第10話 負け犬の遠吠え

母の躾は、厳しかった。

『負の感情』は、人一倍、注がれた。

が、大人なって無駄になるような知識は少なかった。

ただ、私への躾の厳しさに比べ、姉を甘やかしすぎていたように思う。

比べる対象が近くに居る上に、『私だけ』が色々と指摘され過ぎていただけなのかもしれない。


しかし、私への異常な執着と束縛、躾と称した様々な扱い。

走って逃げていく私を捕まえ、殴る母。

それを見ているだけの姉。

そんな光景は、私の友だちの中では、今だ異彩を放ち鮮明に記憶に残っているらしい。


はたして…

母は本当に毒親なのか。

比較対象が近くにいたから、毒親に感じたのか。


私は、何度考えても、毒にしか思えなかった。

私は単純に『親の愛情を感じなかった子ども』だけではなく

『親の憎しみを返されてしまった子ども』でもあり、

母の躾の温度差で『大嫌いな姉』と『母を憎む感情』を持つことになった。


これは、不思議と、物理的な距離があると何も感じずに要られるのだが、

皆が『都内に住んでいる』と思うだけで、途端に

『イヤな』『不快な』『恐ろしい』『不安』な気持ちになる。

しっかりと毒の効果は、まだ効いているようだ。


ただ、1人で生活していくために必要な事は、全て叩き込まれていたので、一人暮らしを始めても、お金以外には何も不自由しなかった事は感謝しなければいけないのかも知れない。

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