神頼みをしてみた 中編

「たいやき屋が休みじゃないかーっ」


 鳥居の前に小さな店舗がある。


 ここのたい焼きは、他では珍しい「天然物」を提供している。


 たい焼きに天然なんてあるのか、だって?


 ご存じない?


 そんなことを言う人は、まだまだたい焼きのことがわかっていない。

 

 普段食べているものが養殖物だということも、ご存知なのだろう。


 あー、嘆かわしい。


 懸命な、たい焼きフリークのみんななら、わかっておられるだろう。


 そう、たい焼きに天然物はある!


 普段食べ慣れているたい焼きは、5~6匹分のたい焼きの金型が鉄板状に連なっており、まとめて焼かれる量産タイプ。


 天然物は、ひとつの金型で一匹ずつ焼く「一丁焼き」のたい焼き。


 まあ、厳密な定義はないんだけどね。


 この一丁焼きのたい焼きは、皮がパリッとしていて、中の餡があつあつで実にうまい。


 これを楽しみに来たというのに、逃した魚は大きかった。


 たい焼きだけに。


 つづく


 

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