閑話 ヤマトの手記帳

 この世界は魔法で動いている。


 そう言っても過言ではないほどに生活に魔法は浸透していると俺は思う。


 魔法なんてない日本から来たから分かるけどこの世界は文化水準に対して様々な技術があふれている。

 もちろんエルフやドワーフと言った他種族の影響もあるだろう。しかし、魔法は万能で、魔法士の実力さえあればかなり多くのことが出来るのは当然になっている。


 俺の怪我ですらルルの魔法の手にかかればものの数分で完治してしまうのだから。


 それに関しては何も思うとこがない訳では無い。だが決して嫉妬では無いことをここに明記しておこう。


 俺は魔法が使えない。これはわかり切っている。ちゃんと今からでも練習すれば使えるようにはなるらしいが……今の俺にはそこまでやる余裕は無い。かと言って別に何かやるべき事が大量にあるわけじゃないから単に面倒だと言うのもあるのだけど。


 ルル曰く、俺自身は魔力そのものは大量にあり、常人は超えているとか。


 まさに宝の持ち腐れ状態なのだ。


 シャリアにこの話をすると、心当たりがあるそうで期待しててください、と言われてしまった。


 一体何が来るのがは分からないが……ついさっき一冊本を渡された。中身は何やら文字がたくさん。読んでみると、どうやら語学書のようだ。


 当然だがアルファベットなどでもない。


 この世界に来てから文字の読み書きは何故か完璧に出来るようになっている。しかしここに書いてある文字はは読めない。ずいぶんとカクカクしたものだ。


 表紙には……ルーンと書いてあった。ルーンは別名古代文字と呼ばれていて、魔法を志す者ならば誰もが学ぶ語学だ。ルルもかつて勉強していたのを覚えている。

 そして地球でもルーン文字は存在している。

 中二がなる病気に一度でもなったことのある方々は分かるだろう。


 つまりこれは『魔法を使えるようになるための本』なのだ。


 俺もこの世界に転生してチートで俺TUEEEE!!したいと思ったことはある。

 チートスキル貰って英雄的なことしたいと思ったこともある。


 でも手紙だけの神様からは何も貰えず、手に入ったのは射撃と調合作成のスキルのみ。どちらも有用だが、調べてみると一般的なスキルらしい。多くの人が持っていて、射撃は狩人や兵士が。調合作成は薬師や錬金術師などが持っていると聞いた。

 つまり俺はこの世界で一般的な漫画やラノベの主人公は出来ないという事だ。出来たとして一般人だな。

 どちらかと言うとルルの方がチートじみているいる気もしなくはない。が、別にルルのことだ。それくらいの実力はあって当然だろう。なんせ真横で彼女の修行は見てきたのだから。


 問題は俺だ。この前の剛体蜥蜴のとき、俺が魔法を使えればルルをあそこまで疲労させることはなかったのだから。


 だからこそ俺はここに書き、決意しよう。いかなる手を使ってでも俺は魔法を扱えるようになると。そうでもしなければ俺らの目的は達成出来ないだろうから。

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