3.ベオウルフ剣術指南所 剣士 バッソ・ベオウルフ

名前【バッソ・ベオウルフ】

性別【男性】

年齢【二十四歳】

職業【剣士】

外見【長身 筋肉質 銀髪 美形】


 正面から袈裟懸けに斬られたというニーベック医師の見立てが気になりベオウルフ剣術指南所を訪ねた。この街で唯一のこの剣術指南所は百年前に街を救った英雄ブレド・ベオウルフが起ち上げたという。ちなみにバッソ氏は若くてなかなかの男前だった。街の奥様方が足繁く通うのもうなずける。


 ――お疲れ様です。事件、大変ですね。僕も驚きました。まさかこの街で殺人だなんて……。え? 剣ですか? ええ、もちろん倉庫に行けば確かに剣はありますよ。あ、ご覧になられますか? では、案内しますね。こちらへどうぞ。

 ……ええ、その通りです。剣が斬れなくなってからは、健康のためのトレーニングとして型や剣舞を教えています。もちろん真剣なんて使いません。枝ですよ。大ぶりの枝を石で擦ってそれらしくして使っています。木刀もありますけど、発表会のような特別の日に使う程度です。ナイフも使えない今、木刀も貴重ですから。父親の頃は模造剣というか、金属の棒を導入していたのですが、錆びるし重いので僕の代で使わなくなりました。斬れるわけでもないのに磨いて油を塗るなんて、なんだか間が抜けている気がして。

 おかげさまで道場を続けられる程度には流行っています。最近は女性の門下生も多いですね。……でも、正直言うと虚しさはありますよ。この時代に自分が剣術家であることに何の意味があるのだろうってよく考えます。

 ええ、いま二四歳です。ですので産まれた時にもうすでに剣は役立たずの棒っきれでした。それなのに父には厳しく指導され、朝から晩まで稽古漬けの毎日でした。斬れもしない剣を振り回してね。まあでもそのおかげで今こうしてそれなりに生活できているわけですから。文句は言えません。

 あ、着きました。ここです。鍵、開けますね。

 よっ……と。あ、そこ、段差があるので気をつけてください。お待たせしました。どうぞ好きにご覧になってください。ええ、僕もここに来るのは久しぶりです。

 狭いでしょ。昔は離れに武器庫というのがあったのですが、もう手放しました。沢山置いていても意味がないですからね。ある程度は処分しましたよ。なのでもうこの倉庫で十分です。

 そっちのがグレートソードですね。両手で握るために柄が長くなっています。こっちがブロードソード。片手剣ですね。盾と組み合わせることも多いです。ええ、それはバスタードソードと言って、片手でも両手でも使えるようになっています。でもバランスが悪くて実際のところ使いにくいですよ。よほどの大男でない限り難しいでしょうね。

 あ、そこに飾ってあるのが魔剣です。初代ブレド・ベオウルフが使ったものとして代々受け継がれています。造りはグレートソードですよ。ええ、両手で使います。深みのある赤の刀身が綺麗ですね。その横の黒いのが鞘ですよ。芸術性が高いので手放せばそれなりの額になるのでしょうけど、ご先祖さまから受け継いだものですからね。そういうわけにもいかず、結局この倉庫に置いおくことにしました。魔剣の効果ですか? ……さあ、そこまでは。僕が産まれた時にはもうすでに魔剣は効果どころか、斬ることさえできませんでしたから。

 伝説については……街に襲ってきた魔物を倒して皆を守った、ぐらいでしょうか。もう百年も昔の話ですし。ええ、彼の遺品もその魔剣一本だけですよ。他には何も。このご時世、剣豪伝説も廃れる一方でしょう。

 しかし皮肉なものですね。こうして剣術家の家に産まれ剣技をマスターしたところで何の役にも立たないだなんて。僕は神に見捨てられているのかもしれません。

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