それは聖杯だった 8

「フリングスは非常に攻撃的で、特異な能力も有していました。一方、プライは言動こそ怪しかったものの、おとなしく、妙な力も見せませんでした。この違いをどう思いますか」


 僕が意見を求めると、エマさんは空になったティーカップを脇によけて言った。


「さまざまな状況に対応できるように、彼らの能力や個性はばらばらに作られているはずよ。私の管轄外なので詳しくは把握していないけれど」


「あの」遠慮がちにマリーが言った。「聖地ってどこなんですか。あまり遠い場所へのログインは、父や伯父に気づかれるので都合が悪いんですけど」

「そう、聖地の説明だったわね。大丈夫、あなたたちのとても身近にあるわ」


 老婦人はわずかににこりとし、僕たちを見すえて言う。


「聖地はスカイハイタワーの最上階。そこにある玉座に聖杯を置けば、強制的にプロジェクトは中止され、ウラヌスの管理者権限も取得できるわ」


 スカイハイタワー。

 この街のどこからでも見える観光スポット。

 そこが、聖地――


 僕が「指輪だけでそれが可能にはできなかったんですか」と疑問を投げかけると、エマさんは「強力な手段はウラヌスのセキュリティーに引っかかりやすいの。条件を増やすことで脅威への評価値が低下し検出が困難になる」と答えた。

 そしてこう忠告する。


「結果的に聖杯は検知されてしまった。聖地も同様かもしれない。十分に気をつけて」

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