薬草採取依頼
「ヤマト!今日はギルドに行って依頼を受けてみるんだよね!」
目を覚ましてルルが一番に言ったことだ。
昨日は丸一日買い物をして何枚か服を揃えたり新しく武具を調達したりと、いろいろやった。
それで今日はギルドで依頼を受けてみようというわけだ。
「うん。昨日装備とかも揃えたからね。何も問題なければそうするつもりだけど」
「わかった。じゃあちゃんと昨日買った外套着ていくからね!」
そう言ってルルは宿の浴室に入って行った。
ルルは朝にシャワーを浴びるタイプでは無いから多分着替えに行ったのだろう。
俺は自分の魔法袋から昨日買った服を取り出して着込む。
そして昨日買った外套を上に羽織ると俺の着替えは完了だ。あとは魔法袋を背負い、剣を腰に付ければ全て終わる。銃は魔法袋の中に入れてあるからわざわざ持つ必要は無い。
そういえば……この外套って幾らだったんだろう。昨日お金を払ったのはルルで俺は話をなんとなく聞いてただけだからそこら辺が分からない。
「よし!ヤマト、行くよ!」
ルルが外套まで着て戻ってきた。
俺とルルが買った外套は色は灰色でそれぞれの腰より少し下のところに裾があって、肌触りは結構サラサラしていて心地いいのだ。
普通ならパーティーのエンブレムとかを刺繍したりするらしいのだがまだ二人だけでエンブレムも無いから無地である。
ルルと共に食堂に降りるとダンさん達が来ていた。
「ヤマトにルルちゃんは今日はギルドに行くのか?」
「はい。今日はルルと何か試しに依頼を受けてみようと思って」
するとナクルさんがいい事を教えてくれた。
「一つアドバイスをあげるよ。まずは色んな地域の採取依頼を受けてみるんだ。採取依頼は大抵のいつも出ているからね。山ならばキュアル草だし草原なら鳥の卵だったりいろいろあるね。その地域の情報を知っていれば有利になることだってあるから」
なるほど、まずは情報なのか。その土地の情報があれば万一の時も役に立つな。山なら薬草とかの位置かな。
あと……キュアル草ってなんだっけ?
「なあルル、キュアル草ってなんだっけ」
それを聞いたルルは呆れたようだった。
「はあ……いつも赤葉とか翠葉とかって呼んでるから名前忘れたの?」
そういえばそうだった。キュアル草はいつも取ってる物だった。
「ま、まあそれはともかく!ダンさん達はどうしてここに?」
俺は話を逸らすためにダンさんに話を振った。
「ああ、それはな。実は俺達本当は六人でパーティーを組んでるんだ。今はあとの二人を待ってるんだ」
ダンさん達は四人で組んでた訳じゃないらしい。あと二人……どんな人なのだろうか。
「そうだ、一ついい事を教えてやる。───いつか二人はさらに仲間が増えるだろう。ハンターをやるにはパーティーでないと生きていけないしその人数は最低でも六人は必要だ。王都や迷宮都市なんて行けばパーティーメンバーが十人なんてパーティーがざらにある。だからこれだけは覚えておけ。当然のことだが自分が心から信用、信頼できる人物を仲間にしていけ。そうでないと早死することになるからな。っとどうやら来たみたいだ」
入り口の方を見ると二人の男女がこっちに来た。
「みんなただいま〜っとこの子達は?」
細剣を腰に下げた女性の方がダンさんに俺達のことを聞いている。モールさんと似たような盾を背負った男性の方は黙ったままだ。あ、盾仕舞った。
「この前受けた依頼の最中に知り合った二人だ。ここにハンターになりに来たみたいで少し手助けしてやってんだ。で、ヤマト。こいつがヒスで、こっちの黙ってるのがトムスだ。この全員で俺ら『風の導き』さ」
それを聞いて皆頷いている。
ダンさん自身が言ったようにみんな信頼し合っているらしい。
俺もいつかはこんな風に信頼出来る仲間が出来るのだろうか。
この後食事をしたらそのままギルドに向かうことになったのでダンさん達と一緒にギルドに向かうことにした。
この貿易都市ナラルラにあるハンターギルドは入って真正面にいくつもカウンターがあり、そこで依頼の受注をするようだ。
依頼そのものは入って右側にある大人の背丈以上ある巨大な掲示板が三枚あって、それぞれギルドからの連絡事項、討伐系依頼、採取系依頼に分かれているようだ。
俺達はそこからキュアル草の採取依頼の依頼書を持ってカウンターに向かった。
依頼内容はこうだ。
『キュアル草の採取依頼
場所:ササ山
依頼者:コトーク商会
傷薬生産用のキュアル草の採取依頼だ。赤、翠、紫のどれでも構わないが合計三十枚取ってきて貰いたい。
主に木の根元に生えていることが多いので注意する方が良い。
報酬:大銀貨四枚(枚数に応じて追加報酬有り)
』
この依頼を受けるつもりだ。
「はーい、次の方どうぞー。おや?この前登録した子達か。依頼だね。……はい。これで良いよ。終わったらちゃんと報告をしてね。いってらしゃ〜い」
ゲームなどと違い、依頼の受注料などは徴収されないようだ。それとも薬草採取という簡単な依頼だから無いだけなのだろうか。
依頼を受け、ダンさん達と別れて俺とルルはギルドから一番近い門に向かう。
この辺りはさっきダンさん達から依頼を受けたらどうするべきかの『ダン先生のハンター講座第二回』で教わったことだ。
依頼を受けたらその場所に一番近い門からでる馬車に乗って依頼の指定場所に向かうのだ。
そして馬車に乗ってその場所に行くと、馬車を待機させて依頼を開始。依頼が終了すればその馬車で街まで戻るというのが一連の流れだ。
「すいません、ササ山までお願いします」
ルルのこのセリフにまるでタクシーみたいだと思ったが実際タクシーなのだろう。
そうして馬車に揺られること約三時間。
初めての依頼の場所であるササ山にたどり着くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます