3.余裕を愉しむ傍観者
深紅を宿すクィモ。
二体の少女型
先に動いたのはクィモだった。
石畳を蹴り一気に距離を詰めてくる。
攻撃対象は――俺。
赤に染まる右拳が彼女の肩口から鞭のようにしなって迫り、俺の
早い。
さらにその拳は俺から見えない角度で繰り出されている。
避けられないと悟った俺は、咄嗟に
――拳を拳で迎え撃つ。
俺の右腕は明らかに砕け散るだろうが、左で
ゼロコンマ何秒かの間に、俺は極めて勝ち目の薄い賭けに右腕を張ることになった。
我ながら愚かだ。
だがその賭けは成立しなかった。
駆けつけたキィハ両腕を交差させ、クィモの拳を防いだからだ。
拳と腕がぶつかり合い、乾いた粘土とは思えない鈍い音を立てる。
キィハはクィモの勢いに押されながらもつま先を立てて場に留まる。
「
言われなくてもわかってるぜ
俺は
嫌な汗が背中を伝う。
「僕はもう少しここで見させてもらうことにするよ」
遠くから剣士の声がした。
剣士は構えていたはずの
「英雄ブレドの右腕だった
話には聞いたことがあるが、何処までの差があるのかは正直解らない。
それでも俺とキィハは拳を握る。
俺はクィモを見た。
その顔は喜怒哀楽を表すこと無くただただ怜悧で、その
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