第222話
ペシィッ。よく撓る木の枝が、私のおでこに直撃する。少し間を置いて、打たれた所が熱を持ち、ジンジンとした痛みが遅れてやってくる。ヤバイな……この感じクセになりそうだ。
「なに? 王女殿下に会いたいだと……?」
「はい。渡したい物があるから。と仰って頂ければ、恐らく王女様はお分かりになると思います」
「ふむ……分かった。丁度午後に上層へ行く用事があるから、その時に伝えよう」
「あ、有難う御座います」
よしよし。これでアレを王女に押し付けてしまえば、要らぬトラブルに巻き込まれずに済むぞ。くふふふ。と内心ほくそ笑んでいると、手の甲に熱い刺激が走った。
「ボケッとしているんじゃ無い」
オジサマになら幾ら打たれても痛くないです。……ハッ、これって私、アブノーマルな方向に進んでないっ?!
一日の訓練を終え、アパートに帰宅した私を待っていたのは、笑顔がとても可愛い美幼女だった。
「お帰りなさぁい」
私の帰宅に気付いたその美幼女は、満面の笑みを浮かべながら、とててて。と小走りで駆け寄る。
「ご飯にします? 白米にします? それとも、お、こ、め?」
全部米じゃん!
「あら、お気に召さない? やっぱ、裸メイドエプロンで言うべきだったかしら……」
裸メイドエプロン?! 誰だっ、美幼女にそんな事を吹き込んだのはっ!
「ってかマリー様っ。一体何処から入ったんですかっ?!」
ドアには鍵が掛かっていたはずだけど。
「ん? 窓から」
「……へ?」
窓からって……ここ二階で屋根もベランダも無いんですがっ?!
「冗談よ。管理人に開けて貰って、鍵を閉めておいたの。その方が驚くと思って」
流石はあの国王の娘。無駄にサプライズがお好きな様で……。
「もしかして、お一人でいらしたんですか?!」
「ううん。途中までフレッドと一緒だったけど、まいてやったわ」
ウォルハイマーさんもとんだ災難だな。今頃は、姫っ! 姫は
「その方がお姉ちゃんも助かるんじゃない?」
まあ、確かにそうなんだけど……
「で、何だっけ? 渡したいモノがある。だっけ?」
「ええ。その前に、例のブツはラインマイル卿にお渡し頂けましたか?」
「えっ。え、ええ。ち、ちゃんと渡しておいたわ」
コイツ。その挙動不審ぶりは渡して無いな。
「マリー様、ちゃんと渡して頂かないと困ります」
「わ、分かったわよ。そんな事より、アレに代わるモノは見つかったの?」
「はい。その為にオジサマに頼んで貰ったのです」
クローゼットに入れておいた例のブツを取り出してテーブルに置く。対面に座る美幼女は目玉が飛び出る程に目を見開いていた。
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