62. 八岐大蛇
「舞え……
恵奈がそうつぶやくと、ごう、と黒炎の鎧が燃え上がる。生まれたのは、8本の巨大な炎柱。
それらは蛇のようにうごめいて、上空の籠愛に襲いかかった。
☆
「……何っ!?」
籠愛も、下界の異変に気付く。迫り来る8本の火柱……いや、『黒炎の蛇』に。
(エキドナめ……"
その異能は、籠愛も調査資料で見たことがあった。
あれは確か、具現化型の異能だったはず。綺羅の『青い炎』と同じく、風でも水でも消せない。触れるもの全てを焼き尽くし、炭化・溶解・消滅させるまで消えない炎。使用者の意思の具現化なので、それを纏う恵奈にはダメージも無い。
(具現化型は、私との相性が最悪の能力だ……どうしたものか)
『
仮に対策があるとすれば、一度攻撃を受けたうえでそれを治すか、異能によって起きる状態変化を何らかの手段で止めるか。……だが、ネクタルはもう残っていない。となると、燃焼そのものを止めるしかないが……。
(いや……それも難しいだろう)
物質の燃焼は、可燃物と酸素の反応だ。一般的な『火』は、可燃物と酸素が結合することによって起きる『現象』である。反応は熱によって促進される。なので、①可燃物を除去する、②酸素供給を断つ、③水をかけるなどして熱を奪う、④特殊な薬剤で反応を抑制する、のいずれか4手段で消すことができる。
だが、あの黒炎は『火』ではない。水をかけても消えないし、『
(くっ……立場逆転、か)
籠愛は身を翻し、旋回する。
炎の大蛇が追ってくる。民家を、木々を飲み込み、氷を融かし、白い煙をあげながら。
「っ……こうなったら、なりふり構ってはいられない……!」
黒焔の蛇竜から逃げる
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