それは聖杯だった 6
「二機のどちらかが排除対象になるとの結論に至ったウラヌスが、船と船の間の往来を遮断する準備をしていた。私はそれを阻止するため大規模な攻撃を仕掛けて、ハッチの制御権限を奪取した――のはよかったんだけど」エマさんはため息をついた。「誤ってハッチをロックするよう設定してしまったの」
思わぬ犯人に、僕とマリーはそろって目を丸める。
「半日以上たってから気づいてあわてて解除したわ。でも乗員を警戒させてしまったようで、船の間の往来はなくなるし、コクーンまで使用を控えてしまうし。そのことがあなたたちをとても苦しめたようね」すまなそうにエマさんは目を伏す。「申しわけないことをしたと思っているわ。謝罪します」
僕は「やめてください」と首を振った。年長者に謝られるのは苦手だ。
「エマさんのおかげでウラヌスからハッチが守られたのなら、感謝こそすれ恨みはしません」
僕のフォローにマリーもうなずく。エマさんは、ありがとう、とほほえんだ。
「私やクコの祖父母が全員早くに亡くなっているんですが、それはウラヌスの関与が?」
マリーが尋ねた。彼女の言うとおり、おじいちゃんたちは皆、不自然に早く他界している。
「いいえ、それも違うわ」エマさんは否定する。「あなたたちの受け継いでいる血筋は、隔世で周期的に短命の世代が現れるようなの。彼らはそれに該当したとみられる。遺伝子改良の過程で生じた遺伝的欠陥なので、この計画の犠牲者といえるわね」
おじいちゃんおばあちゃんの死にそんな原因が。悪魔じみた計画の犠牲になったというのか。
人間の尊厳を顧みない人たちを僕は改めて軽蔑する。これ以上、勝手をさせるものか。
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