第61話 誇れる仲間

ーー呼ばれている。


ーー美波?


ーー楓さん?


ーーアリス?


ーー違うのか…?


ーーでも聞いた事がある声だ。


ーーわからない。


ーー誰?








「タロウさんっ!起きて下さいっ!」










目を覚ますと安定と信頼の美波だった。夢の中だから寝ぼけていたのだろうか。寝てるのに寝ぼけてるとか自分で言ってても意味不明だな。それにしても相変わらずの可愛さだな美波は。こうして起こされる日々が始まって結構経つけど見飽きるなんて事は無い。それどころか見る度にさらに可愛くなってる。これだけでも俺は幸せ者だな。


「おはよう美波。」


「まだ朝じゃないですよっ!楓さんとアリスちゃんのパーティー中ですっ!」


そうだった。2人のパーティーやってたんだよ。何で寝てたんだっけ?酒なんか飲んでないぞ。寝起きは頭が回らないな。


「どうしてタロウさんだけ寝ちゃうのかしら?私たちはみんな起きてるのにね。悪い兆候じゃないといいけれど。」


「でもこの前私を救ってくれた時は起きていました。何か違いがあるんでしょうか?」


「うーん、謎ですね。体に害が無ければいいですけど…」


ウチの天使たちが俺の心配をしている。

考え込んでいる楓さんは凛々しくて綺麗だし、悩んでるアリスも可憐だし、こんなアルティメット級の美人たちが俺の部屋にいるなんて少し前じゃ考えられなかった事だよな。嬉しいもんだな。頼んだら膝枕とかしてくれないかな。

…あ、思い出した。リザルト行ってたんだよ。何で寝てんだよ俺は。何かの病気じゃないだろうな。


「そうだよ、リザルト行ってたんだよ。ていうか楓さん凄いですね。”闘神”でしたっけ?」


何だか中二心をくすぐるような称号だよな。いいなぁ。カッケーなぁ。俺にも称号とか無いのかなぁ。


「本当ですよ!あの映像見てて私まで嬉しくなっちゃいましたっ!ねっ、アリスちゃん!」


「はい!こんな凄い人と仲間だなんて誇らしかったです!」


「ウフフ、ありがとう。みんなからそう言われると凄く嬉しいわ。それでタロウさん、提案なのですが、私たちでクランを組みませんか?」


「いいんですか?俺としては嬉しい限りですけど楓さん程のプレイヤーならスカウトとかすごい来そうですけど。」


「私はみんなと組みたいんです。私が”闘神”としてみんなの力になれるならこんなに嬉しい事はありません。」


すっごい良い人だな楓さん。楓さんみたいな人と知り合えて本当に誇らしいよ。


「楓さん…じゃあ俺たちでクランを組みましょう!美波もアリスもそれでいいかな?」


「もちろんですっ!この4人で組めるなら嬉しいですっ!」


「はい!大好きな人たちといつでも一緒ならこんなに幸せな事はありません!」


「ウフフ、じゃあ決まりね!それとクランリーダーですけど、タロウさんにお願いしてもいいですか?」


「え、俺ですか?どう考えても楓さんじゃ…」


「いいえ、私はその器ではありません。私も、美波ちゃんも、アリスちゃんも、タロウさんについて来たんです。あなただからついて来たんです。タロウさん以外にこのクランのリーダーに相応しい人はいません。」


「そうですねっ。私もタロウさんが適任だと思います。タロウさんは人を惹きつけるんです。それはリーダーとして必要な資質だと思います。」


「私も同じ意見です。タロウさんの元にみんな集まって来たんです。私たちはタロウさんを慕っています。だからリーダーはタロウさんです。」


やばい、なんか泣きそう。こんなに頼られた事なんて今まで無いからオッさん泣きそう。この子らホンマもんの天使や。


「みんな…ありがとう。リーダーを務めさせてもらいます。みんなで勝ち残れるように頑張るからみんなも力を貸して下さい。よろしくお願いします。」


俺はみんなに頭を下げた。絶対この子らは俺が守ろう。


「当然です。あなたの為、美波ちゃんの為、アリスちゃんの為、私ができる限界以上の事をみんなの為にやります。」


「私の力だけでは頼りないですけど、みんなの為になれるように頑張りますっ!」


「私は回復しかできませんけどサポートは任せて下さい!」


すごい良い仲間だよな。美波、楓さん、アリス、みんな歳はバラバラだけど俺はみんなを心から尊敬するよ。みんなに出会えて本当に良かった。


「より一層みんなの仲も深まりましたね!じゃあ、さらなる親睦を深める為にお酒でも飲みましょうか!」


「あ、すみません。酒は家に置いてないんですよ。基本的に飲まないので。」


「……」


な、なんだ?楓さんが不満そうな顔で俺の事を見ているぞ。


「ど、どうしました?」


「なんでもありません。」


楓さんがプイッとして顔を背けた。何この人、可愛いんだけど。そんなに酒飲みたかったのか。酒好きなんて知らなかったな。


「あ、明日買いましょうよ。ね、楓さん。」


「約束…ですよ…?」


楓さんが上目遣いで甘えるように言ってくる。クッソ可愛いんだけど!美波とアリスいなけりゃ押し倒してるよ!?


「も、もちろんです!じ、じゃあパーティーの続きしましょうか!」


気を紛らわせないと辛いぞ。なんせ美波が来てからずっと処理できてないんだ。いつ爆発するかわかったもんじゃない。落ち着け…クールになれ、クールになるんだ田辺慎太郎!!



こうして楽しい内に夜が更けて行った。


だが、明日のクランイベントにて俺たちは窮地に陥る事になる。

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