2.一騎打ち

 キィハがクィモを引きつけている間に 俺は素早く背走し距離を取った。カポエイラの脅威には驚かされたがまだ勝機はある。何せクィモは腕を一本失っているのだから。

 キィハが前に出て俺が後ろから銃で仕留める動きは、狩りで何度もやって来たことだ。言葉を交わさなくとも連携コンビネーションはお手のものだ。

 クィモの蹴りに対し、キィハも蹴りで応戦する。彼女も足技は得意としている。いくつかの大技で魔獣の息の根を止めるところを俺は何度も目撃している。

 二人が一瞬離れるタイミングを狙う。俺は魔弾をまた二発薬室チャンバーに仕込む。今日は大盤振る舞いだ。赤字確定だがもうこうなってしまっては仕方が無い。倒すことが優先だ。そうしなければユヲンの死が無駄になる。

 不意に鋭い殺気を感じ、俺は横に飛んだ。

 振り下ろされた剣が空を切る。

「ああ、バッソさんかい。見学者の」

「……気が変わりました。まさかクィモがあんな目にあわされるなんてね」

「そうやってすぐに意見を変えちまう男はモテないぜ」

 俺がバッソと近接したことに気付いたキィハが、クィモとの戦いを放棄し、こっちまでやってくる。

 飛び込みざまに放たれた炎の拳をバッソが剣で受け止める。

「……不良品がらくたに用はないと言っているだろっ!」

 剣士が激高する。クィモを傷つけられたことがよほど腹立たしかったに違いない。

 バッソの攻撃対象がキィハに移る。細かく見舞われる剣撃を炎の腕で受けるキィハ。どの一撃も鋭くて重い。魔剣の力を飲み込んでいなければとっくの昔に腕ごと断ち切られているはずだ。

 そこへクィモが参戦する。逆立ちの姿勢からの蹴りが飛んでくる。キィハは右腕で剣撃を受けたまま、背を極端に反らしてクィモの中段蹴りを躱す。

「……キィハ、下がれ」

 俺は言った。

「バッソは俺がやる。お前はクィモを破壊しろ」

「……了解しました」

 彼女の返事が珍しく遅れる。

 まあそりゃそうだろう。どこをどう切り取ってみても無謀でしかない。

「面白い冗談ジョークだ」

 落ち着きを取り戻したバッソが、俺の台詞をあざ笑う。

冗談ジョーク本気マジか、すぐに解らせてやる」

 俺は言いながら、もう一発薬室チャンバーに魔弾を詰め込んだ。

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