帰ろう
さらに数日。俺たちはこまめに休息を挟みながら遺跡の外、以前テントを張った場所まで戻ってきていた。
遺跡前の広場はこれから内部に侵入すると思われるハンターたちでごった返し、疲労に塗れた俺たちは少々動きにくかった。彼らの顔は晴れやかで、一攫千金を期待するものに見えたが、俺たちにとっては過去のものだった。
内心、さっさと帰りたいという気持ちでいっぱいだったのだ。例えるならテーマパークに入っていく人たちをめちゃくちゃ疲れた状態で見ても楽しそうと思えないのと同じだ。戦闘こそそこまでの回数していないとはいえ、未知の遺跡で常に気を張り、初めての殺人や突然の多数による攻撃を凌いだのだ。皆が精神的に参っているのはすぐにわかった。
広場に戻って直ぐに俺は馬車の確保に走り、数時間後に経つ王都行きの馬車の席を手に入れて皆の元へと戻った。
彼女たちは疲れた身体ながらもテントなどを纏めておいてくれていて、すぐに馬車まで移動することが出来た。出立までの数時間、皆でぐったりしながら待ったのはまた別のお話だが……俺は馬車に着いた直後に眠ってしまったようでその後の記憶は無いし、そもそも遺跡から出たあとの記憶もあやふやなのだ。目を覚ますと遠くに王都が見える街道を進んでいる最中だった。
起き上がり周りを見ると皆いくらかは回復しているようだ……と、ここまでの短い話は実は全てルルたちから聞いた事。俺の意識が戻ったのが馬車に乗って二日目くらいらしいからその間三人に全て任せてしまっていた事になる。我ながら情けないことだが相当疲れていたようだ。
「あ、起きた」
「マナ、悪いな。みんな任せちゃって」
「ううん。お兄ちゃんが一番気を張ってたもん。もっと休んでいいんだよ?」
「大丈夫だ。どうせ王都まであと少し、何か出来ることあったら言ってくれ」
「うん。そうだ、これ食べて」
馬車の外にいたマナが俺の起床に気づき声をかけてくる。手には椀を持っている。湯気が上がっていてとても美味しそうだ。
「ありがとう……熱っ」
中に入っていた麦で作られた粥は出来たてなのかとても熱い。
にしても馬車は動いているのになんで粥は外から来たんだろう。気にしちゃダメか。
味は普通のお粥。貴重な塩が入れられていて味が薄く感じるけど入っているハーブがいい香りでとても美味い。
「王都までどんくらいだ?」
「今日の昼過ぎには着くんじゃないかって。帰ったらゆっくり寝たいなあ」
「戻ったらしばらく休暇だな。遺跡探索がこんなに疲れるなんて思わなかった……」
「舐めてたわけじゃないけど、ここまでとはってね」
「マナの言う通りだな。ペースとかをもっと考えて良かったかもしれない。今後への教訓だな」
自然と反省会が始まり、沈んだ雰囲気になることも無くワイワイと話は進む。
探索や戦闘の過程でどこがダメだったか、今までに受けてきた依頼との差異は何か、今後の活動で何が出来るかなどなどと話は移り変わり、王都の城壁が間近になる頃には結論も出るようになっていた。
王都に入る為の列に並んでしばらく、受付ではハンターなので王都に入るのに面倒な手続きは必要無く、タグを見せてそのまま入れる。数週間ぶりに帰ってきた王都は相変わらず賑やかで、お祭りが近いのか飾りも付けられている。
そんな街を眺めながら馬車はマナの案内で進み、家のある東側へ進む。
そして王都に入ってから数十分、ついに俺たちは王都にある家まで帰ることになる。
「やっと帰ってきたな……」
「ふふっ、相当お疲れね」
「とりあえず寝ようぜ」
「そうね……とそうもいかないようよ」
うん?と彼女の視線の先を見ると元気にこちらへ走ってくる亜竜たち。だいぶデカくなって小走りでもドスドス音を立てている。食費とかがほとんど掛からない分寝床さえあれば良い家計に優しい俺たちの家族だ。
「モルガナも元気で何より。だけど遊ぶのは明日でいいか?疲れててな」
「キュル?……キュイキュイイ」
なんと言ってるのかはわからないが、何やら納得しか様子で俺の肩に頭を擦り付けると、他の三体を連れていつもの寝床に戻っていく。賢い子たちだ。ゆっくり寝て、目が覚めたら思う存分遊んであげよう。
とりあえず今はベッドを……
家に入り、傍から見れば幽鬼のような足取りで自室のベッドへと向かい倒れ込む。まだまだ昼間だけど関係なく、目を閉じるとすぐに意識はどこかへと去っていくのだった。
こうして、俺たち五人の遺跡探索は終わりを告げた。しかし、ほんの数日後、俺たちの元にとある事件が舞い込むのだった。
★★★★★★★★★★
お久しぶりです。
スランプに近い状態になってました。多分この文章もしばらくしたら多少変わるかも知れません。(大筋は変わりませんが……)
もう数話か挟んだら次章に移ります。一区切りつく所までは何としても更新を止める気は無いのでよろしくお願いします。
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