宇宙生活の終焉 6
三年前、ウラヌスを制した船団は、驚くべき事実を知った。
船は何光年も離れた外宇宙なんて飛んでいなかった。実際は、二十番目と二十一番目の惑星の間の公転軌道を周回し続けていた。理想の遺伝子の完成後、星に呼び戻す計画だったんだ。
こんな偽装は、母星の属する星系の太陽や惑星を観測すれば露呈しそうなものだと不思議に思った。
しかし、船外の映像や各種観測データはウラヌスによって改竄されていて、船の窓からも太陽が見えないよう姿勢制御してあった。
船を反転させて初めて太陽を見たときは言葉を失った。どの恒星よりも煌々と輝く光点に僕は鳥肌がたった。僕たちは本当に故郷の近くにいたんだと。
あとで知ったが、実は今までも、船団の外周にある惑星や小惑星は窓から観測可能だった。手がかりはあったのだ。
ただ、それらの天体は、大きさや距離などから肉眼での観測は難しかった。船が星系内にとどまっているとは想像もしないから、何十世代もの間、誰も気づくことはなかった。天体観測好きの僕としてはちょっと悔しいところだ。
今回の一件でもっとも驚いたことのひとつに、船団から脱落したとされる船の行方がある。
実は六機の宇宙船は、すべて僕たちの船のそばで航行を続けていた。数十メートルほど離れた位置で、ひとつとして欠けることなく。
船同士は相互に通信を継続しており、その高度な演算能力を生存する乗員の遺伝子解析にあてていた。
亡くなった人たちはどうなったのか気になったが、船内の映像を僕たち子供は見せてもらえなかった。
ただ、人が生活していくうえで必要なすべてのものが絶たれていることを考えれば、真っ暗で冷たいなか、無造作に何人もの犠牲者が漂っている光景は想像にかたくない。
父さんたちも各機体を確認したあと、ひどく沈痛な面持ちを全員で共有していた。人の尊厳をにじるこの計画に僕は改めて震えた。
その後、大人たちは時間をかけて六機の船すべてを訪れ、犠牲者の亡骸を荼毘にふした。
僕やマリーなどは死者の姿を直接目にすることはなかったが、弔いの都度、全員でそれぞれの船におもむき、古い時代に血を分けた仲間たちが安らかな眠りにつくよう祈った。
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