世界の最果てに佇む猟犬と新世界の彼方で吼える忠犬

作者 クラスター爆弾

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★★★ Excellent!!!

【物語は】
雨の日に乗り合いで目的地に向かう、途中の車内での会話から始まる。内容はもっぱら、街コンの話だ。街コンが何かについては補足参照。
この話題を通し、各登場人物の特徴が明かされていく。明るい話から一転、着いた先はホラー映画にでも出てきそうな建物であった。
これから何が起きるというのだろうか?

補足*街コンとは?
街コンは、2004年に宇都宮で行われた「宮コン」というものが発祥とされている。出会い系のイベント。大規模型とアットホームな小規模性、大手イベント会社が運営する街コンとローカル地域限定の地域密着型街コンなど、様々なパターンのイベントがあるようです。(web調べ)

【世界観・舞台】
度々出てくる新世界とは。
作中に”親父とお袋が新世界(あっち)の生まれだから”(引用)という一文が出てくるので、何らかの形で行ったり来たりできる場所なのではないかと想像する。
この物語ではゴブリンやオークなどが出てくる。そして、主人公と一緒に職務をこなしており、それなりの階級のものいるようだ。つまり、人間以外の種族が人間と共存しており、差別などされたりもしない世界観という事だ。
しかしながら、街コンの話の流れでは異種族間での付き合いは、そんなに好ましいわけでもないように思える。

この部分から思うのは、異種族であっても”個人として扱われたい”という気持ちがあるという事。肩書や職業ではなく、人柄や容姿も含めた個性などをちゃんと見て判断して欲しいという事である。それは人間も同じであるので、気持ちが理解できる。種族が違い見た目などが違うというだけで、彼らは人間と変わらないという事だ。そんな彼らだからこそ、一緒に任務をこなせるのではないだろうか。

しかしながら、この後の話では新世界との戦争について語られている。それを踏まえると、彼らは特別な境遇にいるのかも知れない。

【登場人物・物語… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

舞台は一九六七年以降の歴史が異なるパラレルワールドであり、米帝・欧州連合・大東亜共同体の三極冷戦状態となった二十一世紀。過去最大かつ最悪の核実験が引き金となり、発生した時空の歪みは我々の暮らす現代社会と「異世界」を結び付けることになります。しかしそこから起こるのは融和と併合ではなく、米帝による一方的な搾取と蹂躙……かなりハードな世界観が舞台背景です。

すなわち多くの人種いや種族と文化が混沌とする時代であり、オーガやゴブリンやエルフにサイボーグ、そして生身の人間が混在する社会の中で、テロリズムの抑止・検挙・殺人・禁輸品の流入などの犯罪を取り締まる「大日本帝国公安庁」の捜査官たちの活動を中心に描かれた本作、はじめの数話だけでこの世界観の虜になりました。

社会的正義の実現のためには武力をもって成し遂げることも辞さない、攻性色の強い組織である大日本帝国公安庁に所属する主人公の一人、捜査官・桐生夏目。

そして夏目が事件現場にて見つけた異世界の鉱石「変異石(オルタイト)」を追ってやってきたグラディア王国の女騎士、もう一人の主人公でもあるエルフのユリス・ゲンティアナ。

この二人こそが、タイトルにもある「猟犬」と「忠犬」。

「猟犬」は「猟犬」なりに、覚悟と矜持をもちながらも「誰かに飼われている」不自由さがあります。そして「忠犬」は「忠犬」なりに、遂行すべき任務と義侠心をもちながらも「見ないふりをする」自分自身への矛盾を抱えています。

一見すれば相反する主義・主張を持つ二人ではありますが、とても良く似ている。そこが上手く表現されていると感心しました。

これは「異世界物」なのでしょうか?

いえいえ、これは「異種族バディ」の良質な「クライム・サスペンス」と呼ぶべき満足感。この先の展開が非常に楽しみな一作です。みなさまにも是非ご一読いただきたいと思います。