第217話

「あーあ、お気に入りだったのに……」


 『ブラッディルビー』を革袋に仕舞い込み、手を後ろ頭に回して呟く王女様。


「また見つけたら差し上げますよ」

「ホント?!」


 つまらなさそうな表情から一転。パァッと明るい表情になる。あ……こりゃ言わされたな。


「ま、まあ。全く同じモノとまではいかないでしょうが……」


 産み出す為の仮説はあるが、いくら元通りに完治するとはいえ、痛い思いをしてまでハラキリをするつもりは無い。


「えーっ。マリー、コレくらいかコレ以上のが欲しいな、ね? お姉ちゃん」


 両手を軽く握り、それを自らの顎に付けて、瞳を輝かせながら上目遣いで懇願するマリエッタ王女。急に美幼女化しないでくれませんかね。


 背後から両肩をガッと掴まれ、掴んだ人物によってそのままぐるりん。と反転させられる。突然の回転に身体が付いていかず、軽い目眩を引き起こした。直後、私を半回転させた人物が鼻先が着くくらいに顔を近付けた。近い近い。


「かっ、カナさんアレ何処で見つけたのっ!」


 る、ルリさん目が血走ってますよ……それに鼻息が荒過ぎる。


「ど、何処って……」


 なおもグイグイと迫るルリさんを必死になって押し返しながら、アレを見つけたのは森の中だと伝えるとルリさんも落ち着いた。


「もり……ってあの?!」

「そうです。その森です」

「魚を突くヤツの中に……?」


 その銛じゃない。余計なボケは要らん。


「近くを散歩してて偶然見つけたんですよ」

「それはラッキーどころの騒ぎじゃないわよ。一体何生なんしょう分の幸運を使ったのか分かったもんじゃないわ」


 何生どころか、不老不死の私なら一生ですら無いですよ。それに、恐らくアレは量産が可能です。痛いからやらないけど。


「この世にたった一つの宝石だそうですよ。かん四位、メアリー様のお墨付きです」

「またそんなビッグネームを出す。あなた本当に何者なの……?」


 疑いの眼差しでジットリ見つめるルリさん。


「あらあなた。この御方の事を何も存じませんのね」


 金色に染まる長い髪を、王女はブワサッと靡かせる。って御方?!


「ど、どういう事……?」


 悪ノリしているのか本気なのかは知らないけど、とにかくルリさんは大層驚いていた。


「この御方こそ――」

「ただの一般市民ですっ」


 王女の言葉を遮り、余計な尾ひれが付く前に言い切った。チラリ。と王女に目をやれば、ムー。と口を尖らせて拗ねていた。あらかわいい。


「本当? 本当なのね? パーティのメンバーが実は犯罪者でした。なんて冗談じゃないわ」


 チョットマテ。私いつの間にパーティメンバーになってんの!?

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