青い巨塔に待つ者 7

 僕たちは万一の事態に備えて、男女を別々の船に分けておいた。

 僕の船で唯一の女の母さんと、マリーの船で唯一の男の叔父さん、このふたりを入れ替えることで、現在、僕の船には男だけ、マリーの船には女だけがいる状態にしてある。どちらの船を全滅させても世代を交代させることは不可能だ。

 奇妙な頼みごと、特に船の管理者の叔父さんに別の船へ移ってもらうのは大変だった。


「僕たちの勝ちです。僕とマリーをだいじにしてくれた先生ならこのまま引き下がってください。でないと――」


 僕とマリーは向かいあった。左手を出しあい握手をするように手を握る。彼女の手に触れるのは照れがあったけど、今はそんなことをいってる場合じゃない。


「先生をこの場から強制的に――」目上に対して不慣れな警告を発する僕の手から、不意にマリーの手がするりと、抜ける。「あっ!」


 ソフィア先生が右手を突き出していた。

 その動きに呼応するように、マリーの体が宙に浮き上がる。


「えっ……えっ?」マリーは得体のしれないものを見たかのように、とまどいと狼狽の色を浮かべた。


「マリー!」


 目の前で彼女の体が小高く上昇する。引き下ろそうにも手が届かない。彼女は空中でじたばたもがいたが無駄な抵抗だった。


 先生が、頬杖をついたまま、挙手をするように手をかざす。彼女は先生のほうへと引き寄せられ、その頭上を飛び越え――


「いやあ――っ!」

「マ、マリー!」


 柵とアクリル樹脂の壁の向こう、吹き抜けのなかに浮かばされた。

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