第48話 営業ノート

営業ノートを書かせ始めてから、お客様が来ない理由が良く判った。

そして、うてなを目の敵にしている女の子が

うてなのお客様ばかりを狙って連絡先を交換しているのも判った。

基本、指名制の店ではないので連絡先を交換してはいけないルールはない。


色んな女の子の性格が透けて見える気がした。

文句や意見を言わない子の方が、しっかり仕事はしているものだなぁと

改めて思った。

そういう子ほど、開店準備の時に面倒な事を押し付けられているなぁ

とも思った。


もっとも問題だと思ったのは、ほぼ全員が礼二くんに毎日営業している事だ。

ヒドイ日は礼二くんにしか営業していない子もいたぐらいだ。

そして我先に、と言う感じで『今日、来るかもっていってました』と

報告してくることだ。

実際、礼二くんは3日と空けずに飲みには来ていたが

それは冬以外も同じだ。

『何時に何人で?』と聞いても、誰も答えられない。

誰も確約は取れないのだ。

当たり前だが、私は相変わらず礼二くんとは仲が良かった。

そして当然だが、ポイントのルールを礼二くんは知っている。

店に来る前には、必ず私に連絡が来た。

そして誰も確約を取れない礼二くんと私は頻繁に同伴していた。


店に来る前に連絡をもらった女の子は、その席に優先的に着けることにしていたが

私は同伴の時以外は、あまり礼二くんの席には着かなかった。

私が席に着かなくても礼二くんは店に来るし

私は、他にもお客様を呼ばなければならなかったからだ。

営業ノートに礼二くんの名前を書き

『今日、来るかも』と報告する女の子は、一体何がしたかったのか。

今日こそは自分に連絡が来るとでも思っていたのだろうか?

いまだに謎である。


とにかく給料を維持するためには働くしかなく

このシーズンの中の約4か月ほどの間に

体調不良で1日休んだだけだった。


そしてシーズン明けに女の子だけだはなく、ジョージまでいなくなった。

ジョージは店の金を使い込み逃げたのだ。

結果、私とうてなしか残らず『上』と相談し

いったん店を閉めることにしたのだ。


そして店が開くことはなかった。



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