帰りを待つ

 自ら敵の囮になって仲間を逃した勇敢な兵士は、日が沈みはじめる頃になっても、まだ戻ってこなかった。


 砦で帰還を待つ仲間たちの重い沈黙を一人が破る。


「大丈夫さ。あいつは……あいつは、きっと帰ってくる。いつもみたいに、兜以外は一糸まとわぬ姿でさ……」


 だったら帰ってきてほしくないな、と皆ちょっとだけ思った。

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