13.ファム牧場 牧場主 ボレス・ファム
名前【ボレス・ファム】
性別【男性】
年齢【七十一歳】
職業【牧場主】
外見【長身 筋肉質 薄毛白髭】
肉牛と豚はもう需要がない。処理が極めて難しいからだ。現状、ファム牧場では乳牛、鶏、そして数頭の馬を扱うに留まっている。牧場主のボレス・ファムは高齢ながら未だに一人で牧場を切り盛りしている。祖父が英雄ブレドの大ファンだったとかで聞き込みの大半が英雄の話に終始することになった。
――これはこれは。お兄さんは何て名前だったかなあ。ああそうか、バークリィさんか。保安員さん。そうかそうか。これはどうもこんにちは。
うちは祖父の頃からずっと牧場を経営してます。ええそうです。私で三代目です。刃物が使えなくなったせいで牛も豚もいませんが、それなりに頑張ってますよ。昔より鶏が増えましたね。なんでも刃物がなくても扱えるそうで。
ああ、この右腕の怪我ですか。鶏に突かれてこのザマですよ。いやあお恥ずかしい。気性の荒いのが混じっててねえ。いやはや困ったものです。アミュレットに祈ってみても、怪我はするものですからねえ。もう年ですし、休み休み働けっていう神のご意向なのでしょうかねえ。
その銅像ですか? それは昔、祖父が趣味で作らせたものですよ。きっと当時は牧場も羽振りがよかったんでしょうなあ。祖父は街の英雄ブレドの大ファンでしてね。その像もブレドを模したものです。魔剣を両手で構えて巨人と対峙している場面だそうですよ。
ブレドの話は子供の頃、本当によく聞かされました。魔獣から街を守った英雄なんだぞって。ええっ? その話ですか? ああそうか……今の若い人は知らない人も多いですからね。そうか、それは光栄ですね。じゃあ話してみましょうかねえ。いやあでも一体どこから話そうかなあ。
そうですねえ。……百年前、一体の魔獣がシナモーリフにやってきました。巨人ですね。一つ目の。全長二千カルダはある大きな大きな巨人です。巨人は街を破壊し人々を襲いました。その巨人に勇敢にも立ち向かったのが旅の剣士、ブレド・ベオウルフです。ブレドは真紅の魔剣を振りかざし、連れていた自動人形とともに一つ目の巨人に戦いを挑みました。
魔剣の名はスティールブラッド。傷をつけた相手の血を奪いとる能力がありました。ブレドは巨人を何度も斬りつけ、血を奪うことで少しずつ失血させてゆきます。世間に伝わっている話では、魔剣で巨人を一刀両断にしたとも言われていますが……事実はもう少し地味だったようですね。
ブレドの連れていた自動人形は、格闘に優れ、蹴り技が得意だったと聞いています。名前は――クィモ。エメラルド色の髪と琥珀色の瞳を持つ美しい人形でありながら、華麗な足技の連続で巨人を攻め続けたそうです。
そうしてブレドと自動人形は死闘の末に巨人を退治します。街は剣士の勝利を喜び、街の真ん中に守護の女神像を建立したそうです。今でもありますね。ああでもそうか、この間、新しくなったんだったかな。そして、旅の剣士だったブレドはこの街に定住することに決め、ベオウルフ剣術指南所を始めることになりました。とまあ、この辺りまでが私が知っている英雄ブレドの伝説ですね。
私ですか? 毎日ここで動物たちと暮らしていますよ。いやあ飽きないですね。彼らを見ていると私は心が落ち着きます。街まで出ることはほとんどありません。刃物が使えなくなってからですか? そりゃもう色々ありましたけどそれはそれですよ。生きていれば色々ありますから。できることをきちんとしておけば、神様は私たちを悪いようにはしませんから。
ええっ! 殺人事件!? そんなことがあったんですか。いやあ驚きました。その聞き込みでここへ。そうか、お兄さんは保安員ですからねえ。そうかそうか。じゃあ早く犯人が捕まればいいですねえ。いやあ悪いことはいずれバレるに決まってますよ。神様は我々のことをずっと見ておられますからねえ。
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