第169話 真相
【 アリス・楓・牡丹 組 1日目 PM 7:36 】
オルガニ…度々出て来ていたワードだ。だがそれについては私たちは何も知らない。一体オルガニってなんなんだろう。
「オルガニ…一体どういう組織なの?」
「悪いけどそれは言えない。目的も言えない。私が言える事は楓ちゃんたちが俺'sヒストリーをクリアする為には倒さなきゃいけない連中がいるって事を教えるぐらいしかできない。」
「倒さなきゃいけない連中?」
「このゲームを支配してる連中って言えばいいかな?そいつらと近い内に楓ちゃんたちは戦う事になる。その為に私は楓ちゃんの”具現”を会得させたんたよ。」
「何の為に?」
「私たちはそれぞれに担当プレイヤーを設けられているの、そんで私たちの担当が楓ちゃんたちってわけ。」
衝撃の事実だった。私たちそれぞれに担当がいるなんて想像もしていなかった。
「なるほど、早い話が内部争いをしていてその連中が邪魔だから私たちに始末させようって事ね。」
「半分正解かな。始末はしてもらいたいけどやろうと思えばそれはサーシャだけで事足りる。楓ちゃんたちはそいつらと戦わなきゃいけない状況になるんだよ。イベントとしてそれが発生する。」
「ではあなたたちも私たち以外のプレイヤーと戦うという事でしょうか?」
今まで静観していた牡丹さんが葵さんに尋ねる。
「そうだよー。それがシナリオで決められてるからさ。」
「同様にオルガニの方々は他のプレイヤーを鍛えていると?」
「その可能性は否定はしないよ。支援してる奴だっているだろうし。」
「…そうですか。」
牡丹さんは何か考えているような面持ちで葵さんとの会話を切った。
「で?その倒さないといけない連中って言うのは誰なの?」
楓さんが核心に迫る問いを投げかける。
「リッターオルデンの1人であるマルクグラーフの爵位を与えられし男、ミリアルド・アーベントロート。それとアインスというモノだよ。」
「どれぐらいの実力なの?その連中は。」
「ミリアルドは私と同じかそれ以上、アインスは相当強いよ。たーくんと美波ちゃんが加わって5人で戦っても勝てない可能性のが高いぐらいかな。」
な、なにそれ…そんなのにどうやって勝てば…
「それは現段階の話よね?」
「そーだね。」
「ウフフ、それなら勝算はあるわね。」
「ええ。」
楓さんと牡丹さんが顔を見合わせている。どうして勝算があるんだろう?私には理解ができないので2人に聞いてみた。
「どうして勝算があるんですか…?私には絶望的な気がしてしょうがないですけど…」
「簡単な事よ。私のブルドガング、牡丹ちゃんのクラウソラス、タロウさんのバルムンク、美波ちゃんのノートゥング、その全てが今の力が真の力では無いわ。ゼーゲンによって少しずつその力が解放されていく、それならば伸び代がたっぷりあるって事じゃない。」
あ、そっか…ゼーゲンを入手すれば飛躍的にみんなの力が上がるんだ…!それなら勝算があるのは確かだ!
「それにタロウさんも美波さんもまだ”具現”が出来ておりません。それならば2人が出来れば更に勝率が上がります。」
「た、確かに!勝てます!絶対勝てます!」
「まー、勝ってもらわないと困るんだけどねー。あ、そろそろ時間だね。リザルトが始まるよ。」
葵さんがそう言うと周囲が暗くなっていく。
「じゃ、今回の件は楓ちゃんに借り1って事ね。」
「そういう事にしておくわ。」
「夜ノ森さん。」
牡丹さんが葵さんに抑揚の無い声で話しかける。
「ん?なーに?」
「私はあなたがタロウさんを愚弄した事を忘れてはおりません。次に会った時は覚悟しておいて下さい。」
牡丹さんがハイライトの無い目で葵さんを睨みつけている。
「あはははー…か、楓ちゃん!?」
「知らないわよ。私はあなたの友達じゃないわ。」
「酷くない!?」
ーーそのまま周囲が闇に包まれ、アリスたちの第二次トート・シュピールは完全勝利で幕を閉じた。
「なかなかの茶番だったわね。」
「茶番?」
「かなり適当な事を言ってたじゃない。」
「でも敵の事は本当でしょー。」
「それ以外は全部嘘じゃない。そもそも借りまで作って何をやってるのあなたは?」
「うっ…!いや…その…」
「そうやって油断と隙が多いからミリアルドより爵位が低いのよ葵は。」
「でも剣帝が想像より強かったのは確かだよ。楓ちゃんならミリアルドに届くと思うよ、覚醒させればね。」
「及第点だけどね。覚醒できるのかしら?」
「大丈夫だと思うけどなぁ。牡丹ちゃんはどうだった?」
「《水成》はよく使いこなしてたと思うわ。私のゼーゲンが一瞬凍りついていたから。」
「マジ…?サーシャのゼーゲンを凍りつかせるとかヤバいじゃん。たーくん絡ませると牡丹ちゃんはヤバいねやっぱ。」
「島村は覚醒させない方がいいわね。もし覚醒したら島村はリッターオルデンに入れるしかないわ。田辺慎太郎と一緒にね。」
「それ…おっと、ここじゃ本名はマズイよね。えっと、ツヴァイには言ったの?」
「まさか。言ったら発狂するでしょ。」
「ええぇ…ガチギレでしょ…」
「その時はその時よ。そうならないように島村の動向には注意しないとね。」
「やれやれ…とりあえず帰ろうか。お腹空いちゃった。」
「そうね。」
ーーそれぞれの思惑が渦巻く中、フェイズはシフトする。
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