれたというか…」
「そんな事ありませんっ!タロウさんがゲシュペンストを足止めしてくれたからこその結果ですっ!」
「うーん…でも俺も流石に頑張らないとな。…ガチ、リストラされそうだから。」
「ゲシュペンスト?ゲシュペンストってこの前の仮面の化け物の事?」
「はい、監獄エリアに飛ばされて地下2階で遭遇しました。」
「監獄に?もしかして特殊装備を手に入れたの?」
「はいっ!プロフェートというのを手に入れましたっ!」
「それは心強いわね。私も”具現”を会得したし、戦力が大幅アップね。」
「楓さん”具現”できるようになったんですか?」
「はい、おかげさまで会得しました。」
マジかよ。トリプルアタッカー完成目前じゃねーか。俺だけ全然強くなってないぞ。
ヤバい…これはヤバい…
『以上デス。御機嫌よウ。』
いつも以上に強引にリザルトを締められて俺の意識は薄れていった。本当に俺も頑張らないとなーー
「うわぁ…ご機嫌ナナメ〜。」
ーー慎太郎たちが消えた場所からサーシャと葵が現れる。
『うっさい。てゆうか何で借りなんて作ってんの?』
「う…いや〜なんていうか葵ちゃんの一生の不覚と言いますか…」
『馬鹿なだけでしょ。』
「酷い!?がんばったのに!?」
『誰があんなにデレさせろって言ったのよ。』
「それは不可抗力じゃん…」
「とりあえず芹澤の”具現”発動には至ったんだから良しとすればいいんじゃない?」
『まあね。でも何であのブリっ子女にプロフェートを与えたのよ。あれはタロウに与える予定だったのに。』
「ログを見たけど桃矢が何かしたわけではなかったわ。偶然相葉の手に入ったのね。」
「いやー、美波ちゃんはもってるねー。違うか、たーくんがもってないだけーーあ、すみません…ごめんなさい…殺気抑えて下さい。」
『忌々しい…』
「仕方がないでしょ、抑えなさい。」
『…うん、わかった。』
「あら、随分今日は素直ね?」
「私は嫌な予感しかしないけど。」
『次はクランイベントなんだからその時にあのブリっ子を始末しよう。』
「ほら、やっぱり。」
「始末って殺すって事?田辺慎太郎の盾にするんじゃなかったの?」
『……』
「冷静になりなさい。クランイベントこそ危険でしょ?次は私は行けないのよ?」
「私もオルガニ見ないといけないしね。ん?て事はリリちゃんがたーくんたち見てるの?」
「そうなるわね。」
「うわぁ…不安…」
「でしょ?ほら、だから盾置いとかないと田辺慎太郎は危ないわよ?一番弱いんだから。」
『…わかった、わかりました!相葉美波はとりあえず殺しません!!』
「やれやれ。」
「リリちゃんは強いんだけど適当だからねー。」
「あなたといい勝負よね。」
「まてーい!私はあそこまで適当じゃないぞ!!」
『疲れたから帰るわよ。甘い物食べたい。ストレス発散しないと。』
「そうね。葵の奢りで。」
「まてーい!!」
ーーこうして第二次トート・シュピールは慎太郎たちの圧勝にて幕を下ろした。
だが、まだ誰も気づいていない。裏で暗躍するモノたちの事を。
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