第191話
美人に注がれると美味しくなる。世辞か下心か、元の世界ではよくそう言われていた。だけどそれは美少女でも同じな様で、リリーカさんが淹れてくれた紅茶は普段の数倍の美味しさだった。……単に私の淹れ方が間違っているだけかもしれないが。
寝かせ付けたルリさんは爆睡モードに突入している様で、時折んごうっ。と凄いイビキをかいていた。
「イビキ凄いね」
「あら、お姉様もですわ」
へっ!?
「んわっ、わわ私イビキなんかかかないわよっ」
ふるふるふる。と首を横に動かすリリーカさん。
「いいえ、かいておいででしたわ」
マジかっ!
「そういえば、前にルリ姉様と旅に出る様なお話がありましたが……?」
「ああ、あれはルリさんが男二人と旅していて、肩身が狭いから付いて来てくれって話なのよ」
主にトイレ要員として。
「そうなのですね。でも、それならお姉様ではなくても良いでしょう? お姉様より腕の立つ女性の冒険者は他に幾らでも居らっしゃいますのに」
ホント私もそう思う。って毒舌だなおいっ。
「なんか放っとけないオーラが出てるらしいよ。それで目立つんだってサ」
「放っとけないオーラ……? それが何かは分かりませんが、目立つという意見には納得ですわ」
「そんなに目立つの……?」
「熟練の魔導士なら感じ取れる筈ですわ。ですが、ハッキリ。とではなく、『何か気になる』程度かと」
マジかっ! もしかして……街に出て時折注がれる視線は、私に見惚れている訳じゃなくてソレの所為!?
「恐らくは、『あの事』に関係あるのでしょう」
不老不死か鉱物か。どちらかは知らないが迷惑な事だ。でもまてよ、私が絶世の美女で皆の視線を集めている。そう思えば……うん、悪くない。
「ともかく、アレの件があるから断ったのよ」
でも、それが無ければもしかしたら……
「んんぅ……」
大いびきをかいていたルリさんが寝返りを打つ。掛布団を蹴り飛ばし、パンツ一丁の姿が丸見えだ。
「風邪引くわよ。まったくもう」
落ちた布団を拾い上げ、バサリ。と上から掛けてやる。爆睡中のルリさんは幸せそうに顔を緩ませていた。
「カナちゃん……」
ルリさんの声に起こしてしまったのかと顔を見る。しかし、タダの寝言だったようだ。
「……ここが良いのね」
ん……?
「もっと淫らになっちゃいなさい……」
淫らなのはアンタの夢だろうがっ。なんつー夢を見てるんだっ。
「良い夢を見ておいでの様ですわね」
リリーカさんがルリさんの寝顔を覗き込んでそう言う。本人にとっては良い夢なのだろうが、何故にカーリィさんとでは無く私となんだ?!
「ホラ見てカーリィ……」
……カーリィさんは既に共演中。ってか見せちゃらめぇぇっ!
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