マリー、いよいよふさぎ込む 2
帰宅後、母さんに、今日はマリーの家へ遊びに行ってそのまま夕食を食べてくる、と告げて、隣の船に向かった。
ハッチをあけダクトに滑り込む。
遊泳していると、小さいころ、子供四人で泳いで遊んでたら大人に叱られたことをなぜか思い出した。
「あら、いらっしゃい、クコ。あの子ならまだ学校よ」
リビングで縫いものをしていた叔母さんが言った。
予想どおりだった。料理を習う予定なんてなかったんだ。
コクーンの部屋に行ってみる。姉妹は並んで大型デバイスのなかに横たわっていた。
このところの彼女の顔つきと比べると、無味乾燥な寝顔さえも穏やかな表情に見えた。
家に帰らずどこに行ってるんだろう。フリングスと一緒なんだろうか。
僕は少しの間、なにもはまっていない薬指を無意識にいじって、彼女を見つめていた。
リビングに戻ってソファーに座った。
タブレットを借りて宿題をしながら、最近、彼女が僕を避けていること、様子も普通ではないことを話した。
叔母さんは歯で糸を噛み切って、ミリーのものらしきかわいらしいスカートを膝の上に置いた。
「そう。学校やクコに対しても変なのね。うちでもおかしいのよ」はぎれを整頓しながら叔母さんは言った。「話をしててもなにか別のことを考えてるみたいだし、食は細くなってるし。聞いても答えてくれなくて困ってるわ」
叔母さんは頬に手を当てて息をついた。
家でも態度は変わらずか。解決の糸口もなし。
宿題が済む頃、ミリーが帰ってきた。
「最近、すごく強い人とチェスを指してんでしょ? 宿題終わったらやろうよ」と持ちかけてきた。
タブレット上のドリルを覗き込むとミリーはすいすい解いていた。グミの言ってたとおり、よくできるようだ。
叔母さんと入れ替わるようにローテーブルにチェス盤が置かれた。叔母さんは、ふふふ、と笑って夕食の準備をしにダイニングへ消えた。
三局やって三局とも僕の圧勝だった。船団で最弱のグミ相手に少し勝率がいい程度のミリーでは勝負にならない。
クコ、強すぎ、とミリーはテーブルの横でふて寝した。一応、手加減はしたつもりなんだけどな。ていうかなんで勝てると思ったんだろう。(彼らの名誉のためにつけ加えておくと、このふたりも、生半可な大人よりはずっと高いレーティングを誇っている)
へそを曲げるミリーのご機嫌をどう取ろうか思案しているときだった。
不意に、あっ、という声が聞こえ、僕とミリーは振り向いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます