浮遊する僕らと要塞のファンタジア

作者 成井露丸

王道ファンタジーの皮をかぶった意欲作

  • ★★★ Excellent!!!

空から落ちてきた不思議な少女フラウロウを助けて、王国全土に魔力を供給する空の塔《ソラリス》を守るため旅に出る――という、どこからどう切り出しても真っ向勝負の王道ファンタジー小説……なんですがこの作品、実に色々な読み方ができる小説になっております。

まずこの小説、主人公・カイトは勇者ではありません。世間から勇者ともてはやされるのはカイトの幼なじみで、村の神童レオン・アッシュガルド。偶然に助けられながらも、彼はその実力をもって英雄への道を駆け上る。

そんなレオンに惹かれ、ついていくのがカイトの義理の姉エリシア。エリシアはレオンのことを「今より素敵な場所に連れて行ってくれる」と言う。

ただただ上を目指すレオンと、そんなレオンがいつまでも自分を導いてくれると信じて疑わないエリシア。カイトの旅立ちも希望に満ちたものではありませんが、この二人は二人で危ういすれ違いを孕んでいます。


誰が悪いわけでも、誰が間違っているわけでもない。微妙に割り切れない感情を、読者は何度も喚起されると思います。フローレンス王国とルーベリック帝国の関係も同じ。絶対的な正義もいなければ、悪もいない。

そこにあるのは現実と地続きの、また別の何かであるのかもしれませんが、最後まで読み終えた後、僕らの景色の見え方は少しだけ変わっているんじゃないかと思います。

筆者様の豊かな筆致に揺さぶられながら、イマジネーションの向こう側を見に行きませんか。

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★★★ Excellent!!!

ある日、辺境の村の上空に浮遊する要塞が現れて、放たれた光が周囲を焼き尽くす。
そして、その要塞から落ちてきた少女フラウロウを助けたことがきっかけで、少年カイトの冒険が始まっていく……。

もうね、清… 続きを読む

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