第27話 結局は・・・

今思えば、『持ち駒』の取り合いだったのでは?と思う。

高橋君は、ヤマさんを危険、沢田さんは気持ち悪い、

と、私に散々言い聞かせた。

新しく家電を買いなおしたものの、電話に出ることを許されなかった。


高橋君は、その当時、『駒』を持っていなかった。

ヤマさんに異常に警戒し、『深入りするな』と散々言われていた。

だが、私には実害はなく、ヤマさんの話は楽しかった。

沢田さんは、いわゆる金持ちな実家と、己の営業成績で羽振りも良かった。

高橋君とは真逆な感じで気に入らなかったのだろう。


もう1人だけ、頻繁には会ってはいなかったが、

ジェントルな紳士のお客様もいたが、それは勝手に高橋君が電話にでて

恐喝まがいな脅しをかけていた。

誰も、そんなメンドウな女に執着はしないだろう。

折角つかんだ高円寺でのお得意様は壊滅状態だった。


高橋君は、仕事が出来るのか、容量がいいのか

新しい職場に行っても、すぐに幹部候補になった。

ただ、仕事が3か月と続かないのだ。

水商売の黒服から、裏カジノ、ゲーム屋など散々渡り歩いて

幹部候補や店長代理までは上り詰めるのだが、

些細な事ですぐに辞めてしまうのだ。

辞めると2週間~1ヵ月は働かない。

有り金を持ってギャンブル三昧だった。


私は、高円寺時代の小柴さんが池袋店に移っていたので

ヘルプで何回か呼んでもらった。

実際は、ヘルプの仕事より、営業中の外回りとかいう

よく判らない理由で、小柴さんに飲みにつれていかれていた。

立場上、閉店時に小柴さんが居ないのは都合が悪いので

閉店前には店に戻った。

ほぼヘルプの仕事はせずに、小柴さんの愚痴を永遠と聞かされた。


最悪なバカンスを過ごした私は、お客様を1人も持たない状態で

色んな店を転々とした。

歌舞伎町はもちろん、新宿3丁目などの比較的シックな店を初め

中野、四谷、赤坂などでも働いたが、

高橋君が休業状態の時は、金を毟り取られていた。

金のない時の高橋君は、まさに豹変し、逆らうのは難しかった。

その金でギャンブルへ行き、無一文で帰って来る。

なんの為に働いているのかとシンドかった。


ただ、高橋君が働いてる時は、めちゃ稼いできていた。

好きな物を買ってくれて、私の稼ぎは全て、自分の小遣いになった。

実際、金がない時以外の高橋君は、大人で優しかった。

職場の後輩との飲み会にも頻繁に呼ばれた。

気配りができ、後輩や私の事を気遣い、雰囲気を壊すことはなかった。


職もなく、金もない時に、私が仕事道具を買うために

『これだけは、使わないで欲しい』とお願いしていた金を使い込んでいた。

犬の散歩の途中に気付いた私は、当たり前だが、私は高橋君を責めた。

が、往来のど真ん中で、回し蹴りを喰らって倒れたのは言うまでもない。


調度、その頃には、高橋君と『お付き合い』を初めて1年程が経っていた。

いつになく神妙に、高橋君は『私に金を用立ててくれ』と言った。

『それは、風俗に行けという事か?』と聞いたが

『金貸しに借金をして来い』という事だった。

高橋君はブラックだったので借りられないからだ。

これが手切れ金になるならと、私は金融屋に借金に行った。

ますますの転落人生が、そこには待っていた。


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