20. Golden Light, Emerald Light
現代に残る忍者の秘伝書・『
この『
ともかくも。
本来なら、心の中でガッツポーズのひとつもするはずだったのだが。そのあまりの"混沌"ぶりに、理里は呆れた。
「なんじゃこりゃ……」
いつのまにかオレンジ色の光に包まれ、たてがみと尾を生やし、ごわごわと金色の体毛に覆われた手足で、四つん這いで走る蘭子。その身体には白い大蛇が何匹も巻き付き、その
そんな蘭子を両側から攻撃する、怪物形態の
前者はグラマラスな上半身をぶるんぶるんと揺らし、蛇の下半身で機敏に動きながら、
後者は人の身体に、白の
いわゆる、「
希瑠もまた、鋭い爪の生えた手足で突きや蹴りを繰り出している。時折命中しているが、蘭子を止めるには至っていない。
2人の攻撃を器用にかわしつつ、蘭子は着実に前方へと進んでいる。だが、蘭子のスピードが
あの「
そして……理里がここまで追い付いて来れた。ということは――
(……勝ち目は、ある!)
自分を送り出した綺羅のためにも。今ここで戦っている家族のためにも。そして――ひとり家に残る、
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!」
理里は、さらに速度を上げた。
☆
「――来たわね!」
「ああ、来たな!」
後方の
『……来たかッ!』
蘭子の目もまた、
遠いあの日、前世での最後の「
確かに。確かに、あの男は速かった。だが、こちらが追い抜かそうとする度に、「探しに行かせる」呪いのかかった黄金の林檎を遠く後方に投げられ、それを拾っている間に男との差は大きく開いた。
三度、それが続いた。もう少しで追い越せる、というときに行われる、男の
だから、今度こそ。今度こそは、どんな計略も打ち破って勝利すると決めたのだ。そうでなければ、わたしの魂は満足しない。わたしの、このアタランテの人生は、いつまで
「げっははははははははははははアアアアアアアアアア!!!!!!!」
牙の並ぶ口を耳まで吊り上げて、蘭子はさらにスピードを上げた。
☆
橙の光の正体は、ギリシャ神話最速の英雄・アタランテ。
他方・翠の光は、最恐最悪の魔神テュフォーンとその妻・エキドナの
「グオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
「げっはははははははははははははははあああああああ!!!!!!!」
大いなる"
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