ダン先生のハンター講座

「ほ〜、お二人さんはハンターになりに貿易都市に行くのか」


 ダンさんは驚いた様子で俺が焼いていた串焼きを口にする。


「はい。なんと言うか……やらなきゃいけないことがあるので。それをやるためにはハンターが一番手っ取り早いんです」


 それを聞いたダンさんはポンとてを打ち付けた。


「よし分かった!俺がハンター講座をしてやろう!」


 ハンター講座?と思っていると他の三人が頭を抱えている。まるでまたか……とでも言うように。


「え〜、まずはハンターの基本からだ。まずハンターとは───」


 なんかいきなり始まったしナクルさんたちの反応を見て俺はほとんどを聞き流す。


 ルルなんていつの間にか俺の後ろで横になっている。ルルよ、俺を盾にしたな?



 結局、ダンさんの話はまず30分続いた。


 彼の言ったことをまとめるとこうだ。


 ハンターとは主に魔物を狩り、生計を立てている職業の者達を指す。

 しかし、魔物ばかりを狩っているばかりでは無い。他にも、商隊の護衛や地域の調査。街の人のお手伝いなど様々なことがハンターの役割である。


 もちろんその名の通りハンターは命を賭ける仕事だ。そのため、街などてはある程度の優遇措置が存在する。例えば街に入る時の入場税が免除されたりとかだが、代わりにハンターへの依頼の義務達成数などが存在する。


 これはハンターとしての仕事をサボらせないためのものだが、真面目にやったからと言って何か手に入るわけでも無い。サボれば月に幾らか少ない罰金を払う程度だ。しかし真面目にやれば人々からの信頼は得られるため、今後、割の良い依頼を回してもらえることがあるのだという。



 まあダンが30分長々と話し続けたことを簡単にまとめるとこんな感じだ。



「あとねー、ハンターの信頼度ってこれでも分かるんだよ」


 そう言ってベルさんが胸元からある物を取り出した。


 ネックレスのようにも見えるが……


「ドックタグ?」


 それはドックタグにしか見えないものだった。


「惜しい。ドックタグが何か分からないけどこれはハンタータグ。このタグの色でそのハンターの大まかな実力が分かるの」



 ベルさんは続けて説明する。


「このハンタータグは最初は白から始めるの。それから依頼をこなしていってある程度の実績が溜まると昇格試験が受けられるの。そうしてクリアするとこのタグの色が変わるの。白からだったら……えーと」


 悩み始めるベルさんにナクルさんが助け舟を出す。


「白の次は黄色だよ。姉さん」


 俺はその発言にびっくりする。


 だって結構似てないもの。


「そうそう黄色だね黄色……ってあれ?どうしたの?」


 ベルさんは俺の様子を見て首をひねっていたが何か思い当たることがあったようで笑顔になる。


「わかった、ナクルが私のことを姉さんって呼んだからでしょ」


 俺はそれに頷く。だって本当に似てないんだもの!


「あ〜そういうことでしたか……」


 ナクルさんはやっちまったという感じで項垂れる。


 それをベルさんはニヤニヤしながら眺め、モールさんは酒を飲み、ダンさんは……あれ?ダンさんはどこ行った?


 辺りを見回しても見つからない。


 ベルさんに声をかけようとすると、視線で「気にするな」と言われた。


 仕方ない、バナークさんの本にハンターに関して少しは載ってたはずだからそれで勉強するか。



 ふむふむ……



 ベルさんの持っているハンタータグにはいくつか階級があり、それがタグの色なのだという。


 最初が白でその次は黄色らしい。

 まとめるとこうだ。この色が上なほど実力が高く、信頼も厚いのだという。


白→黄色→緑→赤→青→紫

→黒→銀→金→白金→水晶


 の順になっているらしい。


 そして、ハンターになったばかりの者は子供も多いためにお手伝いなどでタグの色、つまりランクを上げられるようになっているのだという。


 そのため、緑までは討伐系依頼は無いが、黄色までは採取系依頼などがほとんどらしい。


 黒から上は世界中に数百人いる程度らしい。

 まして水晶タグなんて世界に十人居るかどうからしい。

 紫までは登れるのだが、そこからの壁が高すぎて超えられる者がいないかららしい。

 それに関してはこのバナークさんの本では無い。ダンさんからの情報だ。


 なんでいきなりダンさんかって?それは今俺の真後ろで喋っているからだ。


「───そんでもって俺らは今は青だからまずこの紫タグを目指してるって訳だ」


 

 俺はダンさんの話は聞きつつ、本を読み続けるという器用なことをしながら夜を過ごしていくのだった。

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