内心
「ふ〜!ようやっと終わったね〜」
そう言って伸びをしているのはこの前偶然出会った仲間のルルちゃんです。
出会ったのは数日前。コートという小さな村に泊まっていた私が飛び乗った馬車に乗っていた子です。
あの時は遅くまで起きてたせいで寝過ごしちゃって本来ならもっと前の馬車に乗るはずが、最後の馬車になってしまいました。しかも本当にギリギリで、あれに乗り遅れてたらあの村でもう一泊しなければならなかったですね。
「さすがに疲れたな……でもこれで必要な物は手に入ったし……」
この人はヤマトさん。ルルちゃんと同い年で一緒にハンターをしていて、それなりに長い付き合いみたいです。
ハンターとしての実力は意外と高いみたいで、さっき行った鍛冶屋や魔道具屋で出していた素材は変異種のもののようです。私よりもタグの色は一つの下のはずでしたが、たまにタグと実力が合わない人はいるみたいなので多分それなんだと思います。
でも、結構自由な人みたいでさっきもいきなりいなくなりました。ルルちゃんに言ったら何故かニコニコしているだけで探そうともしていません。
確かに時間もまだ昼間ですし人目もあります。でも人攫いの危険が無いわけでは無いので私一人で探しに行こうと思っていたらいつの間にか帰ってきていたんです。
ですが、、やはりルルちゃんも心配していたのか帰ってきてるのに気づいたときは飛びついてましたけどね。
これを見て、私は「この二人は強い絆で結ばってるんだ」と思ったんです。
◆◇◆◇◆◇
「眩しき光条、戒めの鎖、我が名において命ずる。捕らえよ!〈
地面が微かに光り、そこから光の鎖が伸びて狼型の魔物の動きを封じます。
ルルちゃんの魔法はとても凄いです。
動きが素早いことで有名な
風狼はその名の通り風のように軽い動きで相手を翻弄する魔物です。
中間都市アールムの近くの山の麓の草原に生息していて、毛皮などは冬の防寒具代わりになるそうで依頼が出ていました。
動きが素早いために初心者では攻撃が当たりづらく、しかも群れで行動しているので風狼を狩る時は常に十体は居ると思った方が良いみたいです。
この魔物は魔法や罠で動きを封じるのがセオリーで、今もルルちゃんが動きを止めてくれたので首にナイフを入れて簡単に倒していくことが出来ます。
ルルちゃんが動きを封じたのは何も一体だけではありません。この場にいる風狼の計十二体全てが一つの魔法で縛られていたんです。
私は遠距離攻撃手段は持っていなく、魔法も少しだけ火属性魔法が使える程度なので戦闘には役に立ちません。なのでルルちゃんとヤマトさんに任せていたのですが、彼らは二人で風狼を誘導して一点に集めたんです。
どうやら、ルルちゃんの魔法とヤマトさんの持ってる不思議な武器でおびき寄せたりして集めていたみたいです。
ヤマトさんの持っているのは本当に不思議です。一メール程の棒のように見えるのに風狼を一撃で倒していました。倒されたのをよく見てみると、頭に穴が空いていてそこを攻撃されたのが分かります。
ルルちゃんによるとあれは『銃』というものみたいで、あの棒には穴が空いていてそこから金属の球を飛ばして居るようです。時折パアン!と大きな音が鳴るのでそれが飛ばしてる時の音なんだと思います。
ものの数分で風狼の討伐依頼は片付いてしまいました。ヤマトさんによると、これはこの辺りの地形などを確認することも兼ねて居るようなので私はそれについて行きます。
二人はハンターになったのは貿易都市ナラルラなんだそうです。あの辺で一年くらい過ごして今は王都に向けて旅をしているようです。
私もそれについて行っていいのかちょっとだけ不安でしたが……二人は少し神妙な顔をしながらも快諾してくれました。
引っかかるところが無いわけでは無いですけど……
これからも三人で頑張ろうと約束した時は嬉しかったんです。
だから私は内心でこう思うんです。
『願わくば、この日常が続きますように』と。
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