第19話 トート・シュピール開戦
「ただいまー。ふぅー、疲れた。」
「ただいまっ!疲れましたね。」
現在の時刻は夜の10時36分。楓さんと別れた後俺は美波に連れられて色々と観光をしてたので結構時間がかかってしまった。ま、楽しかったからいいけどさ。
「すぐにお風呂入れますね。んー!やっぱり我が家はいいですねっ!」
いや、美波の家じゃないからなココ。ま、いいけどさ。嫌じゃないし。そう考えると美波の部屋引き払った方がいいよな。家賃無駄だろ。でもな、美波がいると俺の性欲の処理どうすればいいんだよ。隣で寝てると悶々として堪らねぇよな。
そんな事を考えていた時だったーー
スマホの通知音が室内に響き渡る。
俺は咄嗟にスマホを確認する。オレヒスからの通知だ。
『いつもご利用ありがとうございます。俺'sヒストリー運営事務局です。今回は初めてのイベント、トート・シュピールの開催を決定致しましたのでご報告致します。トート・シュピールの概要ですが、1つのエリアに10組のプレイヤーを集めてのバトルイベントとなっております。期間は3日間です。参加プレイヤーは明日の夜10時までにマイページにてエントリーして下さい。
バトル内容ですが、本イベントはポイント形式のイベントとさせて頂きます。ポイントの単位はBPです。ポイントの獲得例としましては、戦闘をすれば2BP、勝利で5BP、敗北で1BPです。他にもBPを獲得する手段はあります。それに関してはご自身で確かめて下さい。
敗北条件ですが、戦闘不能になった時点で敗北となります。当然死んでも敗北です。降参も可能です。
そして最後に報酬と注意点です。各エリア1位のプレイヤーにはスキルアップカードを差し上げます。また、参加プレイヤー全員にメモリーダストを1つ差し上げます。
注意点ですが、最下位になられたプレイヤーは1位のプレイヤーの支配下となりますのでご注意下さい。
それでは多数の参加をお待ちしております。』
「マジかよ…。奴隷になるなんて聞いてねーぞ。」
「どうしたんですか?」
浴槽に湯を入れる準備が終わり美波が部屋に来る。
「オレヒスから次回のイベントについての通知が来たんだよ。でもあまり良い話とは言えないな。ツヴァイが言っていた事に悪いトッピングが加わっている。」
俺は美波にスマホを渡し内容を確認してもらう。
「最下位は支配下プレイヤー…」
美波の顔が青くなるのがわかる。当然だ。美波は奴隷になりかけたのだから支配下プレイヤーという単語に拒絶反応を起こしても無理はない。美波が怖いなら今回は参加をやめるべきだ。無理してまでやる事ではない。
「大丈夫?美波が怖いなら今回のイベントは参加する事を見送ってもいいんだよ?」
「…確かに怖くないとは言いません。あんな目にあったんですから。でも…タロウさんがいてくれるから大丈夫です。タロウさんとなら絶対負けませんからっ!」
美波の目に恐怖という感情が無いわけではない。だが、俺と一緒なら負けないという言葉に嘘も無い。その目には確かな力強さがある。
「わかった、参加しよう。俺が必ず美波を守るから。」
「はいっ!私はタロウさんを信じています!」
俺たちは参加を決めて今日は早く寝る事にした。
それでも美波は我慢をしているのは確かだろう。寝ている時に俺の布団の中に美波の手が入ってきて俺の手を握ってきた。俺は美波の気持ちの軽減になればと思って手を握り返した。
明日は決戦だ。必ず勝とう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、バトルイベント『トート・シュピール』が始まるまであと数分と迫った。
食事も風呂も済ませて行く準備は万全だ。これを最後の晩餐になんてしない。明日も明後日もその先も俺は美波のメシを食う。
「そろそろマイページに向かおうか。」
「はいっ!」
俺たちはアプリを開きマイページへと向かった。辺りは相変わらずの真っ暗な空間にポツンと廃屋がある。俺たちは廃屋の中へ入ると頭の中にイベントに参加するか、しないかという問いが響く。当然俺たちは参加の意思表明をする。
『トート・シュピールへの参加を受付ました。時間になりますのでバトルエリアへの転送を開始致します。御武運をお祈り致します。』
「よし、勝って必ず帰って来よう。」
「そうですねっ!じゃあ…勝って帰れたら今日は一緒のお布団でーー」
「却下。」
「むぅ…!!」
こんな時までファザコン全開なんて困ったもんだ。
さて。俺が美波を守らないといけないんだからしっかりしろよ田辺慎太郎。
俺たちの戦いが始まるーー
……声が聞こえる
……何の声だ?
……美波?
……朝か
「…タロウさん!!起きてくださいっ!!」
美波の呼びかけに目を覚ます。もうこれも慣れてきたな。
「…おはよう美波。」
寝起きなので頭が全然働かない。
「朝じゃありませんよっ!イベントですよ!」
「…イベント?……あ!」
そうだよ。バトルイベントだろ。何を呑気に寝てんだよ俺は。
「そうだ…!ごめん美波!始まってからどれぐらい時間が経った?」
「大丈夫です!まだ1分経ってません!」
「ならとりあえずは安心か。それにしてもここは…」
辺りを見渡すと、右側には広大な森、左側には海岸がある。俺たちがいる場所は中間地点の崖になっている所だ。察するにどこかの島だろうか。孤島かな。孤島でのバトルロイヤルとか嫌な予感しかしないんだけど。
「ここは島でしょうか?」
「多分そうだろうね。てか思ったんだけど食糧ってどうするんだ?3日戦うのに食糧無しだとキツイよな。」
「自分で手に入れろって事でしょうか?」
それはキツすぎだろ。狩猟しろってのかよ。
その時だった。スマホの通知音が鳴り響く。
「なっ、なんでしょうか!?」
「オレヒスからだ。確認しよう。」
『只今より、トート・シュピールを開催致します。
イベント終了刻限は3日後の夜10時までとさせて頂きます。
支援物資をラウム内に入れておきましたのでご活用ください。
それではイベントをお楽しみ下さいませ。』
「支援物資って事は食糧でしょうか?確認してみましょうか?あ、こんな開けた場所じゃ危険ですよね…!」
「いや、大丈夫だよ。近くからスマホの通知音は聞こえなかった。この近くにはプレイヤーはいないよ。」
「聞いていたんですか?流石タロウさんですっ!」
こんな可愛い子に褒められるとドヤっちまうよな。
「とりあえずラウム見てみようか。」
ラウムを確認するとコンビニ袋に入ったバターロールみたいなパンが3つと500mlのペットボトルに入った水が1本だけ入っていた。おいおい、これだけかよ。
「これだけですか…?」
「水はともかく食糧がキツイな。」
「え?水の方が厳しくありませんか?」
「んー、水はなんとかなるよ。」
「どういう事でしょうか…?」
「朝になったら見せるよ。とりあえずは海岸の方に行って陣を張ろう。」
「はっ、はいっ!」
俺たちは海岸へと移動した。
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