第47話 最後のシーズン

その冬のシーズンは、たくさん女の子はいたがバカばかりだった。

いつもより人数を抱えてるのに、まともにお客様を呼べる子が少数だった。


私の言う事には、渋々従ってはいたが、うてなに対する敵意が見て取れた。

うてなは、ボードのためにオフシーズンも店に残り、

『上』とも話を付けて『店よりボードを優先していい』という権利を持っていた。

もちろん、その話は私も知っているし、

私が手の回らない時は、うてなが店を回すのだから

多少ボードを優先しようが、辞めてもらっては困るのだ。

うてなは『ボードを優先する』とは言っても、

開店時間にはきちんと出勤し、お客様も呼べる。

が、シーズンバイトの子たちは納得がいかないようだった。

名ばかりのオーナーであるジョージは、店の面倒事は全てこちらに押し付けて

遊び惚けては、金にならないお客様を連れて来ていた。


冬からのバイトの子がいうには、

1、開店準備をしない

2、ボードをしに来てるのは自分たちも一緒

3、なぜ『うてな』だけが特別扱いなのか

と、言うことらしかった。

開店準備は、もちろん私もしていない上に、私は遅刻の常習犯だった。

『開店準備をしてない私へのイヤミか?』と問うと

慌てて否定した。

ただ単にバカなんだろうなぁーと思った。

うてなが羨ましいのだろう。


1、『うてな』は寮住まいではない事

2、そもそもの契約が私達と、シーズンバイトとでは違う事

3、NO.2なのだから、比べる対象ではない事

を説明したが、バカには理解できないらしく不満は解消されなかった。

仕方がないので、もっと判りやすいように

1、仕事をしているから寮と食事とリフト券があたえられている

2、仕事をしたくないのなら、いつでも辞めてくれて構ない

と説明してあげた。

気に入らないようだったが、追い出されたくはないようで黙った。


シーズンバイトの子たちは、二言目には

『働くよりもボード目当てに来た』と言っていたが

実際に、昼間ボードをしているのは数人で

うてなを目の敵に『ボード目当て』と声高に言う子ほど

『自分は水商売経験者だ』といい、が、お客様も呼べず

昼間は店に来ない人とばかり遊んでいた。


『働くよりもボード目当てに来た』は聞き飽きて来ていたので

『仕事しないなら辞めてくれ』と言った事もある。

が、一向に辞める気配も、お客様を呼ぶ気配もなかった。

店は、女の子の数に見合う売上が出せずにいた。

仕方がないので、簡単なノルマを課すことにした。

店の『営業ノート』を作り、それに営業電話やメールをした相手を書かせたのだ。

最低でも1人には連絡しろ、と。

1、何時に来ると確約が取れた場合は口頭でも報告する

2、時間が不確かなお客様は来る前連絡した女の子に、必ず電話をしてもらう

という条件で、1か2の条件をクリアしたら、成功報酬としてポイントをつけ

給料に乗せてやる、と約束した。

実は、これは本来からあるルールだったのだが、誰も知らないようだったので

ビックリしたような呆れたような、何とも言えない気分にさせられた。

このルールは、常連のお客様なら誰でも知っているルールでもあったからだ。





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